連歌の花道『新月ノ歌会』

春分の歌会

新月ノ歌会工事中

夢で会う約束がある 傘立ての底にうまれた夜のみずうみ 久藤さえ × 西藤智

二人一組で短歌一首を詠む歌会R-2ぐらんぷり 『R-2ぐらんぷり』2015-春

『  』

出詠は二人一組で参加ください
上句下句の分担なしで一首を相談共作して構いません
作中で題の詠み込みは必要ありません
出詠したコンビは互選(選歌と選評)に参加ください
選歌は特選並選次選の投票で行います(通常回と同ルール)
選評は(コンビ両名とも)一人一首以上に書いてください

詳しくはR-2ぐらんぷり案内ページR2GP

詠草リスト

[今回の投票式目]
特選(2点)×1票
並選(1点)×5票
次選(0点)×∞票

冠今日のため生きてきたとか言ってみたいホットケーキがうまく焼けた日

出詠名 みかん猫焼きみかん × 黒猫。
首席 / 51点 ×9 ×33 ×15

互選名 些松凜恋小倉きなこ奈月遥管理人知己凛yuka大木はち坂本 樹太田青磁三次則秋ばん悠不可思転ちゃむレオやんや宮木水葉迂回小早川野崎アン妖精化師ごろー河嶌レイエイ太夫湊あかりオリー亜梨カオリナマンダイガッキ双葉屋ほいる蟹田ももseriゆら塾カレー椋鳥スコヲプ蒼井灯桔梗月丘ナイル404notF0816遊糸橋師千原こはぎ羽島かよ子ひらたてるはだしわんこ山田悠佳里月花小向大也小宮子々きつね龍翔

選評名 たかがホットケーキ、されどホットケーキ。こういう日常的なことが記念日になる。かわいい歌だなと思いました。
知己凛
★0
これはホットケーキがいいですね。ありふれた日常だからいいです。ささやかだけれど小さな幸せを大事にして欲しいですね。
大木はち
★0
きっととてもうまく焼けたのでしょう。今が幸せだから小さなことひとつひとつに更に心が浮き立つのか、良いことがなくて辛い中やっとひとつ見つけられた幸せなのか。どちらとも読める気がします。上の句の緊張感と下の句のやわらかさの対比が素敵です。
蒼井灯
★0
ホットケーキって、実はじょうずに焼くのがむずかしいですよね。きっといつも、失敗じゃないけど、お店やお母さんのとびみょーに違う感じの焼き上がりになっていたんでしょう。それがじょうずにできて、自分もちょっぴり成長できたかなって実感できて、誇らしい雰囲気が伝わってきます。
なんでもない、小さな喜びのために生きてきたと言えたなら。なんでもない、小さな喜びを目指して生きていこうと思えるなら。そうやって毎日を嬉しさで積み重ねていける人は、幸せな人生を歩んでいける人です。この世界で一番の幸福のひとつでしょう。
例えば、それが大切な人に食べてもらうホットケーキで。それがうまく焼けた日は、つい記念日にしたくなる人は、毎日がわくわくして楽しくしていけます。それで、ホットケーキを食べてくれる人が「お、いつもよりうまいじゃん」とか言ってくれたら、そこはもう「でしょ?」って腰に手をあてて、もう自信満々、ちょっと態度も大きめで「感謝してよね」って言いたくなっちゃいますよね。それで相手が「うん、ありがと」とか素直に言ってくれたら、逆にこっちが照れてしまって、もうしどろもどろに。でも嬉しくて、ほっぺたが熱くなって、「まぁ、わかればいい」なんて一言ですませてそっぽを向いたり。それを見た相手にくすくすと笑われて、でも反論もできなくて。「今日はどうする?」なんて話をそらしてみましょうか。
そんななんでもない幸せな一日の始まりが、うまく焼けたホットケーキに詰まっているようです。
「生きてきた『とか』」って部分がちょっとおどけた感じで、自分でも演技が入っているとわかっているというか、大したことじゃないけどねーって雰囲気だけど、実際はとてもとても嬉しい気持ちが溢れてくる様子が表現されているように思えます。1枚目からうまく焼けたのなら、鼻歌混じりで2枚目、3枚目と動きもいつもより軽やかに、リズムに乗って手際よく焼いていって。お皿に乗せる前に、むだにフライパンの上でホットケーキをくるりと宙に浮かせて返したりして。盛り付けもいつもよりちょっと慎重に、きれいに見えるように。乗せるバターを半分にするのも、切り口をまっすぐになるように注意して。いつもはなにも考えずに置いてしまうナイフとフォークもきちんと並べてみて。
そんななんでもない日常をちょっとだけ特別なものにしたくなる日を、じょうずに焼けたホットケーキがくれたのでしょう。
わたしも、じょうずにホットケーキを焼いてみたいです。焼く前にフライパンをあっためるのを、待っていられないんですよね。
奈月遥
★0
「今日のため生きてきた」、こう言いたくなるほどの心動く何かがあったのだと想像します。ホットケーキを焼いているときにいい報せがあったのかもしれない、好きな人が一緒にいるのかもしれない、自分の子供が初めて上手に作ってくれたのかもしれない。「とか」と言って微笑んでいるのかななんて。「言ってみたい」という願望が、慎ましやかでくすぐったいです。
不可思転
★0
「ホットケーキがうまく焼けた」という日常の中の些細なことに幸せを感じられるって素敵だなと思います。「よしっ」って小さくガッツポーズしてる感じがして、可愛らしいです。
オリー
★0
「言ってみたい」と「ホットケーキ」の促音のリズムが楽しいです。今日のための気持ちはわからなくもありませんが、言葉足らずでちょっと大げさすぎる感じもします。
太田青磁
★0
大事な場面で、例えば好きな人と一緒にいるときとか…
上手くホットケーキが焼けたのでしょう。
ホットケーキ、家のフライパンで焼くとどうしても店で出てくるようなきれいな焼き上がりにならないんですよね。食べてみるともそもそしてたり。好きな人にいいところを見せよう、って思ってて、実際にホットケーキを上手に焼くことが出来て、これはもうホントに生きてて良かったー!ってなると思います。
塾カレー
★0
日常の中の小さな幸せが、ホットケーキという存在に上手く投影されていて、こちらも読んでいて楽しくなるような歌でした。「言ってみたい」という控えめさもまた可愛らしさがあっていいように思いました。
スコヲプ
★0
可愛らしいアイテムを用いながらも、生きることに疲れているような印象を受けました。主体がこれからも生きていく理由は、こんな些細な出来事の繰り返しなのかもしれません。
遊糸
★0
ホットケーキという日常の小さいことがいいなって思いました。大きすぎず小さすぎず、ちょうどいい大きさです。そして「好きな人からメールがあった」みたいな、他者を巻き込んだことじゃないのがとてもいいです。自分ひとりで、他者に頼らなくても作れる幸せが「とか言ってみたい」の軽い調子にあっていると思います。
主人公は「今日のため生きてきた」のセリフに釣り合う大きな幸せと縁遠いのではないかという印象です。「とか言ってみたい」の軽いノリには、「そんなこと思ったことがない」が隠れているように思います。言えばいいのに「言ってみたい」というところに、自分はそんな言葉とは遠いところにいるっていう寂しさも感じました。だから、軽い口調でおどけるように「言ってみたい」と言ってみたんじゃないかな。そういう口調じゃないと言えないんじゃないかな、なんて思います。
そんな自分の寂しい部分を自覚して、否認せず受け入れているから「言ってみたい」と言えるんだと思います。おやつか朝食か、ゆっくりホットケーキを焼いて楽しむという小さなことさえ自分の励ましにできる豊かさがあるような気がします。次にホットケーキをたべるときは「とか言ってみた」になってるかも。そんなあたたかい強さを予感できます。
ゆら
★0
シンプルな内容ですが、よくできていて、素敵な短歌だと思いました。共感できる歌だと思います。「とか」は字数合わせになりがちな言葉ですが、この歌のなかでは、若者の言葉遣いを想起させ、軽さやポップな感じにつながっていると思います。全体的にTの音が繰り返されていて、リズムの良さも感じました。
龍翔
★0
とても良くわかる歌でかわいらしいのですが、ホットケーキが焼けた喜びなら言ってしまっても良かったんじゃないのかな、と思いました。
泳二
★0

ミルフィーユみたく写真を積んでいく一番上はいつまでも今

出詠名 あさみどり澄み好きだった雨悠 × 薫智大介
2 / 47 ×9 ×29 ×10

互選名 奈月遥管理人村田一広真篠未成南瑠夏大木はち坂本 樹太田青磁三次則秋不可思転気球レオ深淵なる月彩華小早川妖精化師ごろー泳二河嶌レイ湊あかりルイド リツコオリー亜梨宮嶋いつくガッキももseriゆら塾カレー長月優椋鳥スコヲプ桔梗404notF0816橋師焼きみかん千原こはぎ杏野カヨそぼ降る雨きい月花小向大也七海奏一郎きつね龍翔

選評名 今というのは常に更新されるものです。だから今の写真を重ねていくと一番上が最新の今になり、それより下はすべて過去になる。この歌の魅力はその(あまり見かけるとは言えない)状態をミルフィーユのようと例えたことでしょう。甘い今の蓄積なのかもしれません。
大木はち
★0
「みたく」とありますしきっと時間が重なる比喩なのだと受け取りましたが、あえてそのままファンタジーな情景を心の中で浮かべました。世界中の人間の、「今」の「写真」でできたミルフィーユが実際に鎮座していたら、と。ミルフィーユだと横から層がはっきり見えるので、過去は絶対無駄ではないしないがしろにもしないという気持ちもしっかりと見えるように思えます。
不可思転
★0
下の句のいいまわしはオリジナルですか。だとしたら脱帽です。名文句として残りますね。
ミルフィーユと言ったことで、あのこんがりとして、バターや砂糖たっぷりの甘い香りが漂ってきます。
村田一広
★0
うちにも整理されず積まれた写真の山がありまして、それをミルフィーユと表現したのにはなるほどと目から鱗でした。とてもしっくり来る、情景の浮かぶ良い歌だなと思いました。
小早川
★0
今をたくさん重ねてきて「今」があることをミルフィーユに例えたことが綺麗だと思います。ミルフィーユのように甘く香ばしい過去があったのでしょうか。想像がふくらみます。
オリー
★0
「今」の積み重ねをミルフィーユと表現されたのは素敵です。モノがある写真に限らず、記憶の中の思い出の積み重ねも同じでしょう。でも、下の方(過去)まで味は変わらずおいしいんですよね…!(ミルフィーユ食べたくなりました)
「みたく」はなんだか口語的であり、私だったら字余りを気にせず「みたいに」とするかなと思いました。「見たく」などという意味もあるのかもしれません。
亜梨
★0
日々撮り続けられていく写真を積み重なったミルフィールにたとえたところはうまいなあと思いました。重なる「イ」の音も今を強く想起させます。フィルムで撮影していたころの写真から携帯電話やスマートフォンで撮影する写真への移り変わりも、全体に伝わってきました。歌全体の流れは、もう一歩工夫できたのではないのでしょうか。
太田青磁
★0
ミルフィーユに見立てた写真というのがなんともいいですね。
確かに積み重なった写真はミルフィーユに似ていると思います。
積み重なった過去の上に乗っかっている今、その今の切り口が鮮明です。
塾カレー
★0
まっさきに思い浮かんだのは、『アルバム』です。
たくさんの写真が1枚1枚、1ページ1ページに大切に張られていき、1冊がいっぱいになれば次のアルバムへ。そして何冊もの思い出が本棚に詰まっていく。その様子は何層にも生地が重ねられたミルフィーユのよう。
そしてミルフィーユが何層にも生地を重ねたから、あのさくりとおいしい口当たりになるように、アルバムもたくさんの写真を納めて、子供の成長や楽しい日々の積み重ねがあるからこそ、なおさら懐かしく幸せをより強く実感できるのだと思います。
きっと、たくさんの写真がそのアルバムに積み重なっているのでしょう。生まれた時の笑顔、お母さんとはじめてのツーショット、あぶなっかしく抱き上げるお父さん、親戚中が集まってかわりばんこの集合写真、ハイハイで徘徊している頃、つかまり立ちができた日、歩行機で歩く練習をしたころ、ぐちゃぐちゃに離乳食をこぼしてる食事風景、お母さんとお父さんを呼んでる笑顔、おめかしした七五三、公園ではしゃぎ回って転んで泣いてるところ、友達とのかけっこ、入園式でのちょっぴり不安な顔、お遊戯会でいっしょうけんめいに歌って赤くなった顔……、たくさんの姿がそこに大切にしまってあるのだと思います。
わたしはこの写真たちは、大切に慈しまれて育った『誰か』、もしくはその家族のものだと思うのです。最後まで写真を納めたアルバムは、『一番上』が『今』になりません。普通は立てかけられてしまってあるでしょうし、それをテーブルに置くときは表を、つまり一番『むかし』を上にするでしょう。
だから、『一番上』が『今』ということは、まさに今この瞬間に『新しい写真』が張られていっているのだと思います。現在進行で積み重なっていく写真と思い出。
わたしの小さい頃も、よくお母さんが写真を撮ってくれてたくさんのアルバムが今も家にしまってあります。けれど、高校あたりから写真を撮る頻度はかなり減ったものです。お互いに時間がなくなるのもそうですし、撮られる側がなんとなく恥ずかしくて写真をいやがるようになるからでしょう。
だから、今まさに、きっと毎日のように写真が増えていくというのは、本当にこどもがかわいくて、大切で、愛しているお母さんとお父さんがいるからだと感じるのです。
そして、このお歌が写真をアルバムに張っている場面だと思うと、ものすごく心暖まる光景が目に浮かぶのです。最近はデジカメでパソコンやUSBに保存されたままというのも多い中で、時間を作ってアルバムに写真を張っていく。それにただアルバムに張るだけでも、写真の縦横の向きやスペースでレイアウトにはかなり試行錯誤する余地があります。「ここにはこの写真を並べましょう」「いいや、この写真は1ページ使ってしまおう」なんて。そんなふうに話し合いながら、お母さんとお父さんが、お互いに子ども自慢と自分のベストショットの賞賛をしあって、最高のアルバムを作っている。そのアルバムに納められる写真の未来である今は、みんなの笑顔。『いつまでも今』の幸せな笑顔。
それはとても、ミルフィーユみたいに甘くて幸せなひとときなのだと思います。
奈月遥
★0
自分はネガティブ野郎だから、この歌すっごく怖いと思いました。メインで感じたのは、他の人が書いているような明るい可愛い感想なんですけど、じわじわーと怖さが。
ミルフィーユに喩えられた写真は、楽しく幸せな「今」を切り取ったものばかりなんだと思います。ときどきキャラメルみたいに苦い部分もあるかもしれないけど、全体としては美味しく仕上がるような、いい苦さなんだろうな。
怖いと思ったのは「いつまでも今」です。新しい写真が来なければ「今」は更新されない。つらい時期が来たら、このひとの「今」はずっと前に止まったっきりになってしまう。歌の雰囲気が明るくて可愛いらしく、「いつまでも今」と結句で言い切ってるものですから、その可能性を全く想像していないか、もしくは「それでいいじゃないか」と肯定しているような感じがして、それが怖かったです。底抜けの無邪気さか、途方も無い苦痛の末の思い切りか……。
ゆら
★0
ミルフィーユという比喩は、写真の積み重ねということ以上に、言わずして甘い思い出ということを表現できていて良い表現ですね。一方で、『ミルフィーユみたく積んでいく』ってどういう積み方なのかと気になる部分もあります。
また、『一番上はいつまでも今』という表現も甘い思い出に執着せずに今を生きよう、楽しもうという主体の前向きな気持ちが伝わってきます。
焼きみかん
★0
写真を重ねていくと一番上が常に「今」だ。というとてもシンプルな発見。いろいろ詰め込んだ歌が多い中で、このシンプルさがかえって爽やかで気持ちよく感じました。「今」のお題にもすんなりはまりますし、積まれた写真をミルフィーユに例えたところも良かったと思います。ひとつだけ気になったのが「みたく」です。口語短歌とはいえ、文字になるとちょっと引っかかります。もう少し他の言葉や語順をいじれたかもしれません。でもそれを差し引いても好きなお歌でした。
千原こはぎ
★0
「ミルフィーユ」という直喩に惹かれました。ただ、スイートな雰囲気の歌なので、「みたく」と続けるのはあまりにも幼い印象を受けます(「積んでいく」との押韻を考えられたのでしょうか)。「一番上はいつまでも今」というフレーズも、JPOP感は否めませんが、私は嫌いではありませんでした。Iの音を上手く用いているように思います。
龍翔
★0
ミルフィーユの比喩表現がとても好きです。
たとえられているのは時間ではなく記憶だと思いました。
過去を忘れてはできません。たくさんの記憶を積み上げてこそ、ミルフィーユ。
ごろー
★0

今世紀最後の恋と知っているシーラカンスは涙を泳ぐ

出詠名 08404大木はち × 404notF0816
3 / 36 ×6 ×24 ×8

互選名 些松凜恋小倉きなこ中森つん奈月遥村田一広yuka真篠未成南瑠夏北大路京介三次則秋紫村かすみ薫智大介なつお深淵なる月迂回黒猫。妖精化師ごろー湊あかりオリー宮嶋いつく長月優椋鳥スコヲプ桔梗月丘ナイル橋師焼きみかん千原こはぎ羽島かよ子杏野カヨきい月花七海奏一郎小宮子々龍翔

選評名 寺山修司の涙は人間のつくることができるいちばん小さな海ですという言葉を思い出しました。永遠に忘れることのできない恋、変わることのない想いの象徴としてのシーラカンス。きれいにまとまりつつ、泳ぐで終わっているところすっと気持ちが抜けるような印象になり、悲しくなりすぎなくていいと思います。
南瑠夏
★0
今世紀最後の、シーラカンスといった強烈な印象を残す言葉が自然に入っていて惹きつけられました。逆に、恋や涙といったわかりやすい言葉も入っているので、歌全体が意味不明になってしまうことを防ぎバランスがとれているようです。ひとつだけ気になったのは、知っているシーラカンスなのか、知っている/シーラカンスなのかがわかりにくいことです。
紫村かすみ
★0
「今世紀最後」「シーラカンス」と強い言葉が2つありますが、内容的にうまくつないでいて、共感が持てました。前の方が書かれていますが、区切れが動詞2つでしたら気になります。
紫苑
★0
「今世紀最後」「涙を泳ぐ」と思い切った表現がいいですね。今世紀はまだ80年以上続くのにいいのかとも思いましたが、今日という時間の切り取り方が多い中、今世紀という時間軸を選んだ視点が面白いです。作中主体は自分なのかシーラカンスなのかがまぎれないといいなと思います。
太田青磁
★0
「涙を泳ぐ」はあまりにも分かりやすすぎる比喩ですし、格助詞は「は」で良いのかというところも気になるところではあります。切れ目が分かりにくいので、上の句が主体のことを言っているのか、それともシーラカンスのことを言っているのか、判断に困るのですが、どちらにしても、「積年の成就しない片思い」という感じの切なさがあり、票を入れました。切ないものに目がないのです。
龍翔
★0

ただ今をもってお別れいたします惜しいものです今の名字も

出詠名 竜宮城で酒池肉林小早川 × ごろー
4 / 36 ×5 ×26 ×14

互選名 中森つん管理人知己凛大木はち北大路京介大葉れい多香子太田青磁三次則秋ばん悠不可思転レオやんや彩華妖精化師泳二河嶌レイエイ太夫ルイド リツコオリーカオリナマンダイガッキ双葉屋ほいるもも塾カレー長月優スコヲプ蒼井灯桔梗404notF0816遊糸橋師焼きみかん千原こはぎそぼ降る雨はだしわんこ山田悠佳里小宮子々きつね龍翔

選評名 結婚か離婚か。どちらにしても「今」と別れるのは悲しいですね。
中森つん
★0
ああそうか、これ離婚読みも出来るんですね!個人的には離婚だと惜しいとは思わないだろうから、結婚読みをします。ある種のマリッジブルーなのでしょうか。
大木はち
★0
個人的には離婚かなと感じました。今の名字で出会った人たちからその名で呼ばれていたり、名字自体は気に入っていたり、なんて。「惜しいものです」がニュアンスに富んでいて、一言では言い表せぬ何かを感じさせますね。きりりと姿勢を正した女性の姿が浮かびました。
蒼井灯
★0
文字どおりに読むと別れて名字が戻るともよめますが、ここは大いなるよろこびの中にあるわずかな切なさを味わいたいと思います。
太田青磁
★0
なるほど!離婚だと思っていました。「惜しいものです」の飄々とした口ぶりに、どんな名字でもなんとかやっていけそうな頼もしさを感じます。
大葉れい
★0
今まで呼ばれた思い出や、呼んでくれた人々や、そこに確かにいた自分自身のことだって大切だからこそ、口調がこんなに一見そっけないほど整っているのかもと思いました。普段名字を意識していなかったとしても、誰かに大事に呼ばれたことは本当ですから。愛の裏返しの強がりかもしれません。この言葉を言いながら(思いながら)ご本人が思い返している「今」だった過去が気になります。
結婚も離婚も考えましたが、離婚した両親のどちらかを選んだ子供や施設からひきとられる子供も考えてしまいました、強がりで口調が固くなったのかななんて(考えすぎなのはわかっております)。別れの次には新天地があるはず。それは喜びの場所なのか、切ない場所なのか。
不可思転
★0
実家から逃げるための戸籍ロンダだと思った……。
評でみなさん色々想像が膨らんでいますが、やっぱり「惜しいものです」の魅力でしょうか。きっぱりと「ただ今をもって」と頭につけて強くお別れしたのに、「惜しいものです」なんて。そのギャップが気になって仕方ないです。
今の名字でいるせいですごく嫌なことがあったけれど、僅かでもいいこともあったと認める強さがあって、嫌なことと戦ってきたという自信もすこしあるから、「惜しいものです」と言えるのかなって思いました。
ゆら
★0
「お別れいたします」と宣言したのに「惜しいものです」と感じているあたりに、きっと名字に愛着があったのだろうなと思います。
私は結婚だと思ったのですが、みなさんの評を見て離婚ともとれるなと思いました。結婚して変わった名字と、寄り添っていた人に告げる「お別れいたします」という宣言だったのかな、なんて。
オリー
★0
最初は結婚で読んでいたのですが、皆様の評を読んで離婚っぽいな、と思いました。確かに、幸せな結婚を詠みたいのなら、「お別れ」という言葉は使いたくありませんからね。
塾カレー
★0
「お別れいたします惜しいものです」に惹かれました。愛着とも往生際の悪さ(いい意味です、もちろん)とも解釈できたので。それだけ今の名字と過ごしてきた時間が大切だったんだろうな……と。
ある程度歳を重ねたら、いろいろとあるんじゃないかとは思うんです。
ウィットをきかせた作者さんたちに脱帽です^^
なかてん
★0
内容、着眼点が面白い歌だと思いました。個人的な好みの問題ですが、題詠として、「ただ今」と「今の」どっちか一つにしたらもっとスマートな感じになるように思いました。「ただ今をもって」の所にもう一つ別の要素を入れるとか。言い方の面白さだけでなく歌に深みが出るような気がします。
ヒヨワくん
★0
惜しいのは名字のみならず、その名字で過ごしていた期間でもあると思います。でも自身のことを客観視していて、それほど未練はなさそう。
どのコンビか想像できそうです(笑)
遊糸
★0
コミカルな雰囲気で4句目までを一気に読ませ、結句で種明かし。重いテーマを扱っているのに重さを感じさせない上手い歌だと思いました。「ただ今を」と「今の」でふたつ「今」が出てくるのが少しくどく感じました。どちらかひとつにできたらもう少しすんなり読め、この歌のテンポの良さがもっと生かせたかもしれません。
千原こはぎ
★0
結婚と読みました。実家の玄関で(こころの中で)いってそう、そんなイメージです。表札みていろいろ思い出してるのかも。別れたのは名前であり家なのかなと思いました。かるく言ってるのが逆に響く感じがしました。
はだし
★0

たおやかな月がふたりを覆うのに今日は昨日になぜなるのです

出詠名 ついおく紫苑 × 中牧正太
5 / 34 ×6 ×22 ×9

互選名 些松凜恋小倉きなこ中森つん知己凛yuka坂本 樹大葉れいナイス害不可思転ちゃむやんや野崎アン妖精化師河嶌レイJuneももseriヒヨワくん長月優スコヲプ蒼井灯月丘ナイル遊糸橋師焼きみかん羽島かよ子杏野カヨひらたてるはだしわんこ山田きい小向大也きつね龍翔

選評名 一読して下句に惹かれました。ふたりにとっては今日が永遠にも思えるのに、なぜ過去になってしまうのか。まっすぐな問いが胸に迫ります。
すっぽり覆われてしまいそうな月は満月かな、でも「たおやかな」というとほっそりした三日月のような気もします。個人的には、覆われてしまいそうなくらいに大きく見える満月、と読むと楽しいので、「たおやかな」は別の表現があるかも。
大葉れい
★0
「なぜなるのです」と問いかけているのに、答えが返ってくることを望んでいないような、ただひたすら切なくて問うことしかできないような印象。そのやるせなさは「今日」を大切に思うからこそ、かけがえのない「ふたり」の空間をくれたからこそなのだろうなと想像しました。どんな「ふたり」なのかは分からない、けれどふたりがどんな関係であっても月は何も責めず優しくどんな事情であっても覆ってくれる。今日が昨日へ変わることを覚悟しているふたりなのだろうか、なんとなくそんなことまで考えました。
不可思転
★0
たおやかな月は三日月をイメージしますが、とても調べが美しく惹かれました。ふたりにとっては、永遠に今日であって欲しいのでしょうね。ふたりの切ない関係性をも連想させる深い作品だと思いました。
ちゃむ
★0
わたしも下の句がいいなと思います。今日が過去にならなければいいという気持ちが、答えのいらない疑問として表現されているところが好きです。余談ですが笑っていいともグランドフィナーレでの香取くんのスピーチを思い出しました。
たおやかな月というのはわたしも三日月をイメージしました。月の満ち欠け、明日はまた今日と違う月。それが下の句で表されている気持ちとマッチしていていいなと思います。
野崎アン
★0
上の句の情景がきれいな印象です。「今日は昨日になる」というのは一日があっという間に過ぎてしまうということなのでしょうか。「なぜなるのです」と歌に問いかけられて少し戸惑いを感じてしまいました。
太田青磁
★0
今日が過ぎてほしくない、あるいは今日を忘れたくないという切なる願いと、それを言い切らず問いかけの形にしている奥ゆかしさが上の句の「たおやかな」と響きあうようで、綺麗で上品なお歌だなと思いました。月は、やわらかな月の光そのものなのか、或いは月の架かった夜空そのもの、転じて夜そのものなのかなとも。「覆う」という表現に、なんとなくふたりが裸であることまで想起してしまったのですが、それはさすがに考えすぎでしょうか…
蒼井灯
★0
私もエロスを感じました。
「たおやかな月」は三日月であり、女性のほっそりとした身体であるような印象です。下句は不倫を表現している気もして、美しさと切なさを感じました。
遊糸
★0
「たおやか」という言葉からも想起される、上の句の上品さ、余裕のある雰囲気、永遠性のようなところから、下の句の切羽詰まったところに結ばれてゆくところがとても素敵だと思いました。「のに」という逆説的な結び方が面白いと思います。本当は月が出ているわけですから、夜が来て、朝が来ることを知っていて、今日が昨日になってしまうことも、主体は分かっているんですよね。それでもあえて問わざるを得ないところに切なさを感じます。
龍翔
★0

からっぽの金魚鉢には今はもう壊れた月が捨てられている

出詠名 ひよこのモラル迂回 × 杏
6 / 30 ×3 ×24 ×13

互選名 些松凜恋奈月遥管理人村田一広真篠未成南瑠夏大木はち紫村かすみなつおやんや宮木水葉小早川野崎アン妖精化師泳二エイ太夫オリーカオリナマンダイ宮嶋いつくガッキ双葉屋ほいる蟹田ゆらヒヨワくん長月優椋鳥404notF0816遊糸中牧正太橋師千原こはぎ杏野カヨそぼ降る雨はだしわんこ山田きい小宮子々龍翔

選評名 お祭りの夜店でだれもが一度は、あの金魚すくいでもらった金魚が家に来たことがあるのではないでしょうか。それから、せっかくだからと、ホームセンターなんかで金魚鉢を買って、そこに小さな体の金魚を浮かべて、しばらくの目慰みにするというのも、ありふれた夏休みの出来事でしょう。
そして、すぐに金魚が亡くなってしまい、幼い胸に小さなしこりをつくるという体験も。
「からっぽの金魚鉢」とは、日本の津々浦々で、実はありふれたものでありながら、それでいてだれも目を向けなくて、ありえないものだと感じられます。その中に浮かぶ者を失ったこの金魚鉢は、今はどこにあるのでしょうか。わたしは、この歌を詠んで最初に思い浮かんだ景色は、庭に他のガラス片と一緒になって打ち捨てられている金魚鉢です。その身に受ける者も亡くして、金魚鉢自身も葬られた後に、弔いとして月が照らされるのも、まるで捨てられているよう。空にあれば人々が好んで見上げ、平安の頃では池に浮かんだ姿を賞賛された月が、金魚鉢に映った瞬間に、その光も姿もなにも変わらないのに無価値に見えてしまう、そんなさびしい自分になってしまったことに対してさびしいと感じてしまう。そんな心情を思い浮かべました。
その一方で、この金魚鉢自体は、まだ捨てられてないとしたらどうでしょう。夜店の金魚は庭に立てたアイスの棒の下で眠っている。その金魚のなきがらを運んだまま軒先に放置された金魚鉢に、月が映り込む。鼻をかんだティッシュがゴミ箱に捨てられるように、小さな金魚鉢に捨てられたように転がっている月の姿を、子供がおもしろがって指差している。しかも、その月は金魚鉢の流曲線によって歪んで壊れてしまっている。子供にしてみたら、こんなにおかしいものもないでしょう。
もしかしたら、今は月が捨てられているのだけれど、もともとは金魚が捨てられていたのが、金魚鉢なのかもしれません。子供用のビニールプールの中に放り込まれて、みんなに掬われたり、そのポイから逃れたり。そうして人を楽しませたことで、もう金魚の役目は終わり、あとの金魚鉢での生活は余生と見ることもできます。そしてその余生も、人に弄ばれてボロボロになった体は長くなく、そうでなくとも金魚の飼い方を知らない家に行ってしまえば満足に寿命を送ることもなく。そんな使い古しの金魚が捨てられる金魚鉢と考えると、なんだか背筋が寒くなります。
使われなくなった金魚鉢、亡くなった金魚、捨てられた月……楽しい夏が終わって、秋の涼しさが迫るのを、なんとなく思わせられるお歌です。
奈月遥
★0
不思議な雰囲気の歌ですね。ちょうど月が金魚鉢に入るくらいの大きさで、黄色い光を放っていて、割れたようになっていて捨てられているのかな。
村田一広
★0
空っぽの金魚鉢に月が映っているのを想像しました。空っぽとは言っても、水は張ってあるのかな。住人であった金魚が死んでしまった「空っぽ」の金魚鉢に、月が映る。水面が揺れる。そんなイメージです。
下の句がとても好きです。金魚が住む家としての金魚鉢でなく、ゴミ箱になってしまった金魚鉢に寂しさを感じます。
野崎アン
★0
想像の余地がたくさんある歌ですね!金魚鉢に捨てられているのは何か月のモチーフなのか、実は壊れているのは金魚鉢で月がそこに映ってるのか。そこは縁側なのか部屋の一角なのかごみ捨て場なのか。僕の頭にはごみ捨て場に置かれた割れた金魚鉢に月が映ってるのが鮮明に浮かびました。美しい。
小早川
★0
内容に惹かれました。「金魚鉢には今は」と、近いところに「は」が2つあるのが気になりました。
紫苑
★0
からっぽの金魚鉢はユニークな視点です。壊れた月という表現が何を象徴しているのかうまく読み解けませんでした。
太田青磁
★0
なんとなく人魚姫の世界観を連想しました。
「からっぽの金魚鉢」「壊れた月」という儚く打ち捨てられたアイテムが悲しみを誘います。童話の世界に訪れたような感覚になり、読み手自身に物語を広げさせてくれるような印象です。
遊糸
★0
読むほどにしんみりと情景がしみてくるお歌です。誰しも子どもの頃必ず一度は金魚を飼った経験があるはず。でもすぐに死んでしまってせっかく買った金魚鉢も物置の隅で忘れられてゆく。「壊れた月」が何かの暗喩なのか読み取るのが難しいですが、そのまま壊れたおもちゃや月の置き物だったとしてもいい情景だなと思いました。からっぽの金魚鉢の中に無造作に放り込まれた月。透明なガラスと硬質な黄色の質感が美しく、なんとも言えない物悲しさを醸し出しています。
千原こはぎ
★0
「もう壊れた月」が気になります。どのような状態なんでしょう。月が壊れるって想像できません。それをどのように捨てるのかも謎です。ポルノグラフィティの月飼いという曲では、水槽の水に月を映すことで月を捕まえていましたが、捨てるとなると。金魚鉢に映っているのを捨てられていると言ったのかな。捨てるというのは飼うのと同じように能動的な行動だから、誰かがそこに月を放り込んだのかな。わざわざ? 月を飼うなら分かるけれど、わざわざ捨てるって何があったのだろう。
しかし、からっぽの金魚鉢という寂しいものに月が映っていたら、たしかに「飼う」ではなく「捨てる」だろうなって納得もあります。埃かなにかで綺麗に映らなくて、それを「壊れた」と言っているのかな。
水に映る月というのは定番ですが、それを一捻りして、定番の良さによって物悲しさを引き立てているのがいいなと思いました。
ゆら
★0
金魚鉢に捨てられた月。心を持ってかれました。お月様っていちばん物静かな存在でいて、いちばん饒舌な夜の女神だとおもいます。かなしみもせつなさも歓びも、月はやんわりくるんでくれます。わたしのなかでは神々しい存在のお月様を、金魚鉢に捨てられている、となさった作者さまの意図には、お月様への同情というか労わりのような、せつない背景が漂っているように思えます。
杏野カヨ
★0
とても素敵な世界観でした。ぐっと惹きつけられる雰囲気に投票いたしました
そぼ降る雨
★0
「今」を詠むために、かつては清らかな水が満ち、金魚が泳いでいたであろう金魚鉢が今は…という対比を用いている点、いいなあと思いました。まだ水は入ったままで、そこに月が映っているのでしょうか。月が「捨てられている」というのはそういうことなのかな。
小宮子々
★0

よそゆきの街に変わるね踏切も坂道も今このさよならで

出詠名 ロゼロゼ千原こはぎ × 河嶌レイ
7 / 30 ×3 ×24 ×11

互選名 些松凜恋小倉きなこ奈月遥真篠未成南瑠夏坂本 樹北大路京介多香子太田青磁三次則秋紫村かすみちゃむ薫智大介気球やんや小早川黒猫。野崎アン妖精化師泳二湊あかり亜梨宮嶋いつく蟹田ヒヨワくん塾カレー長月優中牧正太橋師羽島かよ子杏野カヨひらたてるわんこ山田きい月花きつね

選評名 情景が浮かび上がってきて切なさを感じさせられました。
よそゆきの街にも坂道も踏切も共感してしまいました
薫智大介
★0
別れによってその街が身近な存在ではなくなるということは良くわかるのですが、「変わるね」という語りかけから主体一人にとって「よそゆきの街」になるのではないようです。二人でよく訪れた街で別れるということでしょうか。その辺りの物語はもう少しヒントがあっても良かったかもしれません。「よそゆき」の街というところにそのヒントがあるのでしょうか。
泳二
★0
住み慣れた街を離れる若者の歌と読みました。当たり前のようにしてそこにあった日常が非日常になって行く、その気持ちは慣れ親しんだものを手放す寂しさにどこか似ているような気がします。「踏み切り」「坂道」といったワードによってそういった感情がより情景を伴って想起させられました。
ただ、他の方もおっしゃられているように、主体の語りかけの対象がどこにあるのかもう少し詳細に描いた方がより魅力的になったかなと思います。
坂本 樹
★0
さよならの前までは、「あなたの街」が「わたしの街」でもあり、この瞬間によそゆきに装いに変わって見えるという意識の変化がビビッドに伝わってきます。踏切に遮断されてしまった想いを、坂道にこれからひとりで過ごしていかなければという想いも感じられて、名詞の選び方も巧みだなと感じました。切なさが流れてしまう印象もあるのでしょうが、「今」というテーマの捉え方も自然で印象に残りました。
太田青磁
★0
春は門出の季節です。
そういう「今」も意識しつつ詠まれたのでしょう。
よそゆきの街に変わる、というのがどこまでも辛い表現ですね。
いつもそこにあった日常、というものが今度から非日常になってしまうのですから。今までの日常をはっきり意識させることで、より下の句の「今このさよならで」がくっきりとしていると思いました。
塾カレー
★0
踏切、坂道のチョイスが「通いなれた道」のイメージを思わせます。自分自身の地元ではない、学生生活を送った街とか、恋人の住んでいる街とかでの。さよならによって自分との関わりは急になくなってしまうであろう街に、自身の一つの時代の終わりも感じているような寂しさと新たな決意みたいなものも感じます。素直に詠んでいる感じが好きです。
ヒヨワくん
★0

大好きな背中をひとつ殴ったら今にもこぼれそうな星空

出詠名 シャイで気弱なレインボー大葉れい × ヒヨワくん
8 / 30 ×3 ×24 ×9

互選名 些松凜恋小倉きなこ奈月遥村田一広北大路京介多香子ちゃむ気球レオルオ迂回野崎アン妖精化師泳二河嶌レイ湊あかり宮嶋いつくガッキseri文月郁葉塾カレー長月優椋鳥スコヲプ遊糸橋師焼きみかん稲垣三鷹はだし小向大也七海奏一郎小宮子々龍翔

選評名 大好きな背中って、時折殴りたくなりますよね。
それはこちらの気持ちをわかってもらえずにもどかしい時だったり。
それは嬉しいことを言ってもらえた時の照れ隠しだったり。
それは人としてやってはいけないことをやったことに対する憤りだったり。
それはひたすら目指す先を歩んでいる相手へ追いつけない焦りだったり。
それは、ただたんに、こっちを向いてほしい時だったり。
そうやって、言葉にできない感情や溢れ出してどうしようもない気持ちを殴って伝えようとしたら。そうやってせめてもの行動を起こしたら。世界がほんの少し変わる気がするのです。そして星がこぼれおちて流れ星になったら、その間に願いごとを三回唱えて、しかし、それでも相手がなんにも変らなくて。そしたら、もう一回殴って。
恋ってそんな繰り返しなのかもしれません。
何度も殴るのでなくて、ひとつ殴るというのに、奥ゆかしさを感じます。あるいは、そのひとつというのは、本気の一撃だったのでしょうか。相手が吹き飛ぶくらいのパンチをかまして、世界が揺れて星空がこぼれそうになったなら、相手が少し心配になります。
それから、殴ったほうが心配になるような読み方もできますね。星空がこぼれそうというのは、目から涙が零れ落ちそうになって。その涙に映って視界の隅に見えていた星空が、いっしょに落ちて消えてしまいそうになる。それで、星空といっしょにふたりの関係も本当に失くしてしまいそうになってしまう――これからまた逢う機会も、今までの思い出も、自分の気持ちでさえも。後ろを向いてそのまま立ち去ろうとする大好きな背中を、力と感情に任せて思いっきり殴ったら。途端に別れ話が現実味を帯びてきて、涙が溢れてくる。
それで星空がもし本当にこぼれてしまったら。この人は泣き崩れてしまうかもしれません。殴ってしまってから、そうして泣き出してしまうほんのわずかな隙間の、刹那の情景を詠み表すことができるのは、短歌の強みだと感じます。
奈月遥
★0
主体と相手との距離感がいいなと思いました。「大好き」だから「ひとつ殴る」。その間には深い愛を感じます。
ただ、下の句はやや既視感があり、綺麗すぎる印象を受けました。
湊あかり
★0
大好きな人の背中と補ってよむと意味は通じて、相手との関係性がやさしく伝わってきます。「今にもこぼれそうな星空」はちょっとありすぎな雰囲気です。
太田青磁
★0
「ひとつ殴った」がいいですね。
星空もとい、今にもこぼれてしまいそうな思いを押しとどめてひとつ殴った。うむ。かわいらしいです。
塾カレー
★0
我慢してなくて泣いちゃっていいんだよ、って切ない気持ちになりました。好きな歌ですが、「背中を殴る」から何回も殴ったという感覚にはならないので「ひとつ」は余計かなぁと思います。
遊糸
★0
背中を殴ることと、こぼれそうな星空に因果をつけていることから、その背中がどんなに好きか伝わってきます。こぼれそうな星空を隠せるぐらい、あるいは星空をこぼすことができそうなくらい、大きく感じられる背中なのでしょう。
なぐって、さほど痛くないのに相手がふざけながら「うっ」って身をかがめたとき、向こう側にあった星空が大きく見えて「あ、こんなに大きいんだ」って改めて気づいたというシーンを想像しました。「大好きな」って頭で言ってるけど、自分が思ってるよりもっと大好きだったと気づく。かわいいです。
ゆら
★0
夜道っぽい。殴ったほうは長い袖のニット着てそう、わからんけど。ふざけての「ばかやろ」みたいなアレかなと思いました。それまで背中っていうか相手ばっかみてたり話してたりしてたから、そこでやっと認識できたんかな。「ひとつ」ってぎゅっと狭めたような視点があるから対比みたくなって、「星空」で世界がすごく広がる感じがします、きれい。いいなあ
はだし
★0

枕木をスニッカーズと取り替えて今夜宣戦布告をしよう

出詠名 龍二 ~茶屋町憂歌(ブルース)~龍翔 × 泳二
9 / 27 ×7 ×13 ×8

互選名 些松凜恋小倉きなこ管理人南瑠夏大木はち北大路京介大葉れい太田青磁三次則秋ナイス害迂回小早川河嶌レイ亜梨蟹田ゆら塾カレー蒼井灯桔梗404notF0816遊糸橋師そぼ降る雨稲垣三鷹はだし七海奏一郎小宮子々

選評名 スニッカーズの線路が戦争になったらとてつもなくよく燃えるきっと。宣戦布告をしていったい何をするのかわくわくします。スニッカーズというお菓子からも少年のいたづらっぽい楽しい響きがありますね。ちょっとスタンドバイミーの冒頭を連想しました。
南瑠夏
★0
はちゃめちゃな感じ、大好きです。はたから見たらかなり滑稽なのに、本人は大真面目そう。私ははじめ枕木の一本だけを取り替えるイメージだったのですが、片っ端から替えてしまったら大騒ぎだし宣戦布告という大げさな表現にもぴったりくると思い直しました。
大葉れい
★0
セックスレスの夫婦の歌として読みました。スニッカーズの日はYES。でも久しぶり過ぎて、パートナーからどんな反応をされるか怖い。でも愛を知りたい。いじらしい歌だと思います。
ナイス害
★0
スニッカーズではぐにゃりとして、電車の重みに耐えられないですね。何と戦うのかは想像が膨らむばかりですが、物騒な割に現場の光景に毒がなくて、スマートな知能犯のにおいがします。おとなびた少年かもしれない。世界中の戦争がこれくらいばかばかしければ良いのに。
蒼井灯
★0
地味ながら確実に世の中だとか社会に組み込まれている枕木を、自分の世界にあるモノとしてのスニッカーズと取り替える。溶け込むんじゃなく異物としての自分のまま世界と戦うような決意を感じます。
スニッカーズ と せんせんふこく の音のよさも重なってぐいぐい世界に食い込む印象です。
迂回
★0
パーツは好きなんですが、情景と意味合いがいまいちつかめず。皆さんの票を読んでなるほどと赤べこのように頷いております。ここからセックスレスの夫婦を読み解くとか天才か!w
小早川
★0
わたしもこれは悪ガキボーイズふたりの、スタンドバイミー的な歌だと思いました。枕木をスニッカーズ(マース社)取り替えるのあたりは、ポッキー(江崎グリコ社)ではダメだし、割ってバラバラにしたらキットカット(ネスレ社)でもいい気はしますが、そこはやはりアメリカ製のスニッカーズなのでしょう。宣戦布告をするのが「今夜」ということなのですが、小学生くらいは「夜の外出」に憧れる頃ですよね(今はそうではないかもしれませんが)。「枕木」「宣戦布告」あたりでちょっとレトロな「戦争ごっこ」のイメージが浮かびます。大人になってしまった今はもうそんな風には言えなくなっただけに、この歌は少しだけ淋しい印象がします。
河嶌レイ
★0
言われてみるとスニッカーズは枕木に似ているかもしれません。発見。
私もスタンドバイミーの世界観を連想しました。社会の秩序を乱して自分たちの手で新しいルールを作ろうという意思表示でしょうか。大冒険の始まりの予感がします。

★0
枕木とスニッカーズの対比が面白いですが、「宣戦布告をしよう」につながるには少し弱いと感じました。
太田青磁
★0
正直皆様の評を読んでも実感が湧かないのですが、何と言えば良いのか、向こう見ずな感じで面白いです。そういやスニッカーズのCMってこんなイメージだったねえ。
塾カレー
★0
好きです、こういうの。人が死ぬようなリアルな戦争ではなく可愛らしい遊びなんだろうと思いました。
しかし、リアル戦争ならばと考えるとスニッカーズに取り合えられたせいでVIPが死んでしまい戦争に突入...
スニッカーズ事変。やはり喜劇的に感じます。親しい間柄での遊びであって欲しいです。
北大路京介
★0
枕木の代わりになるほど巨大な特注スニッカーズなのか、普通サイズを大量に用意したのか。宣戦布告の後はスタッフが美味しくいただくのでしょうか。
枕木をスニッカーズにすることがなぜ宣戦布告になるのか、なにに対して宣戦布告をするのか、単独犯か組織的犯行なのか、お遊びなのかマジなのか、なぞはたくさんあります。具体的にどういうストーリーなのかはよく分かりません。
しかし、枕木をスニッカーズに取り替えてしまうというアイディアと「宣戦布告をしよう」という呼びかけが並んでいるだけで面白いです。わからないままさでも突き進めるこのノリというか、言葉の勢いに身を任せるのが心地いい。スニッカーズという言葉のパッとした音と、男子のお菓子ってイメージが歌にピッタリで、このセレクトが歌の魅力の軸になっているようです。
ゆら
★0
スニッカーズに変えるって愛すべきあほさ、なんでやろう。調べたら、線路のやつってことで、この主体は電車をとめたいのではと思いました、ふごむし。夜の電車は帰宅が多いからそれへの宣戦布告かな。仲いい友だちが帰るということへの反抗(もっと遊んだるんじゃい)とか、好きな人のとなりにいるライバルへ(あきらめないわ)とか、いろいろありそうで面白いです。
はだし
★0
スニッカーズ事変に大いに笑わせていただきました。私の中で大ヒット。
枕木と宣戦布告、という組み合わせからは某歴史的事件が想像されるのですが、それがスニッカーズであるあたり、やはり喜劇的というか、明るい雰囲気を感じさせます。宣戦布告の相手は誰なのか、何なのか、きっとそれは真面目くさった、頭の固い何かなんでしょう。それを「ほら笑ってみろよ、俺らに勝ってみろよ」と笑い飛ばすような、そんな勢いと爽やかさを感じさせる歌であると思います。その勢いにこそ「今」が息づいているのでしょう。
小宮子々
★0

今しがたあなたの夢から覚めました 私ひとりで朝を漂う

出詠名 1Q97稲垣三鷹 × 坂本 樹
10 / 27 ×3 ×21 ×13

互選名 小倉きなこ奈月遥管理人知己凛村田一広多香子太田青磁三次則秋不可思転彩華みちくさ小早川妖精化師泳二エイ太夫ルイド リツコ亜梨カオリナマンダイガッキJuneももseri文月郁葉塾カレー長月優スコヲプ404notF0816遊糸中牧正太橋師羽島かよ子杏野カヨひらたてるはだし悠佳里

選評名 あなたの夢がやわらかくていいですね。朝を漂うも夢と現実のあわいを感じさせていいなと思います。字余りはひと工夫できたのではとも思いました。
太田青磁
★0
今しがた覚めた夢。ぼんやりしてる寝ぼけまなこの姿が想像されてかわいい。結句の漂うに繋がっていくふわふわ感が全体に広がります。
三次則秋
★0
穏やかな朝のまどろみの中で、ほんのりと切なさがうずまいている情景が、なんとも美しいと思います。
「今しがた」と始まるところが、とてもいいですね。「今しがた」という表現は、相手に語りかける時に使うもの。起きて瞬間に目の前からいなくなった「あなた」へと、夢の残滓がまだある間に、今の言うにも言われない愛しさと哀しみが混じった気持ちを伝えようとしているのでしょう。とても純粋な祈りに健気さを感じます。
そして「私」は目覚めたのは「あなた」の夢から。自分の夢、自分の潜在意識が都合よく造り出した妄想ではなく、「あなた」の心が投影された夢にいられたこと。どれだけ幸せなことでしょう。そこには、確かに「私」へ向けられていた想いが溢れているのですから。
そしてその夢は、「あなた」からすれば「私」の夢であったことでしょう。二人の命が夢という場所で繋がり、溶けあって、出逢う。それは現実でも、おなじこと。体という器に納まった命、その認識を司る心というものが「それぞれ」見ている現実で。出逢いとは、お互いのその心が別個に認識しているのだけれど、確かにそれを共有していると実感できたとき、それは現実でも夢でも等しく「真実」の出逢いと言えるのではないでしょうか。
その幸せな出逢いから別れて――目覚めという現実への復帰によって引き裂かれた時、「私」の心は、現実を全て受け入れることはできず、けれど朝の陽射しを目の当たりにして、夢の残滓が幸せに気持ちを浸しつつ、また眠ったとしても戻れないだろうと理解して切なさが心を揺らす。そんなどうしようもなく、そして波打つ感情に、「私」は漂っている――ひとりで、一人で、独りで。泣きたいような気分にもさせられます。それも、さびしくてかなしくて声を張り上げたい気持ちとあたたかで幸せで思わず涙がこぼれてきそうな気持ちと、そのどちらも押し寄せてきて、しかもそれがまったくの同じものなのです。例えるなら、海の波が盛り上がるのと引き沈むのと同じよう。波は同じ波で、上がっても下がっても、揺られるのも同じ。けど、上がるのと下がるのとは違う。あえて名づけるならば、「愛しさ」が表情を変えているのでしょう。
上の句が「夢から覚めました」と言い切って区切られていることで、もはや夢に戻れない実感が伝わってきます。目が覚めた前後は、はっきりと断絶しているのだと。下の句では、それでも夢を振り返る「私」が戻れない夢と認めない朝との間でなにをする気力もなく身を委ねていて。その中で、どうすればよいのか「あなた」に問いかけているよう。あるいは、現実でもすぐに逢いに来てほしいと「あなた」にねだているよう。
ありのままの歌で、とても共感ができました。
奈月遥
★0
昔は「夢に想い人が出ると、相手がこちらをおもってくれているのだ」と考えたという話を思い出しました。
「あなたの夢」というのは様々な受け取り方ができると思います。「あなた」がつい先ほどまで見ていた夢とリンクしたのか、「あなた」が出てきた夢だったのか、それとも「あなたの夢」というのは「あなた」をおもっていた「私」の熱の象徴なのか。
上句の表現がまるで「あなた」におもいを告げているようで、切ないです。
不可思転
★0
朝まで飲んで、始発で帰る為に駅まで向かう時のような虚しさですね。
塾カレー
★0
夢と現実の交錯する僅かな間。「あなた」に親しく報告する形をとっていながら、そのひとが今も親しい相手なのかそうでないのかはどちらともとれそうです。前者であれば余韻を味わうふわりとした間、後者であれば思わず語りかけてから、あああなたはいないのだと実感するまでの間。どうともとれる浮遊感と実感を伴う言葉の選び方が自然で、上手いなあと感じました。(一瞬、ある朝相手への恋が冷めて突然孤独を感じた、という歌にも見えて怖くも感じたのですが、考えすぎですよね…)
蒼井灯
★0
誰かに語り掛けてるような口調なのにすごくぼんやりとしていて、相手がこの世にすらいないような雰囲気です。あなたの夢はあなたがいる夢だと思いました、朝なのに漂うのはまだ断ち切れてないからかな。さみしい。
はだし
★0

「なあ」だけで「コーヒーでいい?」と言えるようになるまであなたの今をください

出詠名 カレーショップ逢逢 × 塾カレー
11 / 25 ×4 ×17 ×15

互選名 些松凜恋中森つん知己凛村田一広yuka真篠未成北大路京介多香子三次則秋ばん悠不可思転薫智大介やんや深淵なる月ルオ小早川泳二オリー亜梨宮嶋いつくガッキ双葉屋ほいるseri文月郁葉月丘ナイル404notF0816中牧正太橋師焼きみかんそぼ降る雨ひらたてるはだし悠佳里七海奏一郎

選評名 「今」の表現がすごく好きです。
今を重ねていくことで、お互いの関係が深くなる、それを日常的な会話でよくわかります。ほっこりしました。
知己凛
★0
シンプルに「今をください」と言える心が清いです。この「今」とはきっと、これからの時間としてずっと繋がっていくのかな、と思いました。
不可思転
★0
いい歌ですね、差し上げたくなります。歌意が素敵な分下の句のはじまりが気になってしまって、ちょっともったいない気がしました。
小早川
★0
相手のメッセージをニュアンスだけで受け止めたいという恋心がいいですね。「と言えるようになるまで」が少しもたついてしまい、上の句の会話のリズムを生かし切れず、もったいないように感じました。
太田青磁
★0
ふたりの間のツーカー感を出すのに、やはり定型に収めた方がよかったのではと思いました。
例えば、言えるように→言えるほど、とするなど、工夫が出来そうに思います。
月丘ナイル
★0
上句の『「なあ」だけで「コーヒーでいい?」』というシチュエーションは、おそらくカップルであろう二人(夫婦と言った方がいいか)にとっての理想の月日の積み重ね方を表現できていてとても素敵だと感じました。『あなたの今をください』という表現についても、シンプルではあるけれども、個人の言葉で(テンプレート的な言葉でなく)主体にしかできない告白のようで魅力があります。
ただ、どうしても気になる三句目の六音ですが、確かに措置のしようはあったと思います。しかし、その前後のフレーズが歌の完成度以上の魅力を感じさせてくれました。
焼きみかん
★0
こんな関係を築けるようになりたいと共感しましたので投票しました
そぼ降る雨
★0

小5からメロンソーダを飲んだ子の緑の舌は今ぼくのもの

出詠名 月面観測スコヲプ × 月丘ナイル
12 / 24 ×5 ×14 ×15

互選名 小倉きなこ中森つん奈月遥管理人大葉れいばん悠不可思転薫智大介彩華迂回小早川野崎アン河嶌レイエイ太夫カオリナマンダイ蟹田ももヒヨワくん文月郁葉長月優椋鳥桔梗404notF0816遊糸橋師千原こはぎ杏野カヨ稲垣三鷹はだし悠佳里きつね龍翔

選評名 小5って遅くないですか?結構硬めの親に育てられた子なのでしょうか。そして緑の舌だからさっきまでメロンソーダを飲んでいたのでしょう。舌は今ぼくのものというのはかなりエロい。
大木はち
★0
ぇろいですね。と、一言目からこんなこと言いたくなるくらいに官能的なお歌だと思うのですが、その一方で言葉遣いが幼い子どものようなまったく無垢なものであるところに、巧みさを感じます。
小5からメロンソーダを飲んでいること知っているってことは、やはりこれは幼馴染になるのでしょうね。小さい頃から知っていて、それでいて、今でもメロンソーダを飲んでいるような子供っぽいその人に、好きだといっても「そーだねー、わたしもだよー」とかケータイばかり見ながら気のない返事をされたりして。
そんなことを言われて引き下がっては、男が廃るというもの。そこは多少強引にでも分からせたくなります。
肩を抱き寄せて、相手が目を白黒させているのにも構わず。頬に手をあてて顔を固定して。そのままくちづけを。
そしてメロンソーダで緑色になった舌をなぞって。その色を「ぼく」のものにして。そのあどけない幼さをぬぐいさって、大人にしてしまうだなんて! つまり自分の舌を相手の舌にから(自主規制)。そうやって彼女にまとわりついたメロンソーダの味をなくして自分の味を覚えさせようなんて、なかなか積極的です。やはり、男性にはこれくらい積極的に恋心を奪ってほしいと思います。そして、そんな強引なことをされたら、ぜひとも女性は全力で男をぶん殴ってほしいものです。様式美として。
ところで、この「ぼく」はなぜ相手が小5からメロンソーダを飲んだなんて知っているのでしょうか。もっと前だったり、もっと後だったり、どんなものをいつ初めて飲んだかなんて、本人だってなかなか覚えていないものです。それだけで、このメロンソーダは「ぼく」にとって重要な時に飲まれたもので、相手にとってもなにかしら意味があるものに思えます。
例えば、この二人が家族ぐるみの付き合いで。みんなで喫茶店に入り。なにやら聞きなれない「メロンソーダ」なんてものを「ぼく」が頼んでいるのを聞いて、相手の子も興味津々、よく分からないけれど、おんなじもの頼んでみたり。それで出てきた、綺麗な緑色、しゅわしゅわと弾ける気泡、刺激的なのど触りに、不思議だけどおいしい甘さ。もうそれ以来とりこになって、もういつでもメロンソーダを手放せなくなったりしてしまったり。それでもうメロンソーダに夢中で、大人になっても「ぼく」よりメロンソーダを優先したり。それでぼくが嫉妬したり。
小学校高学年までメロンソーダを飲まないというのも、すこし想像が膨らみます。紅茶など大人の飲み物ばかりで、あまりジュースを飲まない環境だとすると、おじいちゃんおばあちゃんが一緒に住んでいたり、それに加えてちょっと小高い丘に住んでいる名家のお嬢様だったり。ご両親もわざと避けたのではなく、家に普段ないから飲む機会がなかったとか。そんな清楚なお嬢様にこんなことをしでかすなんて……いいぞ、もっとやれ。そして心置きなく殴られて来い。それが恋愛だ。
そんなことは置いておきつつ、「今はぼくのもの」と少し誇らしさがあるようで。そのやってやったぜみたいな、小さな背伸びと達成感に満足してるところが、やってることに対して中身が子供っぽく、かわいらしくも感じます。
奈月遥
★0
どこからつっこもう!ってなるほどきゅんきゅんします。
わたしも幼馴染みの関係で読みました。「ぼく」たちは今いくつなんだろう。かわいい言葉遣いで詠まれてるのにきゅんとするえろさです。きみはぼくのもの、でなくて「舌は」だからでしょうね。具体的にキスしてる場面を想像してしまうから。
野崎アン
★0
飲んだからから結句まで「の」の音が連なって優しくひびく歌です。小5という設定は子どもから自我の目覚めが感じられる年なのでしょうが、メロンソーダとの取り合わせはちょっとしっくりとしない印象です。とはいえ「緑の舌は今ぼくのもの」に淡い恋の始まりが感じられていいです。
太田青磁
★0
下の句に一目ぼれしました。彼女は彼にわざと舌を見せたのでしょうか。それとも口を開いた瞬間にたまたま見えたのでしょうか。
かわいいイメージ、あざといイメージ、エロティックなイメージといろいろな感じ方が出来る歌ですね。
「メロンソーダ」というチープでキッチュなものが可愛らしさとある種の毒をはらんでいるもの、「緑の舌」という、普段は見えない口の中にしまわれているものが同時に並び、不思議な感覚を受けました。素敵です。
404not
★0
404の選評は404notF0816の書いた選評でした。途中で送信してしまいました、すみません。
404notF0816
★0
前の方にもありますが、きゅんきゅんさせられました。
小5でメロンソーダを飲み始めた、というのをその人の情報として知っているとは考えづらいので、小5の時にメロンソーダを初めて飲ませたのが「ぼく」なんだろうと思います。ぼくが飲んでいたメロンソーダをその子に飲ませて、舌を見せ合って、「緑になってる!」とか言い合った仲の2人。それは昔のことだけれど、その舌をぼくのものにする行為でふと思い出して、一層愛おしくなる。そんな風に想像しました。
ある程度の年齢になると、メロンソーダって飲まないだろうし、今の彼女の舌が緑なのではなく、(あの時の)「緑の舌」と(「ぼくのもの」である今の)「彼女の舌」が時間の流れを経てつながると捉えました。
メロンソーダの緑のインパクトも相まって、ポップできゅんきゅんする素敵な歌です。
稲垣三鷹
★0
「舌は今ぼくのもの」中々言えるものじゃない、強烈な言葉です。印象的。小5、メロンソーダ、緑の舌、と並べると子供の可愛らしさをはっきり感じるのですが、それが下句でなまめかしく変わっていって驚く歌です。
不可思転
★0

「わたくしのいまさらになってくれますか」空から言うの狡いよ君は

出詠名 ポリープをCD-Rにやくナイス害 × ちゃむ
13 / 22 ×4 ×14 ×15

互選名 小倉きなこ中森つん奈月遥村田一広真篠未成坂本 樹大葉れい太田青磁三次則秋不可思転薫智大介ルオ彩華小早川妖精化師ごろー河嶌レイエイ太夫亜梨宮嶋いつくガッキ双葉屋ほいるJune蟹田もも塾カレー長月優蒼井灯404notF0816中牧正太羽島かよ子

選評名 「(今となってはもう叶えられないけれど)好きだった」ということを言われたのでしょうか。もしくは、‘君’の死後に「あなたが好きだった」という置き手紙がみつかったのでしょうか。いずれにしても、「いまさらになってくれますか」という表現が非常にうまく効果的で、とても切なく胸に迫る歌だなと思いました。
真篠未成
★0
短編小説がひとつできてしまいそうな光景。その声は後悔を抱えた主体自身が生み出した幻かもしれないし、時を越えて届いた想いなのかもしれない。「わたくし」「君」という呼称にも関係性が見え隠れするようでドラマがありますね。間に合わなかった想い出に縛られながら、このひとは今を生きてゆくのでしょう。切ない歌です。
蒼井灯
★0
亡くなったもしくはもう会えない、恋人か好きだった人からのメッセージと読みました。ほんとうに今さらでずるい、もっと早く言ってくれればいいのに、どうしても言えない事情があったのでしょう。
主体は、「君」の「いまさら」になるのか、それともならないのか。苦悩が伝わってきます。なっちゃってもいいよと言いたくなります。前評の方と同じで、この題材の短編小説があるなら読んでみたいです。
亜梨
★0
空からのメッセージは確かにズルい。わたくしのいまさらって何だろうと考えさせられますが、ストレートに伝えきれなかった想いを空からの声に託す心情に惹かれるものがありました。
太田青磁
★0
もうほんとずるい。
もう会えないのにね。切ないです。胸をきゅーっと押さえつけるような切なさ。
「わたくしの」とあるあたり、「君」の奥ゆかしさを感じます。
塾カレー
★0
自分は同窓会だとかで再会した人を想像しました。もうお互いに結婚して子どもがいたりして。いまさらだけど、あの人と付き合っていたらどうなっていたのかなーとか想像する相手になってほしいってことかと。相手の公認でそんな想像ができるって、両思いと同じくらいすごいかも。
「空から」は歩道橋の上からだったり、空港の長いエスカレーターだったり、もう別れ際ってときに言うズルい女性を想像しました。高いところにいる彼女を見あげたときに「空から」と思ってしまうくらい、彼女は素敵だったのだろうと思います。
ゆら
★0

明日には違う身体になっている体温計を弄ぶ舌

出詠名 岡本浩明なつお × やん
14 / 21 ×5 ×11 ×12

互選名 小倉きなこ管理人知己凛大葉れい多香子太田青磁気球宮木水葉彩華小早川泳二河嶌レイルイド リツコガッキ双葉屋ほいるももseriゆら椋鳥スコヲプ404notF0816中牧正太橋師羽島かよ子きい龍翔

選評名 口にくわえるタイプは婦人体温計だと思います。基礎体温のグラフのように、日々変化する身体。それに対する主体の思いのようなものが少しでも示されると、ぐっと入り込みやすくなるかなと感じました。「弄ぶ」がやや気だるさを表しているのかな。
大葉れい
★0
婦人体温計があると、「明日には違う身体」がなんだか意味深です。明日には妊娠するのでしょうか。でもそんなに計画通りにいくものではないですよね。「妊娠するといいな」ではなく「明日には妊娠する」って気持ちは、なんだか怖い感じもします。あるいは、たとえば婦人系の病気の治療が始まったり、なにか薬を増やすようなことがあったり、手術があったりするのかな。そっちの方が「弄ぶ」にしっくり来る気がします。妊娠を望むなら、もっと真剣な感じになるのではないかなーと思ったので。その治療が始まらないと妊娠できない、治療の一環としてやってるけど成果がイマイチ出てない、もう明日には子宮をとってしまう、などなど。そんなことがありつつ、今までしてきたことの止めどきが分からないままここまできてしまったような。妊娠、出産、生理の存在、そういう女の体であることを突き放せない感じが「弄ぶ」にある気がします。
ゆら
★0
比喩が巧みに思いました。
紫苑
★0
違う体になっているという真意はこの歌だけではわかりません。心の繋がり方かもしれないし、手術のような非日常かもしれません。でも下句の気だるい様子がなぜか魅力的な女性を思わせてくれます。そのしぐさの裏に違う体になる大きな覚悟があるような気がしました。
気球
★0
「違う身体になっている」が、生命の誕生を想起させ強く印象に残る歌でした。「なっている」「弄ぶ」と現在形で自分の身体の変化を客観視しているのもいいです。全体の流れもよく、舌で体言止めにしているのも官能が伝わってきます。体温計は男性にはない視点なのかと感じます。
太田青磁
★0
はじめ意味がわからなかったのですが、皆さんの評の「手術」という言葉ではっとしました。「体温計を弄ぶ舌」という表現から主体は女性だろうと思いますが、それを詠むからには「違う身体」は口まわりの何か、或いは女性性を喪失するような何かなのではと。そうだとしたら非常に重いです…。一方、身体は日々刻々と新陳代謝をするわけで、一日として同じ身体ではないと、風邪などで寝込みながら思いを巡らせている様子にも読めます。良い意味で古風な、味わいある歌だと感じました。
蒼井灯
★0
女性の体は一生のうちに何回も変わっていくものですが、それを体温計を用いて表現することでより鮮烈に思い知らされるように感じました。確かに男性にはないものです。
双葉屋ほいる
★0
体温計は「舌」を出していることから口に咥えて計る婦人体温計でしょうか。「明日には違う身体になっている」「弄ぶ」というワードから、女性特有の自分の身体にまつわる不安を感じます。女性は常に自分の体と向き合って生きているから。では「違う身体」とはなにか。たとえば基礎体温を計っているので月経の開始日だったり排卵日がわかりますが「明日には」という確信が持てているところに「女の覚悟」のようなものも垣間見れ、女って強い・・・と感じました。
河嶌レイ
★0
上句下句を逆に置きたい歌だと思いました。が、女性のからだの日々の変化と、それと向き合う主人公の心理、かすかな憂鬱を伴う愛着のような心持ちが感じられて、素敵な歌だと思いました。
中牧正太
★0
良い歌とは、それと似た状況に自分が出逢うたび、ふっと思い出されるもののように思います。こちらの作品も、わたしの人生でこれから何度と蘇ることになりそう、そんな風に感じました。
作中場面は妊娠か手術かまたは風邪か、総ての読みで意味は通り、どれも間違いでないと思います。日々刻々と変化する体温、その今一時を留める。ただ、その些細な情景の中に今日と「違う身体になっている」という発見があり、さらにそこから読者の思いは流れ続ける人生の存在にまで広がっていく。
今回詠題の『今』へ考えを起こさせ、また短歌の妙味(それが無限の時間からほんの一端を切り取って人の心に触れるものになることとして)を作ることも成功された一首かと特選させていただきました。
手法を振り返ってみます。上句「明日には違う身体になっている」は平易な語を使い、その意味は誰にも容易く理解できながら強いメッセージとして心に届く。多くの歌と並んでも自然と浮かび上がる句に見えました。下句へ緊張感を持って解を求める読者に用意されたのは、拍子抜けなほど淡々と「体温計を弄ぶ」だけの場面。ただそれが利いている。意味深な上句と並ぶことで、下句の何気ない一コマに重みが与えられる。それが「明日は大きな転機が控えるはず」と受け取られたり、「小さな一瞬こそがかけがえない」と受け止められたりと。大きな言葉と小さな事象の掛け合わせから出来たギャップが三十一文字に深さと重さを、そして前後には余白を作る。作歌セオリーとしても参考になるものと思いました。
管理人
★0
「手術」と言ったやつだけど、これは具体的にどんな変化なのかを当てるのではなくて、読む人によって、またそのときどきによって「こんな感じかな」といろいろに想像できる柔軟さが魅力ですね。
ゆら
★0
「舌」という言葉から口で体温を測っていることが分かるのと、「弄ぶ」という言葉から官能性を感じたので、基礎体温を測っている女性、とりわけ「妊活」をしている女性の歌かなと思いました。「明日には違う身体になっている」ということは、「今夜子を宿す予定がある」ということだと思ったのですが、そこには第六感なのか、確信めいたものがあって、どこか呪術的、魔術的な要素やしたたかさも感じました。色気があって、狂気や恐ろしさも感じられる、好きな歌です。
龍翔
★0

今日もまたきみに会えない人になる人差し指を鍵穴にさす

出詠名 カヨッキガッキ × 杏野カヨ
15 / 21 ×2 ×17 ×16

互選名 些松凜恋小倉きなこ管理人知己凛yuka真篠未成南瑠夏大木はち大葉れい多香子三次則秋紫村かすみばん悠不可思転薫智大介彩華みちくさ小早川妖精化師河嶌レイルイド リツコももseri文月郁葉長月優椋鳥404notF0816ひらたてる稲垣三鷹きい七海奏一郎龍翔

選評名 もう鍵を持っていないという寂しさを、人差し指でうまく表現されていて、情景がとても思い描けました。
知己凛
★0
「人差し指」の表現がいいと思います。初句の「も」「また」は重複にも思えるので、他の表現があるかもしれません。
紫苑
★0
切ない歌だなと思いました。「今日もまたきみに会えない人になる」とあるように、主体は「きみ」に会えないとわかっている。しかし、「人差し指を鍵穴にさす」とあるように、ドアを開けようとしている。会えないとわかっているのに、ドアは開かないのに、それでも「人差し指を鍵穴にさす」という様子から、主体は「きみ」にまだ未練があるのかな、と思いました。
さらに、「今日もまた」というところから、このやり切れなさの残る行動を何度も繰り返しているのだろうと読み取りました。切なさのにじむ歌だなと思いました。

★0
「人になる」と「人差し指」の人がうまく重なっていて面白いです。「鍵穴にさす」はそんなことをしても鍵が開かないのをわかっていても、思わずという切ない雰囲気が伝わってきます。
太田青磁
★0
一歩間違えてストーカーの歌かと思っちゃいました。人差し指だろうと開けようとするなっ! とツッコミ入れたのが最初の感想です。ストーカーとまでいかなくても、うちだったら合鍵を渡すくらいの間柄じゃなきゃアポなしで家に来られたら嫌だなぁ。
というわけで、実際に「きみ」が暮らしてる部屋の鍵に人差し指さしこんだのではないのだろうなーと。別れて引っ越してしまったあと、死別したあとの部屋に、未練たらしくやってきたとか。死別だと「今日もまた」の重みとシックリ感が増すように思います。人差し指はドアをあけるためだけでなく、「きみ」といたあのときに戻る特別な願いをたくされた鍵なのでしょう。だとしたら、「きみ」の部屋のドアでなくてもいいのかな。仕事場にあるドアをや通りすがりに見つけたドアを、「きみ」につながるどこでもドアに変えたいのかもしれません(どこでもドアって過去にも未来にもいけるんですよ)鍵穴を見つけたらやってしまう、というのも切なくていいなと思います。
もうひとつ思ったのが、自分の暮らす家の鍵かもしれないってことです。出勤するときに鍵をかけようとしながら、「今日もまた仕事が忙しくて会えない。もうずっと会えてない。休みが欲しい……もう3時間寝て、それからデートに行きたい」なんて思っている主人公を想像しました。鍵をかけるというのは、もう会社に行くしかないってことの象徴のように思うんです。会社に行きたくない。でも行かないといけない。そんな葛藤が、人差し指をさすというちょっとした奇行に結びついたのかなーと思いました。
「きみに会えない人になる」っていいですね。自分をまるごとそう定義するくらい、「きみ」が中心なんだなぁ。
「きみ」とどうして会えないのか、どういう理由で「今日もまた」会えないと分かるのか、どこの鍵穴にそんなことしてるのか……読むひとの解釈による穴埋めでストーリーがいろいろできそうですが、そのどれもが切ない物語になるでしょう。そこがいいなと思います。たくさんの解釈があっても、重要な部分はキチンと伝わっています。
ゆら
★0
初見では「人差し指を鍵穴」はスマホのことかと思いました。
ググってみたら「リーチがかかるとパチンコ台の鍵穴を人差し指で押えると大当りしやすい」という都市伝説を目にしました。
まったくの見当違いだったらごめんなさい。
遊糸
★0
スマホって読み方いいですねー!
ゆら
★0
この指が鍵となって、相手の心の扉も実際のドアも開けばいいのに、と切なくなっているひとを思い描きました。
スマホという捉え方にはびっくりです。なるほど……!
不可思転
★0

閃光の尾は鮮やかに消えてゆきタイムラインは今で溢れる

出詠名 ブルーもしくはブルー太田青磁 × 蒼井灯
16 / 18 ×4 ×10 ×11

互選名 村田一広坂本 樹多香子三次則秋不可思転薫智大介気球宮木水葉ルオ彩華みちくさ小早川妖精化師エイ太夫亜梨もも文月郁葉塾カレースコヲプ千原こはぎはだし悠佳里きい

選評名 「閃光」はふぁぼの隠喩でしょうか。「今で溢れる」に次々とツイートが流れていく様が思い起こされて言い得て妙だなと感じました。twitterというコミュニケーションツールの発達した今だからこそ詠める歌、今しか詠めない歌だなと、とても惹かれた歌です。
ルオ
★0
閃光というには大げさかもしれないけど流れ星と読みました…隕石の落下にすれば閃光かな。その瞬間、タイムラインは「今の光見た!?」で溢れる。鮮やかに→消えるで速度を感じ、閃光は消えてタイムラインには溢れる対比が面白いです。
彩華
★0
これはうまいなあ。ツイッターで星を送る、その行為はする方もされる方も嬉しく喜びを伴って輝くけど、本当にすぐ消えてしまう。そしてタイムラインでは今も誰かが話をしている。散らない花が愛でられないように、消えてしまう光だから嬉しいのかもしれませんね。
小早川
★0
twitterの次々にタイムラインが更新されていく様子を、疾走感を持たせて歌ったところがうまいと思いました。「今」という題を生かし切れている魅力的な歌です。
坂本 樹
★0
「お気に入り」を閃光で表したのは、言い得て妙ながら、少し寂しい感じもしますが、ツイッターの特徴をよく現された歌だと思います。
紫苑
★0
流れ星がさーっと尾を引いて流れてゆく。
「今流れ星見た!」でタイムラインが埋まる。
「今」という言葉を捉え切っています。
輝きのある歌ですね。
塾カレー
★0
うちも流星群とかかなと思いました、きっとでかいやつ。たぶんひとりなんだろうな。でも全く知らんひとと同じものを見てる「今」感がいいですね。それが溢れてるって表現すきです。ずっとあるものじゃなくて一瞬だから、そこに出くわしたひととは繋がってる感じします。
はだし
★0
ツイッターでの呟きの最後に「なう」ってつけることがあるよな、とふと。「今で溢れる」というのは、タイムライン上の知人みんなが、なう、と呟いている情景なのかななんて想像をしました。
「閃光の尾」でぱっと思いつくのはやはりお気に入りの星マークでした。押しても押しても新しい情報に流されていく星マークを、離れた場所でみんなで見ている流れ星にかけたのでしょうか。流れ星も星マークも今も全部、すぐに消えてどんどん新しいものになるという、今が更新され続けることがよく分かる歌だなと思いました。
不可思転
★0

ほろろ酔い・吹き抜ける風・花の闇・桜あんみつ 春が咲く、今

出詠名 ロゼッタストーンゆら × 奈月遥
17 / 17 ×2 ×13 ×10

互選名 小倉きなこ村田一広太田青磁三次則秋ナイス害迂回みちくさ小早川黒猫。ごろー亜梨June蟹田seri文月郁葉長月優蒼井灯月丘ナイル404notF0816橋師杏野カヨ悠佳里月花

選評名 「ほろろ酔い」という主体の実感から、少しずつ周囲にカメラアングルが切り替わっていき、最後に「桜あんみつ」と、味覚に訴えるオチがつく並びがかわいらしいですね。頭の無色からだんだん世界がピンク色に染まっていくようです。今というよりは春の歌という感じですが、好きです。
蒼井灯
★0
こういう作り方をあえてやってみたんですね♪ でも並べた言葉が詩的でいいですね。「桜あんみつ」が可愛いなあ♪
村田一広
★0
ほろろ酔い、で始まるのいいですね。物切れで出てくる言葉で酔ってる感じ出てます。しこたま飲んで夜桜見上げてあんみつ食べてる酒豪の甘党二人が浮かびました。別れの歌なのかな。誰かを思い出しているのかな。
小早川
★0
今の季節を切り取ったうたですね。視覚だけでなく、体感覚や味覚などに訴える感覚がいいです。「桜あんみつ」もハ行で揃えられると、言葉あそびとしても面白かったかなと感じます。
太田青磁
★0
きれいな言葉をたくさん並べるとインパクトが薄くなってしまうことが多いと思うのですが、この歌では移り変わる景色の美しさをイメージさせつつ、結句で「今ここ」の瞬間を切り取っていて、非常にうまくまとめられたなあと感心しました。とてもかわいらしい好感の持てる歌でした。
404notF0816
★0
ぶわーっと情景が浮かんで、今すぐ夜桜を見に行かなくては!と思いました。
共感の呼び方が美しく、言葉選びが粋ですねー!
月丘ナイル
★0

今すぐに飛んで行くよと言いし君。四十二分五秒遅れだ。

出詠名 二月二十一日。小倉きなこ × 些松凜恋
18 / 15 ×2 ×11 ×10

互選名 些松凜恋奈月遥yukaレオなつお小早川ごろールイド リツコ亜梨宮嶋いつくもも長月優桔梗月丘ナイル遊糸橋師焼きみかん羽島かよ子きい月花

選評名 「今すぐに飛んで行くよ」気のいい返事です。お歌に漂う雰囲気やニュアンスからすると、この「君」は普段からけっこうな頻度で言っているのかもしれません。
「逢いたいの」「今すぐに飛んで行くよ」なんて、調子のいい。いつもなら、それですぐに家を出て、電車に乗って、走ってきてくれることが、すごく嬉しい。普段から、こんな嫌味たらしくこれだけ遅れているぞなんて、突き付けているのではないと思います。「飛んで行く『よ』」だなんて、なんとも気安い関係ではないですか。そんなにいちいち突き付けられていたら、「今すぐに」なんて簡単には言えなくなります。
でも、どんなに懸命な姿を見ても、はがゆく感じてしまう時も、あります。大きな失敗をした時。大切な人を失った時。目指していた夢が断たれた時。目の前が真っ暗になって、絶望にさらされて、自分ではどうしようも出来ない時。
そんな時は、自分への無力感ばかりがあって、自分ではもうなにも変えられないと感じてしまって。「君」はそんな感情を感じ取って、一刻も早く慰めようと、励まそうと、いつもよりよほど本気で「今すぐに」と言ったはずです。辿り着くまでの時間も、きっと普段よりずっと短かったでしょう。
でも、「今すぐじゃなかった」と。そんな言葉だけを弄んで。明らかに無理なこと、言葉の綾を字面通りに扱って、「嘘つき」だと突き付けて。そうやって当たり散らすことで、なんとか自分を保とうとする弱い自分。でもそんな弱い自分を正当化しないと、どうしようもなくて。そもそも、どうしようもなくてと考える暇もないくらいに、必死に自己防衛に走ってしまって。
けれど、そうやって理不尽な怒りをぶつけられるのは、甘えられるから。それは信頼の裏返し。自分でも抑えきれなくて、抱え込んだら潰れてしまいそうな感情を、受け止めてくれると、どこかで信じているから。耐えきれないものが起きた時、人は本当に心から信じている人に連絡をするのでしょう。
四十二分五秒、という時間は、なかなか読み深めるのが難しいです。電車、車、どちらで考えてもそこそこの距離があるようです。五秒とまで細かく突き付けるのは、相手の言い訳を許さないように、きっちりと出したのでしょうか。でも逆に、それだけの時間がかかる距離をためらいなくすぐにやってくる人に誠意を感じます。この時間だと、なんの準備もしないですぐさまやってきたのではないでしょうか。
上の句を「君。」と区切り、下の句も「遅れだ。」と言い切っているところに、相手へ直に突き付けている様子が思い浮かびます。しかし、「今すぐに飛んで行くよ」とそれ以降で口調の堅さが違うのは、その部分が挿入分として読むとしても気になるところ。現実とお歌との間に、綺麗に整えようという隔離が感じられます。
奈月遥
★0
リズムが良くて覚えてしまいました。互いの家の距離を詠んだのだととらえました。今すぐって言ったのに!長い!いや計ってたのかよ!比喩に決まってんだろドラえもんじゃねえんだから!みたいなやり取りを思い浮かべてほっこりしてしまいました。一読して迷いなく花をつけた歌です。
小早川
★0
「今すぐ」と言われてすぐにストップウォッチをカチリと押して計測したのでしょうか。二人の距離が具体的な数字で表現されたことで移動している情景まで見えてくるようです。
この歌は口語体で句点も付けずに詠んだ方がスピード感が出ると思います。敢えて句点を用いることで、心の距離を表現したのでしょうか。

★0
今すぐって言ってたのに!遅い!という歌でしょうか。手厳しいな笑
実際にはどうしても物理的な距離がありますから、今すぐに飛んでいくのは人間には難しい。でも、「君」は「君」なりに急いで来てくれたと思えば、遅いといいながらも本当は嬉しくて許してしまうという歌かもしれません。
逆に、本当は5分でこれるところなのに42分5秒も、という意味であれば、心の距離が見えるようですね。無理なら明日とかにすればいいのに、「今すぐに飛んでいくよ」と甘いことを言っているのに来ないと言うところがまたリアルで悲しいです。
亜梨
★0
今は四十二分五秒前にあるのでしょうか。読点が事実を黙々と告げられているようです。細かい数字が音をたくさん使っているのですが、長い時間なのか短い時間なののかがつかめず、うまく読めませんでした。
太田青磁
★0

手を繋ぐたび心拍の合間から(今だ、)と僕に告げる濃い影

出詠名 一蓮×托生小宮子々 × 不可思転
19 / 13 ×1 ×11 ×17

互選名 些松凜恋小倉きなこ奈月遥村田一広真篠未成大葉れい多香子気球レオ小早川黒猫。野崎アン泳二湊あかり亜梨ももseriヒヨワくん長月優椋鳥スコヲプ404notF0816焼きみかん千原こはぎ羽島かよ子わんこ山田きい

選評名 お題への直球さはこの歌が一番だと思いました。手は繋ぐことのできる関係で、でもさらに一歩踏み込みたい。心拍の合間に(今だ、)(いや、でも)と心の声が聞こえる感じ、よくわかります。
「濃い影」のとらえ方は迷いました。真夏の昼間かもしれないし、煮え切らない自分を表しているのかもしれない。
大葉れい
★0
もう一人の自分の声ですね。今だと押す強気の自分と、何度手をつないでも何もできない自分。「心拍の間から」が効いてる。
小早川
★0
「今」という題であることを考えたときにこの歌が一番題に誠実だなあと思いました。シンプルゆえに難しい題でしたがここまでまっすぐ向き合った詠草はなかったので評価される点だと思います。
なおかつ歌自体もとてもいいですね。(今だ、)の「( )」も「、」もきちんと意味を成していると思います。「心拍の合間」という表現もおもしろいですし、濃い影がそこから見え隠れしているのも想像しやすくて良いです。強いて言えばこの影はどういう意味での影なのか取りにくい部分はありますが、決して悪い含みでもないような気がします(し、そこは重要でない気がします)。
黒猫。
★0
手を繋ぐことでどきどきしている様子が伝わってきますね。
「(今だ、)」とは何を言おう、しようとしているのか、いろいろ想像しました。何度も手を繋いでいる関係性ですから、たぶん告白ではない、キスか?それとも別れの言葉か?などと。「濃い影」も、心の中にあるどこか暗い感情を表しているように思えてしまって…素直に青春だな~という以外の読み方もさせてくれるお歌だと思います。
亜梨
★0
自分の中の影が「今だ」と伝えてくれるのでしょうね。( )と句点の使い方がユニークです。濃いは恋を想起させていいですね。心拍の合間は緊張したイメージがあるのですが、手を繋ぐと心拍の合間はちょっと飛躍がある印象です。
太田青磁
★0
とても緊張感の伝わるお歌でした。「(今だ、)」の表現も意味のあるもので、しっかりと情景や空気感、覚悟のようなものが伝わってきました。「心拍の合間」の表現も素敵です。ひとつだけ「濃い影」が惜しいなと思いました。もう少し他の表現を突き詰められたらもっともっと良い歌になったと思います。
千原こはぎ
★0
カッコの使い方が巧みに思いました。
紫苑
★0

鈍色に染まる湾岸線を抜け君を連れ出す春風になる

出詠名 さくらもち湊あかり × 白黒つけたいカフェオーレ
20 / 11 ×1 ×9 ×13

互選名 小倉きなこ多香子太田青磁紫村かすみやんや深淵なる月みちくさ小早川黒猫。妖精化師泳二河嶌レイガッキもも文月郁葉椋鳥月丘ナイル中牧正太橋師千原こはぎ稲垣三鷹七海奏一郎龍翔

選評名 雰囲気はとても伝わってくるのですが、歌題を想起させるには少し弱く感じました。
太田青磁
★0
わたしも「今」っていうイメージには至りにくいかなと思いました。歌としては素敵。でも下の句に既視感を感じます。
野崎アン
★0
「今」という題を考えるとちょっとギリギリかなあとも思いましたが、でもさわやかさというか疾走感のようなものをすごく感じることができたので、そういう角度から「今」を表現しようと挑戦したのだなあと思います。歌としては特にひねりがあるわけでもなく非常にシンプルですが、鈍色から春風へと想起される色が澄んでいく感じはとてもきれいで時間の経過も感じられて良いと思います。
黒猫。
★0
私はこのお歌は、「今の季節」を歌うことで、「今」を表現しようとしたのだと思いました。
今日は、まさにこんな空気の日。
春風に連れ出されるような日。
シーズンスイーツを選ぶような楽しさがあります。
上手いなー、と思いました!
月丘ナイル
★0
「今」は確かにわかりますが、これがありならどんな歌でも「今」になってしまうなあ、と思いました。題詠でなければとてもいい歌だと思います。
泳二
★0

リカカトビラッパンツミキノうさぎ星いましかできないことのはじまり

出詠名 エレメント野崎アン × 長月優
21 / 11 ×1 ×9 ×8

互選名 些松凜恋小倉きなこ大葉れいナイス害なつお宮木水葉迂回妖精化師ごろーゆら椋鳥スコヲプ月丘ナイルはだしきい月花七海奏一郎

選評名 これであっているのですか?何かの暗号でしょうか?わかりません。すみません。
三次則秋
★0
しりとりですね。りか、かかと、とびら。ラッパンツからの語呂のよさが楽しくてつい口に出したくなります。ただ、下句とのつながりがあまりしっくりこなくて、せっかくのアイディアを生かしきれていないかなという気がしました。
大葉れい
★0
りか かかと とびら らっぱ ぱんつ つみき きのう うさぎ でしょうか。「パンツミキノ」は「みきちゃんのパンツ」かと思ってドキッとしました。
なんか、ふたつの情景が浮かんで、どっちを自分の中で採用するか迷います。
まずひとつめは、女子高生のノリ。
呪文みたいな上の句は一読では読みにくいけど、すこし慣れるとコロコロ弾むみたいなリズムで、すこし慣れると面白いというのが若い人の内輪ノリのよう。ラッパンツから音が良くて、加速していくような感じも若いなって思います。
一読したときはシリトリと気づかず「パンツ みきの うさぎ星」だと思って読んでました。すこしバカっぽくて、たわいのない会話、話題がコロコロ変わっていく感じが女子高生っぽい。そんなしょうもない会話をしてるとき、最高に楽しくて、充実してる気がします。全能感というよりは無敵感。気分が高揚するのが楽しい。どんどん楽しくなっていく、それが「いましかできないことのはじまり」なんでしょう。若くて、気分が高揚してて、なんだってできるような気持ちだから、「いましかできない」は「なんでもできる」に近い。全部ひらがなであるところに、茶目っ気というか、悪戯っぽい印象を受けました。それも無敵感によるものかな。しりとりキッカケでこんな風に盛り上がっちゃうのも女子高生っぽい。
ふたつめは、もっとしっとりした大人の雰囲気。
夜道を歩いてて、なんとなくしりとりをすることになって、不意に空を見ると星が出てる。その瞬間、「あ、なんか上手くできてる」って思う。夜道を歩きながら一緒にしりとりするって、わりとそこそこ仲良いと思うんです。そんなひとと歩いてるときに星が出てたら舞台が整えられてるというか、ちょっと背中を押されたような気分になりそう。女子高生のような無敵感はなくても、すごいことをしてるわけでなくても、たしかに、いまやってることはいましかできない。主人公にとって、そう実感できる瞬間だったんだなって感じます。素朴に心からの実感がひらがなになってるのかなーと。
頭はカタカナまみれでラストはひらがな尽くしなのが面白いと思いました。星の漢字で切り替えてるのもいいです。星の前が全部しりとりだとすると、「うさぎ」が他と違ってひらがななのは何故なのか……そこは読み取れませんでした。
ゆら
★0
しりとりで次々いろんなものが現れて、星!と辿り着くかんじが何かのスタートを思わせて、個人的には下句への接続はアリだと思いました。
星がしりとりになってないのはなんだろう。そこまでで「~星」という星ってことかな。しりとりに現れるものにどの程度の拘りがあるのかは読み取れませんでしたが、一句目付近のリズムはもう少し良くすると気持ちいい歌になったのではないでしょうか。
迂回
★0
うさぎ星の呪文でしょうか?まったく意味はわかりませんが、なにがはじまるのかわくわくとした雰囲気が伝わってきます。(評を読みしりとりだと気が付きました)
太田青磁
★0
声に出して読んでみました。噛みました(笑)目を引く楽しい歌だと思います。
遊糸
★0
しりとりやったのかー。うさぎ星って調べたら、そういううさぎ専門店があるんすね。なのでうえの評にもあるように、ノリってか掛け声的ななんかと読みました。で、「うさぎ星」はオチ的な(ここでみんなで笑う、みたいな)下校途中に歩きながらみんなで言ってそう、わけわからんけど楽しさが伝わってきます。そのわーっ、て雰囲気がうまく下の句に溶け込んで、弾むような一首になってるなあと思いました。
はだし
★0
しりとりだと気付けなくて……。なんだろうとても気になるぞ、とずっと考えていました。記憶に残る歌です。
しりとりを繋げて詠みこんでしまうのが面白いと思います。楽しそうで、言葉の選び方からしても明るく弾けているのが伝わってきました。
不可思転
★0

どうしても叶えられない恋でした昔も今も私がかわいい

出詠名 猫星真篠未成 × 北大路京介
22 / 11 ×0 ×11 ×11

互選名 奈月遥大木はち坂本 樹大葉れいばん悠不可思転気球なつおルオ妖精化師ごろーエイ太夫オリーガッキももseriヒヨワくん桔梗中牧正太ひらたてる稲垣三鷹

選評名 自分はかわいいのに恋は叶わないんですね。その開き直りというか、男って見る目ないわねぇ的な発想は素敵です。たくましく生きてください。
大木はち
★0
いや、じぶんかわいさのあまり譲歩しきれずに、いつも恋がかなえられずに終わるさびしさ、を感じました。
なつお
★0
何かしらワケがあって「かわいい」からこそ恋が叶えられないのだろうかと想像してしまいます。かわいいは褒め言葉だとは限らなかったり、外見でも内面でもかわいいからうまくいくわけではなかったり。
でも、どんなことがあっても、「私」はきちんと「私」自身の味方でいよう、反省しても悲しくても「私」を応援できるようにいよう、「かわいい」は悪くない、という希望も感じました。
不可思転
★0
恋が終わるたび、そう思いますね。私が私を好きでいられればそれでいいやって。それでもまた恋をしてしまうのは、私を好きでいるということがとても難しいことだから。主体はいま「昔も今も私がかわいい」と意地を張っているのだと思いますが、その気持ちがまた揺らぐときが、その気持ちを揺るがす恋が、すぐにやってきそうな予感がします。
レオ
★0
学生のとき、「私は私が大好きで私自身と付き合いたい!」と友達がいっていて、みんな笑いつつ結構受け入れてたことを思い出しました。心の葛藤がありながらたくましく成長していく女の子を思いました。
気球
★0
「叶えられない」恋ですから、自分ではどうにもできない恋なのでしょうか。相手に好きな人や配偶者がいる等、難しい恋なのかもしれません。
結句の「私がかわいい」は、自分が傷つきたくなくて、あと一歩踏み出せないような様子ととりました。字余りであり、少し音がつまづく印象があるので、もう少し推敲の余地があると思います。
湊あかり
★0
自分かわいさのあまり、相手のすべてを受け入れられなかったということでしょうか。恋が叶わなくても自分は変わらないという矜持なのかもしれませんね。
太田青磁
★0
もしかすると主体の恋の相手は自分自身でしょうか。だとしたら面白い発想だし、幸せな人だなって思います。
遊糸
★0
無私の奉仕というか、過剰な献身が必要になる恋だったのかなと思いました(相手本人が求めてくるだけではなく、相手の環境が)。
自分を捨てて相手のものになるか、自分自身で在り続けるか悩んで、結局自分らしさを取った。今も自分が可愛いので、それを悔いているのではなく、開き直って明るく認めている前向きさがあります。
ごろー
★0

帰りたくないのと渋谷で駄々こねる君をこのまま真空パック

出詠名 秋に華三次則秋 × 彩華
23 / 10 ×1 ×8 ×14

互選名 些松凜恋小倉きなこ管理人知己凛村田一広真篠未成大葉れいナイス害深淵なる月ごろーエイ太夫湊あかりルイド リツコオリー亜梨カオリナマンダイもも長月優月丘ナイル千原こはぎはだしきい

選評名 真空パックというと、食べ物を腐らせない(空気に触れさせない)ようにパックすることですね。「今」を閉じ込めるという風に捉えることもでき、歌題を表現する際の着眼点が良いです。
場面の状況としては、
自分は「君を帰さない」って気分ではない。だけど「君」は駄々をこねる。一度こうなると聞かない。真空パックにして大人しくさせて家に帰してやる。
というものか、または、
その姿がかわいいから駄々をこねてる状態のまま閉じ込めてやる。いつでも見られるように。
のどちらかだと思いました。
複数の読み方ができる短歌は面白いと思います。

★0
始めかわいくてしかたない君への気持ちと思いました。でも、よく考えると怖いですね。とても可愛くて少し迷惑、大切にしたいけどパックにしてしまうのは人間的ではない。でも合理的。歪んだ愛情がかるく読まれていて、問題提起のような歌だと感じました。
気球
★0
きっとかわいい彼女なんだろうなあ(「君」が女性と読みました)。真空パックにして持って帰りたいという主体(男性?)もかわいい。真空パックにしたいのは「君」自体だけではなくて、別れを惜しんでいちゃいちゃしているこの時間かもしれない。いずれにせよ、バカップルの歌かもしれませんが、とてもかわいらしいです。お題の「今」を真空パックで表現されているのも好きです。
亜梨
★0
今という題を使わずに真空パックに閉じ込める視点はきらりと光ります。一方で、全体的に言葉足らずに感じられるのと、渋谷はいかにも過ぎる感じです。
太田青磁
★0
私は最近北海道から東京に初めて行きまして、渋谷を見ましたが帰りたくないというより帰りたかったです。そんなことより帰りたくないということは家出少女か、デートしているのか、それとも親とケンカしたのか色々理由がありますよね。私はデートしている男女だと思いました。
渋谷は人通りが多いので、駄々こねていたら嫌でも目につきます。それをなるべく目につかないように、君が駄々こねるのを見ていたい。だから真空パックして閉じ込めるというのがとてもいいなと思いました。
でも真空パックに君を閉じ込めると息はできません。男の人は独占欲が強そうですね。真空パックに閉じ込めるよりも、女の子は野放しにしたほうが生き生きしててかわいいですよ。
カオリナマンダイ
★0
歌をぱっと視界に入れて一回読んだとき、全体的に可愛らしい歌だと思ったのです……が。切なくて少しだけ暗さも孕んだ歌なのかもしれない、なんて思いも出てきました。
「真空パック」→息の出来ない状況→口付けをしたり息が出来ないほど抱きしめている、とか。今を永遠にするためなら、そのままいのちを消してしまってもいいと思い詰めている恋人同士が、わざと明るく可愛らしく言い合いしているのかな。渋谷には駆け落ちしに来ているのかも。雑踏の中でいくら駄々をこねても、行きかう人の足は止まらない。
「渋谷」と「真空パック」にしか居場所がないふたりなのかもしれません。だとすると寂しくて苦しい歌だと思いました。
不可思転
★0

散らかした昨日のレシピ片付けて工藤に電話をかけてみようか

出詠名 北海道マカロンタワー刺さり隊紫村かすみ × カオリナマンダイ
24 / 9 ×0 ×9 ×6

互選名 小倉きなこ大木はち大葉れい多香子三次則秋ナイス害ちゃむやんやオリー亜梨Juneゆら塾カレー404notF0816そぼ降る雨

選評名 工藤って誰やねん(笑)松田優作が演じてた某探偵を思い出してしまいました。全然そんなこと触れられてもないですか。
大木はち
★0
物語の広がりを感じます。何を作っていたのかな。工藤に食べさせようとしてたのかな。お題を読み込まずに「今日は」電話をかけてみようか、と読み取れるのがよかったです。
「レシピ片付けて」は助詞を抜いて定型におさめていますが、「工藤に電話を」は字余りなので、ちょっと落ち着かない感じがしました。
大葉れい
★0
自分は体は子ども、頭脳は大人の方の工藤が出てきました。
「昨日のレシピ」は「昨日使った料理のレシピ」というよりは、「昨日そのもののレシピ」という印象を受けました。昨日は、レシピ通りに上手く生きようとするだけに終わってしまった。今日は工藤に電話をすることで、なにかを変えようとしている。そんな感じでしょうか。
「工藤に電話を」の字余りは自分も気になりました。「工藤」というありふれ過ぎでもない、珍しくもない、どことなく力強い響きのある名字はいいセレクトだと思うのですが。
ゆら
★0
工藤……具体的に誰とかあるのかが微妙な名前です。わたしもしんいちくんが浮かびました(笑)
工藤って誰だろうっていうのとともに、昨日のレシピってなんだろうというところもいろんな考え方ができて面白いと思います。
わたしは字余り気にならなかったし、逆にリアルというか、ふと思い立った感じがしてこれはこれでいいのかなって気がします。
野崎アン
★0
私も彼を想像したのですが、彼を工藤と呼ぶのは服部じゃね?と思ったら服部視点の歌しか思えなくなってしまいました…笑 散らかした昨日のレシピとは、事件解決までのレシピ=服部の推理の一部であるが、どうにもまとまらないのでそろそろ工藤の意見でも聞いてみよか と。
というのは冗談ですが、いまいちまとめきれない昨日のできごともとりあえず忘れよう、今日は今日だ、という前向きな姿勢を感じます。
亜梨
★0
「か」の音が連なっていて歌を引き締めている印象です。工藤という名字の選び方も無名性があり上手いなと感じました。今というテーマに対してはレシピや電話の必然性は浮かび上がらず、一首だけだと弱いかもしれません。
太田青磁
★0
もう服部にしか見えなくなった。
ただ服部は関西弁だから違うだろう、と(笑)。
散らかったレシピを片付けて、というのは状況をしっかり整理して、ということの喩えだろうか。ちょっと自分の考えに迷いがあるから、信頼できる(?)工藤に愚痴でも聞いてもらおう、という算段かもしれません。
塾カレー
★0
「服部か。でも関西弁じゃないし」と思いつつ評に書かず胸に秘めていたことを告白します。
ゆら
★0

立ち止まれば夢のあぶくに沈むから今踏みしめて駆け抜けろ君

出詠名 発芽D-7775豆太 × 双葉屋ほいる
25 / 7 ×0 ×7 ×10

互選名 些松凜恋小倉きなこ大葉れいちゃむ薫智大介気球深淵なる月ごろー湊あかりルイド リツコseri塾カレー椋鳥橋師月花小宮子々龍翔

選評名 「立ち止まれば」でいきなりリズムが崩れるのは、「止まる」感じを出す敢えての表現でしょうか。沈まぬよう駆けるということは水面なのだろうに「踏みしめて」というのも緊張感があります。厳しくも暖かい応援ですよね。主体は「君」と同年代なのかな。「今」をストレートに捉えた、爽やかで気持ちの良い歌だなと思いました。
蒼井灯
★0
初句の字余りが生きている、勢いのある歌だと思いました。結句の体言止めもよいと思います。
紫苑
★0
初句の「立ち止まれば」の字余りと、結句の命令形が強く響きます。韻律の激しさに比べると、前へ進めとしか言ってないようにも感じられ、「夢のあぶくに沈む」はもう一ひねりできそうです。
太田青磁
★0
あぶくは浮いて弾けるものだと思ったので、そこに沈むというのはどういうことかなあと、イメージが湧かなくて少し悩みました。立ち止まることの不安定さは表現できていると思います。
思わず立ち止まって悩むことの怖さ。悩みにとらわれるよりも今を生きるべきと応援し、前を向けというメッセージ。それらを通して、若者の持つ短くも熱い時期への賞賛が伝わってきます。
ごろー
★0
初句の字余り、個人的には全く気になりませんでした。
力強いメッセージに溢れた気持ちの良い歌だと思います。
塾カレー
★0
「そうか。立ち止まれば沈んでしまうのか。」と勢いに押されてついに納得させられてしまった歌でした。何を踏みしめるのか、という点がやや気になったのですが、それも夢自体なのかもしれませんね。大きな夢を叶えるためには、小さな夢を積み重ねていかねばなりませんから。片栗粉を水に溶かすと、どろどろしたものになるけれど、力を入れると一瞬固まりますよね。「ダイタランシー現象」っていうんですよね、あれ。そんな感じの歌だと思いました。夢って片栗粉なんですね。えっ?
龍翔
★0

君といるこのときにひく切り取り線 あの星だってピアスにできる

出詠名 レグルスレオ × 南瑠夏
26 / 6 ×1 ×4 ×11

互選名 奈月遥村田一広三次則秋薫智大介みちくさ小早川黒猫。妖精化師亜梨Juneゆら椋鳥中牧正太橋師悠佳里

選評名 切り取り線というのは、「今を切り取る」という意味と読みました。「君」と自分がいる今この瞬間、この空間だけが切り取られて周りと違う空間になる。きっとそこは星にも手が届くくらい素敵なところなのでしょう。
亜梨
★0
「君といるこのとき」で今を表現したことはうまくいっていると感じます。切り取り線、星、ピアスはイメージとしては伝わるのですが、やや焦点が定まらず、明確に映像としては思い浮かびませんでした。
太田青磁
★0
切り取り線とは流星の尾なのかなとおもいました。上の句がとても好みですが、それだけに下の句がぼんやりしてしまっているように思います。不可能みたいなことをできちゃうくらいの気持ち、として読みましたが…
長月優
★0
切り取れるメモ帳みたいにピリピリ切り取って、日記帳や壁に貼っておきたい瞬間だったのでしょうか。
今を切り取ることで時空が歪んで、星を見えている大きさのまま摘んでしまえるような不思議な空間になったかのような感じが好きです。現実的なこと言うこと、星を掴む真似をして、「捕まえた!」って仕込んでおいたピアスをプレゼントするやつかな。それよりは無根拠に「できる」って言ってる方が好みです。
ゆら
★0

あの春も一緒に悩み今もまた道は違えどおんなじ二人

出詠名 ルオリールオ × オリー
27 / 6 ×0 ×6 ×9

互選名 些松凜恋小倉きなこ奈月遥村田一広坂本 樹小早川妖精化師泳二ガッキ塾カレー長月優椋鳥橋師はだし小向大也

選評名 学生時代からの友人。社会に出て別々の道を歩んでいながら、自分と同じように悩んでいることを知ったのでしょうか。年を経て悩みの種は違っても苦を共有できる友人の存在は嬉しくもあるのかも知れません。
「あの春も」「今もまた」は表現としてはややくどい印象を受けました。また「道は違えど」の改まった調子と「おんなじ」の軽い口調は少し違和感があります。
泳二
★0
進路をともに悩みながらも、別々の道を進んだとしても友情は変わらないというメッセージが伝わってきました。 表現を整理してもう少し踏み込むと、「道は違えど」が響くような気がします。
太田青磁
★0
昔も今も仲の良い友人なのでしょう。
同期かなあ、ライバルでもあり親友でもあるみたいな、そんな関係だと想像しました。青春ですねえ。
塾カレー
★0

黒鍵を選んではじく日々は終えミルフルールのつぼみがひらく

出詠名 Twink中森つん × 文月郁葉
28 / 6 ×0 ×6 ×8

互選名 小倉きなこ奈月遥村田一広紫村かすみ宮木水葉河嶌レイ蟹田ゆら蒼井灯404notF0816千原こはぎ羽島かよ子七海奏一郎小宮子々

選評名 フランス語が分かるかどうかで評価の分かれる歌だと思いますが、上句から下句への転換が巧みだと思いました。「日々は終え」の「は」は違和感が残りました。
紫苑
★0
猫踏んじゃったを遊んで弾いていたような日々から一転、ある機を境に「千の花」それぞれの才能が花ひらいてゆく…というような情景でよいのでしょうか。違ったらごめんなさい…!綺麗なお歌なので、歌意を聞いてみたいです。
蒼井灯
★0
これも、なかなか読み悩んだお歌の一つです。
「ミルフルール」とはなんなのか、それがわからなくて調べたくらいです。それでもなお、読み選ぶのに悩み、今でもどれが一番この歌にふさわしいものなのか思いあぐねています。
まず、はじめに思ったのは「ミルフルール」という建物、ショッピングモールがどこかにあるのかなと。黒鍵というのは、モザイク模様になっている床で、わたしもよくひとつの色だけ選んでぴょんぴょんと跳ねたものです。そんな子どもの世界観にあった自分ルールもなくなり、色とりどりのタイルを歩く。そこから色彩豊かな千の花が咲くように、これから大人として歩んでいく人生の華やかさを表していて、さらにその幸せに向かう人生の道を、まさに今歩み始めた時なんだろうか、と。
それから、「ミルフルール」が洋服であったら。半音高い黒鍵ばかりをはじいて、遊び半分でピアノを弾いていたのも、もう幼い昔のこと。もう、そんなただ楽しいだけでピアノを弾いていられる日々は終わり。可憐なミルフルールの衣装を着飾って、コンサートステージへ。自分だけの手慰みになるピアノ演奏ではなく、このコンサートホールに来てくださった全ての人を感動させるピアノコンサートを。笑顔という花を幾千も咲かせるような。そんな舞台をここから重ねていく。幼いつぼみは開き、可憐な花が咲き、艶やかな音を香らせる。そんな気高い決意を思わせます。
あるいは、「ミルフルール」がまさしく、たくさんの花だとしたら。そんなにも花が咲く場面とは、どんな状況でしょうか。わたしは、あえてその場面を限定するならば、結婚式だと思うのです。黒鍵ばかりをはじいてピアノを弾く幼かった頃、という読みはそのままに。今、たくさんの花とみんなの祝福のつぼみがひらいて、自分達の幸せを飾ってくれている。喜んでくれている。そんな「ミルフルール」のブーケを手にして、最愛の人の戸籍へ、腕の中へ、家庭へと入っていく。そんな春の日の結婚式は、この世でもっとも幸福な出来事のひとつでしょう。
どんな形にせよ、「日々を終え」というのは、自分から終わらせて、新しい日々へ一歩を踏み出す力強い決意と自主性が表現されていると思います。その決然とした行動によって、ミルフルールはそのつぼみをひらき、祝福の香りをその人へまとわせて、未来へ向かう勇気を後押ししているのではないでしょうか。そしてその咲き誇るミルフルールに飾られた人の姿は、その心までも美しく、周りの人にも幸せをもたらすように思えます。
奈月遥
★0
「日々は終え」の「は」が引っかかりますが、上句から下句への転換が巧みだと思います。最初の方が書いておられますが、フランス語が分かるかどうかで評価が分かれるかもしれません。あえてそれを承知で、という詠み方もあります。
紫苑
★0
ミルフルールはたくさんの花という千花模様のことなのですね。「黒鍵を選んではじく日々」が意味するところがわからなくて、ややイメージ先行な印象を受けました。
太田青磁
★0
女子校(黒鍵から高校の音楽室を思い浮かべました)を卒業し、新しい世界へと羽ばたく生徒達。その様子がたくさんの花のつぼみが開くように見えるのかなと思いました。「黒鍵を選ぶ」とは、学校という枠の中を意味するのかもしれません。そういうものからはもう離れ、これからは自分で輝いていく。卒業式という今、これからは。そういう歌なら素敵ですね。
河嶌レイ
★0

あたらしい朝焼けに乗り風見鶏止まった先に今つかむ夢

出詠名 知球気球 × 知己凛
29 / 5 ×1 ×3 ×5

互選名 なつお深淵なる月小早川妖精化師宮嶋いつくseri椋鳥橋師悠佳里

選評名 あたらしい朝焼けにの導入の韻律が情景とともにきもちよく伝わってきます。いったん「朝焼けに乗り」で切れるのか、朝焼けに風見鶏が乗っているのでしょうか。今つかむ夢は少し言葉足らずな印象です。
太田青磁
★0
あたらしい朝焼けにの導入の韻律が情景とともにきもちよく伝わってきます。いったん「朝焼けに乗り」で切れるのか、朝焼けに風見鶏が乗っているのでしょうか。今つかむ夢は少し言葉足らずな印象です。
太田青磁
★0
(風に乗るみたいに)朝焼けに乗って、風見鶏に止まり、手を伸ばして夢を掴む、という想像をしました。一首の中でぐんぐん景色が変わるような印象で、スピード感があると思います。そこが好きです。
「あたらしい朝焼け」っていいですね。上手く言葉にし切れないのですがとても好きです。
椋鳥
★0

君はもう 触れることすら 許されない くらいやがれ 消える魔球

出詠名 ふたりごとshima × yuka
30 / 5 ×0 ×5 ×5

互選名 些松凜恋ちゃむ気球やんや深淵なる月ガッキもも椋鳥きい小向大也

選評名 五句すべてが一字開けになっているのは、意識してのことだと思いますが、「くらいやがれ」の効果を弱めているように思います。それと、初句は「君は」と「君に」のどちらかな、と思います。
紫苑
★0
歌の勢いは好きですが、結句が六音なのが気になりました。
それも含めて消える魔球だとしたら、愛しい。
やんや
★0
「くらいやがれ 消える魔球」!インパクトがすごいです。そんな勢いのある歌なのにスペースが入っていることが、なにか意図はあるのかもしれませんが効果的には思えませんでした。流れるように読めた方が気持ちよさそう。
野崎アン
★0
一字空けを五行詩と読むと悔しさがより伝わってきます。「許されない」「くらいやがれ 」「消える魔球」はそれぞれ6字なのですが、字空けの効果が破調にきいています。
太田青磁
★0
下句の勢いや消える魔球をもってくる斬新さは好きです。
君はもう触れることすらゆるされない くらいやがれ 消える魔球
という感じで一字空けをすると効果的な気がします。
文月郁葉
★0
一字開けの切れ切れさに、悔しさに涙を飲みながら呟くような様子が浮かびました。
でも、繋げて表現しても十分悔しさが伝わるお歌と思いますので、ここは「短歌としての流れ」を優先しても良かったかと。
最後の字足らずは魔球が消えたんだろうなあ。
なんて楽しいつくりの歌!
月丘ナイル
★0

怯えいるものを信ぜよ旗のなき地平が今に立ち現れる

出詠名 梅に春風涼風あき津 × 風橋 平
31 / 5 ×0 ×5 ×4

互選名 紫村かすみルオガッキゆら塾カレー蒼井灯そぼ降る雨きい七海奏一郎

選評名 戦国時代の、旗がたくさん翻る戦場がなぜだか思い浮かびました。「旗のもとに集う」などと言うように、「旗」は何かの主張や信念、所属を象徴するように思いますが、現代はそのようなものがない…ということを歌っているのだろうかと。じゃあ何をたよりに生きていくのかと言ったとき、信じられるのは「怯えいるもの」だと…読解に自信がないのですが、それは自分自身のこと、あるいは危険を察知する本能を指しているのかと感じました。違ったら本当に申し訳ないのですが、現代という時代に立ち向かうよるべなさと強い決意を表しているようで、好きなお歌です。二人で作ったと思えないほどメッセージが収斂されているのもいいなと思いました。
蒼井灯
★0
潔い、格好いい歌だな、と感じました。己が心が恐怖するものすら信望の対象に変えて進め、と読みました。「旗」に戦国時代を思い起こしたのは上の方と同じですが、私は、いつか戦いの象徴たる「旗」のない地平が現れ理想の世界が現れる、それまでは何としてでも生き抜け、ということなのかな、と。色々な読み方が出来ますね。
ルオ
★0
二句切れと、口語の結句が効いていると思いました。「旗」は戦国時代とは思わず、メーデーか、反戦か、ヘイトスピーチかと。時事詠とは思いましたが、いろいろな詠みができると思います。
紫苑
★0
二句切れと、口語の結句が効いていると思いました。「旗」は戦国時代とは思わず、メーデーか、反戦か、ヘイトスピーチかと。時事詠とは思いましたが、いろいろな詠みができると思います。
紫苑
★0
投票が表示されなかったそうなので、再投稿いたします。
紫苑
★0
伝えたいメッセージがあるのだと感じられますが、怯えいるものとは誰のことだろう、旗のなき地平とは何のことだろうという疑問が残ったまま取り残されてしまいました。
太田
★0
伝えたいメッセージがあるのだと感じられますが、怯えいるものとは誰のことだろう、旗のなき地平とは何のことだろうという疑問が残ったまま取り残されてしまいました。
太田青磁
★0
先の方が書いておられますが、旗印、そういうものが無い、言ってしまえば人間が孤独に放り込まれたような現代に生きることへの強いメッセージを感じました。怯えいるものとは、自分でしょうか。イデオロギーや下らぬ人間関係と袂を分かつのは確かに勇気の要ることですが、自分を強くもって生きて往け、という風に読みました。
塾カレー
★0
分かるような、分からないような、なにか強い覚悟があるのは伝わってくるのですが。自分なりに「こういう感じかな」と考えは浮かんだのですが、「読み解いた」というよりは「自分自身を当てはめていった」という感じが強く、評として書くのを躊躇ってしまいます。
ゆら
★0
「躊躇ってしまいます」とだけ書いて解釈を書かないのもスマートじゃないなーと思って、書いてみます。
「怯えいるもの」は弱者、行政などに生殺与奪を握られている人たちだと思いました。革命のような印象を受けたのですが、革命って弱い立場の人が起こすものじゃないですか。また、そういう人たちを通して見つめた「死にたくない」「殺されたくない」という弱い立場であることの怯え、さらには「殺したくない」という力を持ちすぎることへの恐怖も指しているのでしょうか。そこまで含めると、この歌から感じる覚悟に相応しい信念になるような気がします。
「旗のなき地平」はまったく新しい、開拓途中の分野ということなのでしょうが、同時に「旗を立ててはいけない地平」という感じもしました。旗を立てれば、またそこから余計な権威が生まれて、虐げられる人が出てくる。しかし、旗を立てないで平穏に治めるということは、まったく新しい地平に旗を立てること以上に難しいことだと思います。「今に立ち現れる」の強い言葉から感じる信念と覚悟の強さから、本当に難しいことを成し遂げようとしている姿を想像します。しっかりと力をこめて立つ、頼もしい後ろ姿を見ているようです。
ゆら
★0


参加者一覧

エントリーコンビ
みかん猫焼きみかん × 黒猫。
みかんと猫とこたつ。
あさみどり澄み好きだった雨悠 × 薫智大介
名前は明治天皇と枡野浩一さんの短歌から頂きました。よろしくお願いします。
08404大木はち × 404notF0816
ルンバと猫の大木はちと、謎の新人404notF0816が贈る不思議ワールド
竜宮城で酒池肉林小早川 × ごろー
酒池担当(ハゲ)と肉林担当(ショタコン)で頑張ります。
都々逸ドイドイ竜宮城で飲めや侍れや美少年
ついおく紫苑 × 中牧正太
キク科の花・紫苑の花言葉をコンビ名にしました。
ひよこのモラル迂回 × 杏
モラルある孵化をみなさまへ
ロゼロゼ千原こはぎ × 河嶌レイ
一年ぶりの再結成!p( `o´ )q
シャイで気弱なレインボー大葉れい × ヒヨワくん
~雨がやんだら迎えに行くよ~
龍二 ~茶屋町憂歌(ブルース)~龍翔 × 泳二
山盛りポテトが泪に濡れるお前のいないシダックス
1Q97稲垣三鷹 × 坂本 樹
1997年生まれの同い年コンビ。よろしくお願いします。
カレーショップ逢逢 × 塾カレー
じっくり、ガッツリ、煮込みました。
月面観測スコヲプ × 月丘ナイル
今宵あなたにお届けします望遠鏡と月の歌
ポリープをCD-Rにやくナイス害 × ちゃむ
異色ポリープの融合をお届けします
岡本浩明なつお × やん
ファーストシングル「おしべとめしべ」ナウオンセール!
カヨッキガッキ × 杏野カヨ
感情をぶっぱなします。
ブルーもしくはブルー太田青磁 × 蒼井灯
かなしみの色を知らずや器にも空にもブルーもしくはブルー
ロゼッタストーンゆら × 奈月遥
ロゼッタの誓い 
なぜ、人は評を書くのか。目の前の歌に心打たれたからだ。わたしたちは、評を書く。石板に刻むように。命を刻むように。この感動を伝えようと。そしてわたしたちは、誓う。言葉(文字数)で世界(サーバー)を傾かせると
二月二十一日。小倉きなこ × 些松凜恋
初絡みで初参加することになった私たちは運命的に誕生日が一緒でした。
一蓮×托生小宮子々 × 不可思転
「猫のノミ取る職につきたい、一蓮こと小宮子々」
「猫にくっつくノミになりたい、托生こと不可思転」
一蓮×托生、ここに結成!
さくらもち湊あかり × 白黒つけたいカフェオーレ
春限定
エレメント野崎アン × 長月優
互いを近くで感じて、五感をフルに使って、存在を意識しながら同じ場所を目指して飛ぶ!
猫星真篠未成 × 北大路京介
二人とも初参加です。がんばります!☆
秋に華三次則秋 × 彩華
読書メーター代表。
秋だけど春めいてるんだからぁ~
北海道マカロンタワー刺さり隊紫村かすみ × カオリナマンダイ
票入らなかったらTwitter引退します
発芽D-7775豆太 × 双葉屋ほいる
菌のようにかもす
レグルスレオ × 南瑠夏
女子高生とロッカー、夏生まれのふたり。
ルオリールオ × オリー
「どんな光景も最後まで一緒に見ます」
Twink中森つん × 文月郁葉
♪Pants on wave Pants on wave♪
知球気球 × 知己凛
秋に続いて同じコンビで頑張りますっっ(`・ω・´)
ふたりごとshima × yuka
うぃんぱーの縁の2人組っ!
愛がつく地からお届けします(o^^o)
梅に春風涼風あき津 × 風橋 平
東京の風と東北の風が参ります。

31組 

些松凜恋[*]小倉きなこ[*]中森つん[*]奈月遥[*]管理人[*]知己凛[*]村田一広[*]yuka[*]真篠未成[*]南瑠夏[*]大木はち[*]坂本 樹[*]北大路京介[*]大葉れい[*]多香子[*][*]太田青磁[*]三次則秋[*]紫村かすみ[*]ばん悠[*]ナイス害[*]不可思転[*]ちゃむ[*]薫智大介[*]気球[*]レオ[*]なつお[*]やんや[*]宮木水葉[*]深淵なる月[*]ルオ[*]彩華[*]迂回[*]みちくさ[*][*]小早川[*]黒猫。[*]野崎アン[*]妖精化師[*]ごろー[*]泳二[*]河嶌レイ[*]エイ太夫[*]湊あかり[*]ルイド リツコ[*][*]オリー[*]亜梨[*]カオリナマンダイ[*]宮嶋いつく[*]ガッキ[*]双葉屋ほいる[*]June[*]蟹田[*]もも[*]seri[*]ゆら[*]ヒヨワくん[*]文月郁葉[*]塾カレー[*]長月優[*]椋鳥[*]スコヲプ[*]蒼井灯[*]桔梗[*]月丘ナイル[*]404notF0816[*]遊糸[*]中牧正太[*]橋師[*]焼きみかん[*]千原こはぎ[*][*]羽島かよ子[*]杏野カヨ[*]そぼ降る雨[*]ひらたてる[*]稲垣三鷹[*]はだし[*]わんこ山田[*]悠佳里[*]きい[*]月花[*]小向大也[*]七海奏一郎[*]小宮子々[*]きつね[*]龍翔

88名 


春分の歌会R-2ぐらんぷり