月の歌会



連歌の花道

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    一晩の幻でした新聞が靴の底から吸い込んだ海

    たかはしりおこさん&にしだゆいさん

    嵐の夜のようなイメージが浮かびました。土砂降りの中で帰宅して、濡れた靴の水分で新聞紙がゆっくりと湿っていくような。静かな雰囲気がいいなと思いました。
    宇野なずき

    雨で濡れた靴を乾かすために新聞をなかに突っ込んだ。何ということもないありふれた日常生活から汲み出されたポエジー。海を登場させたのがうまいが、それ以上にスパッと二句切れで表現した点に惹かれる。
    村田馨

    海はそのまま海水かなと思いました。夜の海で何かドラマチックな出来事があったのでしょうか。けれど家に帰り、海で濡れた靴へ新聞を詰め込んでいくうちに段々と気持ちも冷めて、その記憶が「一晩の幻」であったかのようにぼんやりとしてしまう主体を想像しました。「でした」という口調からも、出来事に対してもう他人事であるかのように思っているという印象を受けました。
    多田なの

    その一晩の出来事がもう少し具体的に見えたらさらによかったと思うのですが、新聞紙が海を吸い込むという描写がいいですね。この世で最も大きなものの一つである海を小さく表現することで、孤独や喪失感、さびしさがうまく描かれていると思いました。
    中牧正太

    新聞紙が「海」を吸い込むというのは優美で、昨晩の名残をほんのりと滲ませてくれると思い、たいへん心惹かれた。けれども、そのように昨晩の名残が新聞紙の中にわだかまっているのに「幻でした」と言い切ってしまっているのには大きな疑問符をつけたい。繊細な詩情を感じさせてくれるだけに特に。
    菊池あき

    海に靴を履いたまま入ると靴が水を吸って重くなり大変ですよね。主体は海(もしくはそれに準ずる水辺)に入ってしまって、靴に新聞紙を入れることで水分を吸いだそうと一晩おいたところを詠んだものと解釈しました。新聞紙が海の存在を知ることはないけど、海水を吸い尽くすまでの一晩だけ海を知ることができる。そのさまを「幻」としたのが素敵な歌だと思いました。
    尾鷲明希

    濡れた靴を乾かすために、新聞紙に乗せておいたのでしょうか。海は何かのモチーフなのでしょうか。一晩の幻、がすごく強く響くので、どこかで着地がないと落ち着かない感じがしました。
    太田青磁

    巧みに構成された歌だと思います。「一晩の幻でした」、という言い切りから始めて、結句の「海」まで、ていねいに歌われていると感じました。「海」が少し抽象的ですが、それも計算ずみの選択だという気がします。ただ、「一晩の幻でした」という表現は、ロマンス小説の台詞を思わせる点が惜しい、と感じました。
    雀來豆

    どうしても一夜の恋として読めてしまうので、安く感じて残念です。湿った靴を古新聞にあげておく行為はささやかで人間くさくて美しい。その心配りが丁寧な暮らしをしている主婦、が浮かんでしまうのでイメージがいけないのでしょうか。
    気球

    濡れた靴を新聞紙で乾かす、という生活感のある流れなのに、全体的に幻想的な雰囲気を感じて印象的でした。その晩ベッドの中で寝ていた時もまだ海にいて、朝新聞紙の上の靴を見てやっと「一晩の幻でした」と現実に帰還したように想像しました。さっきまでそこにあったのに、もう随分遠くに行ってしまったような小さな喪失感があって好きな歌だな、と思いました。
    東風

    新聞紙が吸い取る靴の湿気を「海」としたところが見事ですが、それを「幻」と言ってしまってはもったいないと思いました。
    泳二

    海に行った後なのか、雨に降られた後なのか。いずれにしても新聞紙が海を吸うという言い回しや、一晩の幻に情緒があり、それでいて新聞紙で靴を乾かすという生活感のある風景を感じられるバランスが良いです。
    文月郁葉

    海に行った後なのか、雨に降られた後なのか。いずれにしても新聞紙が海を吸うという言い回しや、一晩の幻に情緒があり、それでいて新聞紙で靴を乾かすという生活感のある風景を感じられるバランスが良いです。
    文月郁葉

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