春分の歌会
夢で会う約束がある 傘立ての底にうまれた夜のみずうみ 久藤さえ × 西藤智
二人一組で短歌一首を詠む歌会 『R-2ぐらんぷり』2017-春
詠題『 変 』
詠草リスト
特選(2点)×1票 |
並選(1点)×5票 |
次選(0点)×∞票 |
喉笛にやまなみはあり声変はり迎へしきみが買ひ替へる靴
出詠名
大先輩とかわいい後輩ナタカ × 塾カレー
首席 / 58点 特×18 並×22 次×9
互選名 和葉田村穂隆えんどうけいこハナゾウ寿々多実果404notF0816飴町ゆゆき淡海わこ多田なの嫉妬林檎井倉りつもも守宮やもり楢原もかねん貝澤駿一Y川辺紫とう子杏之助はだし高木一由双葉屋ほいる森本直樹WPP中牧正太雀來豆萩野聡しま・しましま真香淡島うるnonたん赤本海薄荷。いっくんママ静ジャック千原こはぎ小川けいと深影コトハ葵の助天国ななお青木健一桜望子Chari 長月優月丘ナイル小林礼歩さやこ金子りさ須磨蛍
選評名
喉仏の表現としてこんなに美しいものがあるものかと。よくある心身のちぐはぐさに落とさず、成長と共に変わっていく身の回りの品に視点を置いたのが好感高し。
飴町ゆゆき
★0
変声期の類歌は多いのですが、旧かな文語の厳かな文体と「喉笛にやまなみはあり」の美しい導入が、他の歌にはない独特の魅力になっていると思います。結句「買ひ替へる靴」がやや結論ありきになってしまっているのかなとも思いました。もう少し広がりのある収め方ができたらもっとよかったです。
貝澤駿一
★0
かっこいい上の句だなあ……。文語の切れ味を感じます。声変わりと靴の買い替えを並置して、「きみ」の成長が強調されている感じを受けました。
Y川
★0
膨らんできた喉仏の表現、旧かな文語、新しくなるもの、春に向かっている今の季節にもマッチングしていて本当にどれも素晴らしい。
高木一由
★0
新生活や新学期などを迎える人の多い今の時期にぴったりなお歌です。声が変わったということは、中学校へあがるのでしょうか。「やまなみ」「靴」と新しい生活が登山のように例えられているようで、モチーフ選びがとても良いです。ただ動詞が多いため、登山の足取りが重い印象です。
とよよん
★0
「喉笛」の「やまなみ」という比喩がとても素敵だと思いました。結句が私にとっては少し場面が唐突というか、靴以外の何かでも歌として成り立つかな、と感じました。ですが、このあたりは多分好みの問題だと思います。「靴」というアイテムに対する思い入れの個人差かもしれません。
真香
★0
喉笛とやまなみの取り合わせのすばらしさよ!というかんじです。私が山並みを好きなところもありますが。笛、山、靴、というのはなんとなくイメージのつながりがあるようで好きです
赤本海
★0
「喉笛にやまなみはあり」美しい雰囲気の言葉だとは思いますが私はピンときませんでした。喉笛は気管(声帯)もしくは喉仏そのものの別称で喉仏の比喩に用いるには違和感がありますし、「やまなみ」はたくさんの山が連なっている様子だと思います。声変わりを迎えた少年が新しい靴を買うという切りとりは良かったと思います。
泳二
★0
喉仏が欲しいなと思いました。
小川けいと
★0
声変わりの時期の少年の新しい靴、という組み合わせがいいなと思いました。喉元の形状から、声変わりを迎えたきみ、そのきみの新しい靴という配置の順番というか視点の移動のしかたがなんとなくしっくりこなくて次選をつけました。
しま・しましま
★0
感情を示さず声変わりを詠んでいるところに惹かれました。主体は「きみ」の親しい人なのか親なのか明記されていませんが、靴を買い換えるという行動から主体なりに「きみ」の心境を読み取ろうとしているように読めました。
多田なの
★0
初句、二句がぶっちぎりに素晴らしいです。
美しい…!
月丘ナイル
★0
おお……!ってなっています。
大先輩(注:ナタカ氏)のおかげで出来た一首だと思うので、大先輩に大きな拍手を!
塾カレー
★0
読んでくださった方、評や票をくださった方、ありがとうございました。
かわいい後輩(注:塾カレー氏)の判断のひとつひとつが素晴らしかったです。
ナタカ
★0
あの頃のふたりの変な口ぐせが咲いちゃいそうな花見の帰り
出詠名
ぬことロザンナnu_ko × ハナゾウ
2席 / 40点 特×7 並×26 次×11
互選名 とがし ゆみこ西村湯呑えんどうけいこ知己凛さはらやうた猫404notF0816井倉りつもも守宮やもり三上りょう村田一広ねん辺紫とう子杏之助はだし聖徳太子高木一由双葉屋ほいるWPP中牧正太しま・しましま荻森美帆真香根本博基nonたん高橋鳩ナタカいっくんママ静ジャックきい千原こはぎオリー豆田麦深影コトハ平田窒素葵の助天国ななおChari 長月優小林礼歩さやこ塾カレー那須ジョン
選評名
久しぶりに会ったふたりが、楽しくお花見のときを過ごして、もしかしたらいい感じに酔っ払って、おそらくふたりにとってかけがえのない共有したある時代の感覚に戻ってしまいそうだよ、という歌だと思いました。「あの頃」という言葉はちょっとありがちで成功しないことが多いと思うのですが、この作品では「変な口ぐせが咲いちゃいそう」という卓抜な表現によってみごとに生かされています。
とがし ゆみこ
★0
「花見」が「咲いちゃいそう」の前にあると比喩がより映えたかなと思います。「咲いちゃいそう」の子どもっぽい言い方が、もうすでに「あの頃」にいくぶん戻っている感じがして好きです。
西村湯呑
★0
時間や景色や心情を、気負わない言葉で何気なく詠んだ(と思わせる)歌と出逢うのが、たまらなく嬉しい。花見で咲くのは花だけじゃないけれど、口ぐせが咲く、とは上手いなぁと思いました。あの頃のふたりと、いまのふたり、何かは変わってるんだろうけど変わってないものも確かにあって、そういう意味でも題が活きていると思いました。
WPP
★0
情景がふわーっと想像されて楽しいうたと思いました。久しぶりに会った人なのに、あっというまに空白期間を飛び越しちゃうような楽しい時間が想像されました。「変な口ぐせ」、そういうのあるよねって思ってにこってなっちゃいます。口ぐせが「咲いちゃいそうな」という表現はちょっと花見だけにーみたいな感じがしてしまいました。
しま・しましま
★0
ひさしぶりに会ったふたりの姿が目に浮かびます。夜桜を見てお酒を飲んですこし酔っぱらってふざけていそうなイメージです。
404notF0816
★0
花見は満開の桜をイメージするので、まだ咲いていないのだとしたら花見の花が五分咲きだったなど、そこまで入れないと読む側に不親切です。「咲いてしまった」とすればよくわかります。
とよよん
★0
お花見でお酒を飲んで楽しい気分になってるのでしょうか。「変な口ぐせが咲いちゃいそう」という表現がおどけたかわいらしさがあっていいなと思いました。今から一緒に帰るのか、一人過去を思い出しながら帰るのか、いろいろと想像できますが、主体が楽しそうでいいなと思います。
オリー
★0
「口ぐせが咲く」という表現が印象的でした。ユニークでありながらも、「思い出話に花を咲かせる」という表現もあることから無理なく意味が分かりますし、楽しそうな様子が目に浮かびます。「ちゃいそう」というのが少し幼稚な感じがして、成長したであろうふたりにはややそぐわない気もしますが、童心に返っているのかもしれませんね。
ナタカ
★0
口ぐせが咲く、魅力的なフレーズだと思います。「の」が連続する点で、それがリズムをよくすることもありますが、最後の「花見の帰り」では重ねない方がよかったのではないかなと感じました。
「あの頃」から時間の経過が、「変な口ぐせ」からふたりの親しさが読め、それが「咲いちゃいそう」であることですこし浮かれた空気が浮かびますね。
長月優
★0
口癖が「咲く」という表現が気になったが、例えば「昔話に花を咲かせる」という表現もあるし、「話す」という行為と相性の良い言葉だと思う。作中主体はそれなりに年齢を重ねた人物なのだろうが、「あの頃のふたり」を思い出しているからこそ、「咲いちゃいそうな」という砕けた口語表現が表れてきているのだろう。
塾カレー
★0
君の背に変速のギアあることを秘密にしてる <kana>春疾風<:>はるはやて</kana>ふく
出詠名
ゆみとよだよとがし ゆみこ × とよよん
3席 / 38点 特×6 並×26 次×10
互選名 田村穂隆西村湯呑えんどうけいこハナゾウ寿々多実果nu_koさはらや404notF0816飴町ゆゆき淡海わこ嫉妬林檎守宮やもりねん辺紫とう子はだし高木一由森本直樹WPP中牧正太雀來豆萩野聡ニキタ・フユ赤本海高橋鳩ナタカいっくんママきいみちくさ千原こはぎ安堂霊豆田麦葵の助青木健一桜望子Chari 椋鳥月丘ナイルさやこ泳二金子りさかつらいす那須ジョン
選評名
ときめきますね……君が知らない君の秘密……。
きっと、君自身が気づかないタイミングでギアが変わるんでしょう。
速度を変えることと、「春疾風」のイメージがとても合っているように思います。
「変速ギアのあることを〜」と、名詞をひとかたまりにした方がまとまる気もします。
田村穂隆
★0
自転車ふたり乗り、主体は後ろに乗ってる光景を思いました。
「秘密にしてる」から、自分だけが自転車こいでる人を知ってるような親密なきもちを感じました。青春のさわやかなうただと思います。
nu_ko
★0
すごく素敵だなぁと思いました。が、やはり「変速ギアのあることを」の方がきれいにまとまった気がして…疾走感があるだけに引っかかってしまいました。
淡海わこ
★0
青春の眩しさを感じます。恋は時として本人もそうとは知らぬことを見抜いたりするのでしょうか。しかしそこは恋ですから、君の背のギアは主体にしか見えないものなのかもしれません。色んなことがあやふやだけどきらきらしてて、春風だけが確か。そんな風に読みました。
WPP
★0
なんとなくやる気スイッチのことが思い出されましたが、こっちの方がずっと素敵です。はるはやてふく、のHの音の流れも好きです。
赤本海
★0
自転車に二人乗りしているところでしょうか。自分の背中は自分には見えない。君は気づいていない君のことをわたしは知っている、けれど秘密にしておく。爽やかで素敵な歌だと思いました。一つだけ、「変速のギア」ではなく「変速ギアの」とした方が流れが良かったと思いました。
千原こはぎ
★0
背中にある変則ギア、とても素敵です。二人のりの情景が目に浮かびます。
Chari
★0
ふたり乗りの背中に変速ギアを想像する着眼がすばらしい。坂道では頭の中で「ガチャ」とかいってギアを変えてるんでしょうね。「変速のギア」は確かにすこしぎこちないですが大きな疵とは思いませんでした。私は「春疾風ふく」がちょっと雰囲気に走ってしまったようで微妙でした。
泳二
★0
「変速のギア」という言い方が面白いなーと思いました。
初読では自転車の二人乗りをイメージしましたが、秘密にしてるのは誰が誰に、なんだろう?と少しひっかかりました。
変速、秘密、春疾風ふく、とつながるHの音の明るいイメージと歌の内容がとてもよくあっていると思いました。
月丘ナイル
★0
背中に変速ギアがあることを知っているのは主体だけで、本人には秘密にしているというところがいいなと思いました。二人乗りするほど親しい仲(たぶん恋人同士)だけれど、全部言ってしまわずに自分だけの秘密として大切にしている感じがします。春疾風で疾走感があるのは、爽やかな恋のはじまりを表しているのだと思いました。
かつらいす
★0
大人らが動かぬ写真の中で子はパラパラ漫画のように伸びゆく
出詠名
丸腰御糸さち × 杏之助
4席 / 38点 特×6 並×26 次×9
互選名 寿々多実果nu_ko知己凛石勇斎朱吉淡海わこ井倉りつ守宮やもりY川辺紫とう子はだし聖徳太子双葉屋ほいるWPP中牧正太雀來豆萩野聡荻森美帆ニキタ・フユ真香高橋鳩ナタカ薄荷。いっくんママ静ジャックきい千原こはぎ小川けいとオリー豆田麦葵の助天国ななおルオなつお椋鳥月丘ナイル小林礼歩泳二宮本背水須磨蛍かつらいす那須ジョン
選評名
大人は変わらず、子どもだけがどんどん成長している様子がよくわかります。パラパラ漫画という表現が好きです。
知己凛
★0
パラパラ漫画、素敵です。同じ構図で毎年記念撮影していたらパラパラするの楽しそうだなぁと思いました。
淡海わこ
★0
「大人ら」「動かぬ」など全体に固い言い回しの中で「パラパラ漫画」の語のライトさがちょっとちぐはぐな感じがしました。着眼点はすばらしいと思います。
西村湯呑
★0
この場合パラパラ漫画が比喩として成立しているのか、ちょっと微妙な気もしますが……。しかし言いたいことはわかりますし、うまい目のつけどころであることは確かだと思います。
Y川
★0
映像的で面白いと感じました。「パラパラ漫画」が「動かぬ写真」と対になることで際立っていて、より伸びやかさが感じられるところが好きです。
高橋鳩
★0
上手い比喩だと思いました。仮に定点観測的な写真が撮れたら、パラパラ漫画のように繰っていくとたしかにに子どもたちだけが大きくなっていくと思います。残念なのは全体的に破調気味なこと。パラパラ漫画というリズミカルなモチーフを持ってきているので、リズム感のある歌に仕上がれば更にいいお歌になると思います。
真香
★0
着眼点がとてもおもしろいなと思いました。確かに家族写真をまとめてパラパラしたら、その中の子ども達だけが伸びていくのでしょう。ということは、この家族は毎年同じ場所で同じポーズや並びで家族写真を撮っているのでしょうね。小さな頃から大きくなるまでずっと。家族の仲の良さも伝わってくる素敵な発見のあるお歌だと思います。
千原こはぎ
★0
毎年お盆かお正月に集合写真を撮っているご家庭なのかな、と感じられる温かさが素敵な歌でした。変わらないものと変わっていくものへの飾らない例えが好きです。
ルオ
★0
記念写真を何枚か見たのかなと思いました。大人ももう少しすると老いてきて、今度は大人だった方がパラパラ漫画になるなと思いました。
とよよん
★0
毎年撮る集合写真と読むのが自然かも知れませんが、そうでなくてもアルバムをめくれば大人はいつも同じような顔で同じような様子で写真にうつっています。そんな中で子供は日を追うごとに大きさも表情も変わります。動かない絵を連ねて見るパラパラ漫画という比喩は見事だったと思います。
泳二
★0
成長を「動き」と表現することでパラパラ漫画と繋げたところが上手いと思いました。
写真をパラパラ漫画のようにぱっと見てわかるほど子供が成長するのはほんの一時期のこと。
時期的な焦点を絞って詠んだことで、読み手にもイメージが浮かびます。
いかにもうたの日らしい、いい歌と思います。
月丘ナイル
★0
あと何度生まれ変われば「お帰り」とあなたを照らす灯になれますか
出詠名
亞比屋播磨猫真香 × 高木一由
5席 / 29点 特×6 並×17 次×13
互選名 田村穂隆とがし ゆみこ寿々多実果知己凛さはらやうた猫404notF0816石勇斎朱吉淡海わこもも守宮やもり三上りょう村田一広楢原もかねん貝澤駿一辺紫とう子はだし聖徳太子中牧正太しま・しましま尾崎七遊淡島うる高橋鳩ネネネナタカいっくんママ静ジャックみちくさ雨豆田麦ルオ青木健一村上すみれChari さやこ
選評名
叶わぬ恋をしている、そして何度生まれ変わってもまた好きになる。そんな健気な心情がとても良く表現されていると思います。いつの日か、恋が叶って夫婦となれるように祈りたくなる素敵な作品だと思います。
うた猫
★0
きゅんとしました。照らす灯、は「灯のような存在」の比喩なのだろうなと思いつつも、叶わない恋過ぎてせめてあなたの家の灯りになりたい…と読みました。いじらしいです。
淡海わこ
★0
「生まれ変わる」という言葉がこの歌のなかでは決して大げさではないものとして伝わってきました。「側にいてほしい」「お帰りと言ってほしい」などではないあたりが一見健気な歌ですが、芯の強い気持ちをストレートに詠んでいるような気がして不思議な気持ちになりました。好きです。
三上りょう
★0
遠回しのプロポーズか、あるいはそれのかなわないシチュエーションでの精一杯の告白か。いずれにしよ、いじらしく一途な恋の歌で惹かれました。主体が男性でも女性でも違和感なく読めるのも面白いと思いました。
貝澤駿一
★0
生まれ変わるということは、生き物になることが前提で、灯になるというのは不自然なことなので、誰かに問いかけてはいけないのではと思います。自分でなりたいと思うのならよかったと思います。「お帰り」の鍵括弧の強調の意味が不明確なことも気になりました。
とよよん
★0
出だしから結句まで、石川さゆりの演歌のような一首。評を見ると好きな人は好きなのかも知れませんが、私はそれ以上の奥行きは感じられませんでした。それにしても「なれますか」と聞かれるのはちょっと、いやかなり怖い。
泳二
★0
恋人同士なのに自分に対して弱音を吐いてくれない相手に対する歌と解釈しました。おそらくこの解釈は誤りなのでしょうが、かけたい言葉、なりたいイメージがくっきりと思い浮かんでいるほど近しい距離なのに、決して届かない切なさが響きます。
ルオ
★0
重箱の隅をつつくようなことを言うんですけど、「あと」何度、ということはもう何度か生まれ変わってるのでしょうか……。他の部分からはいまの主体の姿や立ち位置が見えてこなくて、余計にそこが気になってしまいました。
椋鳥
★0
すごく物語なお歌だな、と思いました。
すでに何度か生まれ変わっているのにあなたとは結ばれていない、結ばれないし(どういう関係性であれ)灯になれないというのはしんみりとしてしまいました。
雨
★0
自転車を全力でこぐ前髪が変なかたちにゆがむ あいたい
出詠名
ネネネモトネネネ × 根本博基
6席 / 29点 特×5 並×19 次×7
互選名 とがし ゆみこ西村湯呑えんどうけいこハナゾウ寿々多実果飴町ゆゆき淡海わこ嫉妬林檎井倉りつ杏之助高木一由双葉屋ほいる中牧正太萩野聡しま・しましま荻森美帆ニキタ・フユnonたん赤本海高橋鳩ナタカ薄荷。千原こはぎ雨豆田麦葵の助ルオChari なつお小林礼歩さやこ
選評名
自転車からゆがむまでが一気に絵で浮かぶのですが「あいたい」だけが取ってつけたようで残念です
青木健一
★0
まるで前髪が自転車をこいでいるかのような爽快感に惹かれました。「ゆがむ」の直後に「あいたい」というまっすぐな感情がくるのも良いです。
嫉妬林檎
★0
「前髪が変なかたちにゆがむ」が良かったです。それでもこぐことをやめない青春の疾走感があって好きなお歌です。
ニキタ・フユ
★0
前髪が自転車をこぐわけではないので、二句目と三句目の間に空白がほしいと思いましたが、空白が二か所もあると切れ切れになってしまうので、「自転車を全力でこげば」とすればよかったのでしょう。
とよよん
★0
「自転車を全力でこぐ(私の)前髪」と頭の中で言葉を補って読めたので、「こぐ」が「前髪」にかかる不自然さは感じませんでした。自転車を前傾姿勢で漕ぐと顔はぐっと体の前に出るので、はやる気持ちを表すためにただの「髪」ではなく「前髪」にされたのも良いと感じました。「変なかたち」というのも、髪が乱れることも気にせずに自転車を漕ぐ主体のむしゃらさが表現されているようで好きです。
一字空けの「あいたい」は確かにとってつけたような印象がなきにしもあらずですが、あいたい相手に対する様々な感情が一字空けの間に去来し、最後に残る一番強い感情がシンプルな「あいたい」だったのだろうと読みました。
ナタカ
★0
前から順番に起こったことをそのまま描写しています。それが結句の「あいたい」に素直に繋がり、主体の気持ちがダイレクトに伝わってきて、こちらまでドキドキするようなお歌です。きっと好きな人のところへ向かっているのでしょう。前髪の形も気にせず全力で自転車をこいでいく。そのとき浮かぶことなんてもう「あいたい」の一言に尽きるのでしょうね。わたしは字空けはこの形がベストだと思います。
千原こはぎ
★0
わたしもよくしてしまう作り方なのですが、この場合の「あいたい」はちょっと違うかもと思いました。いま相手に会うために全力で向かっているように読めるから、会えるのに「あいたい」とするのはわたしには違和感があります。それ以外はリズミカルだし表現も面白いしとても好きです。
天国ななお
★0
最後の「あいたい」で撃ち抜かれました。今から会えることは分かっていて、もう少しだということも知っていて、でも、だからこそ、どうしようもなく会いたいのだろうな、と感じました。全力で漕ぐ合間の刹那の息継ぎのような、空白も巧いです。
ルオ
★0
勢いとスピードがあって、青春!!て感じがとても好きです。
他にも素敵な歌がたくさんあるので迷ったのですが、この歌を特選にしました。
葵の助
★0
主体は女性なのかの?大事な前髪が歪む程の疾走感と会いたい気持ちが出ていて、好きです。
高木一由
★0
変わりゆく町でふたたび好いている靴のセンスの変わらない人
出詠名
中牧王子とうたう猫うた猫 × 中牧正太
7席 / 28点 特×4 並×20 次×8
互選名 とがし ゆみこ西村湯呑えんどうけいこハナゾウ寿々多実果石勇斎朱吉多田なの井倉りつもも井筒ふみ守宮やもりY川辺紫とう子はだし聖徳太子高木一由WPPしま・しましま尾崎七遊根本博基高橋鳩静ジャックきい雨平田窒素天国ななおルオ椋鳥長月優泳二かつらいす那須ジョン
選評名
変わっていく街の中を歩いている中で、ふと足元を見ると見覚えのある靴が。このセンスの変わらない人を愛しく思っていることが、よく伝わります。
石勇斎朱吉
★0
変わっていく街の中を歩いている中で、ふと足元を見ると見覚えのある靴が。このセンスの変わらない人を愛しく思っていることが、よく伝わります。
石勇斎朱吉
★0
靴にフォーカスをあてたことで、服装は変わっているんじゃないかな…とちょっと思ってしまったので、そこはもう少し表現の仕方があったかもしれません。「結婚相手は靴と歯を見よ」というように、人の本質を表すアイテムであることは分かるのですが。
色々言いましたが、変わりゆくものの中で変わらないものを見た時の安堵感、ブレない美しさのようなものが見事に表されていて、お題のこなし方もうまく、とても好きな歌です。
西村湯呑
★0
ふたたび好いている、が良いなと思いました。もう一度誰か(何か)を好きになる時、その心は前と変わってる?変わってない?変わるということについて思いを深くしました。靴に視点をむけたところに、主体(おそらく詠者)の洞察力といいますか思弁的な部分がうかがえて、そこも良いなと思いました。
WPP
★0
変わって行く町の風景や雰囲気の中に変わらないものを見つけるとホッとするものがありますが、それがかつて好ましく思っていた人の「靴のセンス」っていう視点がいいなって思いました。大人な視点だなぁ。「ふたたび好いている」というフレーズもいいなって思いました。「好きになる」とは違う「好いている」、いいなぁ。
しま・しましま
★0
町の様子は年とともに変わってゆく。その中で靴のセンスは変わらない人のことをふたたび好きになっている。靴のセンスという視点はユニークだと思いましたが、私は「好いている」という言葉の作為的な違和感に引っかかって採れませんでした。
泳二
★0
変わっていく町と変わらない人の対比は一度詠もうとして上手く出来なかったので、靴という選ばれたモチーフのセンスや「ふたたび」という文字の開きも含めて、巧みな歌だなと感じます。「好いている」も素敵ですね。
ルオ
★0
「ふたたび」という言葉の後には状況が変わるような表現がしっくりきます。ふたたび好きになる、だと意味が滑らかになるのではないでしょうか。
とよよん
★0
靴=その人の根本と読みました。外観が変わろうとも、好きだったあの頃のままの部分を主体は好きなんでしょうね。
高木一由
★0
ここで出てくる町、はベッドタウンとか、大きな街ではない印象でした。ベッドタウン再開発、のような。
そんな刻々と変化していく町のなかで、一度別れてしまった人とまた一緒になったのでしょうね。靴のセンスがちっとも変っていないということへの安心感や、好いた本人さんの変化したようでしていない感じがほほえましいと感じました。
雨
★0
上で「採れませんでした」と書きましたがやっぱり採りました。
泳二
★0
たまねぎの催涙弾を皮切りに我も我もとキッチン事変
出詠名
♡ほいるりん♡双葉屋ほいる × 知己凛
8席 / 26点 特×3 並×20 次×8
互選名 ハナゾウ井筒ふみ村田一広ねんY川辺紫とう子杏之助はだし聖徳太子高木一由WPP雀來豆しま・しましま荻森美帆御糸さち淡島うるnonたんネネネ薄荷。静ジャック安堂霊オリー深影コトハとよよん村上すみれChari 小林礼歩金子りさ徳田弓華塾カレーかつらいす
選評名
何が起こってるんだろう大丈夫かな?ってこちらの想像力をイメージさせてくれる歌です。うたのリズムがとても良いので我も我もとたたみかけるように起こるキッチン事変のスピード感やあたふた感が伝わってきます。とても目立つ歌ですね。
ハナゾウ
★0
にぎやかな歌だと思いました。「催涙弾」「キッチン事変」と強い感じの言葉が重なっているのはちょっと損かもしれません(表現自体は好きなのですが)
Y川
★0
とにかくたまねぎを催涙弾としたことがとてもおもしろいです。全体のリズミカルな感じもキッチンで料理ができあがっていく様子が浮かんできて、とても気持ちがいいです。
杏之助
★0
短歌の31音の長さを感じさせないスピード感がすごく面白いなって思いました。何が起こってるのか「我も我も」は誰(何)なのか、全然分からないけど面白い。「キッチン事変」ってフレーズも好きです。
しま・しましま
★0
絶妙なリズム感と疾走感がありキッチンでの様子が思い起こされます。リズム感のおかげで「我も我とも」と漠然としている主語に深みが出ていて良い。冒頭の催涙弾という単語のインパクトが強すぎるせいでキッチン事変という単語の印象が少し薄れてしまっているように感じます。
聖徳太子
★0
「キッチン事変」というフレーズがリズミカルで、歌全体のスピードを上げている感じがしていいなと思いました。
オリー
★0
たまねぎで涙が出てくる→拭おうとタオルに手を伸ばす→引っ掛かってお皿を落としかける→慌てて抑えた余波でボウルを床に盛大に転がす→呆然としているうちにお鍋が噴く
みたいなどうしようもない瞬間が人生にはあると思うのですが、そういう「最悪」の瞬間を「キッチン事変」という言葉で表現したのかな、と楽しい気分で読みました。
たまねぎの涙を歌にするときって、大抵はそもそもたまねぎ関係なく泣きたいときなんですよね。キッチン事変がモヤモヤをふっ飛ばして、主体の気持ちをすっきりしてくれればいいなと思います。
深影コトハ
★0
「キッチン事変」はとても面白いフレーズで、玉ねぎの催涙弾もとても共感できるたとえです。キッチン事変の様子ですが、私は他のものが思い浮かばず、刃物など物騒な方へ想像が及んでしまうので、「我も我もと」のあたりに具体的な野菜の様子や行動など入るとうれしいです。
とよよん
★0
リズミカルで動きがあって良い歌と思います。一体何があったんだろう。おそらく大したことではない(キャベツに虫がついてたとかジャガイモの中心部が真っ黒だったとか)のだと思いますが、それを催涙弾だの事変だのという言葉で物騒に歌ったところが楽しいです。
WPP
★0
「我も我も」が良い。結局、玉ねぎを切って涙を流している作中主体はひとりでしかないのだが、その状況を楽しんでいるのが伝わる。
塾カレー
★0
まだ夢をみてもいいよとこっそりと巻いた変身ベルトが光る
出詠名
主婦と事務員楢原もか × 小川けいと
9席 / 24点 特×3 並×18 次×15
互選名 えんどうけいこハナゾウ知己凛404notF0816石勇斎朱吉淡海わこもも三上りょう村田一広ねん辺紫とう子はだし高木一由中牧正太しま・しましま荻森美帆淡島うるnonたん赤本海高橋鳩ネネネ薄荷。いっくんママ静ジャックきい安堂霊雨オリー豆田麦とよよん桜望子Chari 椋鳥小林礼歩さやこ須磨蛍
選評名
主体は大人なのでしょうか。幼少期の無邪気な夢や憧れがこっそりと巻かれた変身ベルトに宿っているのでしょうね。ノスタルジーな気持ちになりました。
淡海わこ
★0
夢をみてもいいよと言っているのも、ベルトを巻いているのも主体なのでしょうか。
それとも、ベルトがいいよと光ってくれたのでしょうか。
後者だと思うのですが、前者に読めてしまう言葉の並びがもったいないなぁと感じました。
シチュエーションがとても好きです。
辺紫とう子
★0
まだ夢をみていいよも、変身ベルトを巻くのも、それを光らせたのも、わたしは主体と読みました。少なくとも、変身ベルトを巻いたのは主体ですよね。ぬけぬけとした、自分にやさしい感じ、出来そうで出来ないことって思って、そういうところを詠まれてるの好きだなぁって思いました。
しま・しましま
★0
お子さんの変身ベルトをふと真夜中に手に取ってつけてみた、そんな情景が浮かびました。「こっそりと」が「巻いた」にかかるのか、「光る」にかかるのか分かりにくいのが残念です。私はこっそり巻くといいなと思うので、「こっそりと」を「真夜中に」など、具体的な時間に変えるとよりよくなるのではないかと思います。
とよよん
★0
いつか夢からさめることを分かっていて、それでもまだ夢を「みてもいいよ」という主体に切ない優しさを感じました。
切り取りたい一瞬をのぞかせてもらった気持ちになりました。
とても好きです。
ネネネ
★0
解釈が分かれているようですが、私は、
(主体が)こっそり巻いた変身ベルトが「まだ夢をみていいよ」と光ってるのだと読みました。
できれば、(巻く前に)「まだ夢をみていいよ」と変身ベルトが言ってくれたからこっそり巻いたっていう語順だったらもっとよかったかな、と思います。好みの問題だと思いますけど。
こっそりベルトを巻きたい気持ち、わかります。(私は大人になっても堂々と巻いてましたけどww)
知己凛
★0
変身ベルトと言えば仮面ライダー。寝ている間にプレゼントでしょうか。
「みてもいいよと」が少し舌足らずな点が気になったのと「こっそりと」はちょっと言い過ぎだったかもしれません。
泳二
★0
「できるとき変身して」という母へ返そう「強くなって帰るね」
出詠名
A-270泳二 × 天国ななお
10席 / 23点 特×4 並×15 次×11
互選名 和葉田村穂隆寿々多実果404notF0816淡海わこ井筒ふみ楢原もか辺紫とう子杏之助双葉屋ほいるWPPニキタ・フユ淡島うる高橋鳩ナタカいっくんママ静ジャックきい千原こはぎ安堂霊小川けいとオリー桜望子村上すみれChari 椋鳥小林礼歩須磨蛍かつらいす那須ジョン
選評名
母は返信を変身と間違えたのですね。でもその間違いによって味のある言葉になった。「できるとき変身して」とは、焦らないで、きっと道は開けるから、といった優しい励まし或いは見守りのメッセージとして主体に響いたのでしょう。とても感動するエピソードです。
WPP
★0
ひとり立ちするときのやりとりなのだと思いました。真面目に話すと照れくさいけれど「変身して」とそのことばへの返しが効いていて、和みながらも涙ぐみそうになってしまいました。好きです。
高橋鳩
★0
「できるとき」で良いという母親に決意を返す。元気のでるお歌だな。ストレートに家族の温かさが伝わって好きです。
ニキタ・フユ
★0
年配の方は、スマホや携帯でのメールやメッセージ、あるいはラインなど言葉の打ち間違えが多いことがあり、おそらく変身は返信の誤変換だと推察されます。主体は、出かけている、あるいは遠く離れて暮らしているので「帰るね」という表現をしたのかなと思いました。しかし読み手からは母子の位置関係の把握が「できるとき変身して」という部分だけでは不十分で、「帰る」というところまでは推察が難しいです。また、返信する、返す、帰るという動作が鍵括弧によって強調されてしまっています。「できるとき変身して」という母へ返信「強くなっちゃうかもね」くらいが丁度よいです。
とよよん
★0
こんな返信がパッとできる親子ならきっと楽しいだろうな、と思いました。お互い受信したときニヤニヤしてそう。
双葉屋ほいる
★0
「返信」が「変身」に誤変換されたまま送ってしまうお母さんの可愛らしさと、それに返信する「強くなって帰るね」は遠くで一人暮らししてる子どもでしょうか。なかなか帰れないけど、強くなって、成長して帰ってくるねという力強さや優しさが感じられる歌だと思いました。
オリー
★0
変換ミスというテーマ、子供を気遣って「できるとき」と付ける母親の優しさ、茶目っ気のある返信をする子供の微笑ましさ、いろいろな要素が詰め込まれているのにスマートにまとまっていて、すごいと思いました。
ナタカ
★0
ぼくたちの化学変化は地味だけどシンクではじける線香花火
出詠名
フユノミニキタ・フユ × 西村湯呑
11席 / 23点 特×3 並×17 次×11
互選名 えんどうけいこnu_ko404notF0816石勇斎朱吉井筒ふみ村田一広貝澤駿一辺紫とう子はだしWPP中牧正太萩野聡しま・しましま荻森美帆御糸さち尾崎七遊真香赤本海ネネネ静ジャックきい安堂霊オリー深影コトハ天国ななお青木健一村上すみれChari 小林礼歩塾カレー那須ジョン
選評名
地味で取り柄のない「ぼくたち」の「化学変化」が、同じく地味だけどしみじみとした味わいのある「線香花火」のようだという把握が瑞々しくていいなと思いました。「シンク」も効いています。
貝澤駿一
★0
シンクで花火、という意外性から、地味な化学変化しかできぬぼくたちの未知の可能性を感じました。小さな変化を豊かな心で捉える、うた詠みの姿勢をも思わせて、素敵です。
WPP
★0
「シンクではじける線香花火」がなんと言っても良いですね。なんだかさびしげで秘密の行いをしている雰囲気があります。狭い場所でちいさな花火を共有するということは、花火大会で盛大な花火を大人数で共有するということとは対照的だけど、前者の方がひととつながりたい、という思いの切実さがあると思います。
萩野聡
★0
花火大会、とかではなく、しかも何らかの理由で線香花火をする場所としてシンクが選ばれている、たしかに地味ですw でもこれ以上ない親密さも感じます。スパークするような化学変化ではなく、時間をかけてじわじわと育む愛。いいですね、そういうの、大好きです。ストーリー性があっていいお歌だと思いました。
真香
★0
線香花火は、夏の屋外で行うと風情があるものだと思うのですが、それを家の中のシンクで行うというのは、面白いと思います。この表現ですと、シンクではじける線香花火が、地味なのでぼくたちの化学変化のようだと言いたいのか、ぼくたちの化学変化は地味なのだけれど、シンクではじける線香花火はとても派手だといいたいのか、解釈が二つに割れてしまうでしょう。
とよよん
★0
線香花火は、夏の屋外で行うと風情があるものだと思うのですが、それを家の中のシンクで行うというのは、面白いと思います。この表現ですと、シンクではじける線香花火が、地味なのでぼくたちの化学変化のようだと言いたいのか、ぼくたちの化学変化は地味なのだけれど、シンクではじける線香花火はとても派手だといいたいのか、解釈が二つに割れてしまうでしょう。
とよよん
★0
「地味」を表現する「シンク」や「線香花火」が効いてていいなと思います。花火大会のような派手さはないけど、同じ化学変化。なんでシンクで花火してるんだろうなーって想像の余地があるのもいいと思います。
オリー
★0
シンクではじける線香花火、という下の句にやられました。
その分、上の句がとても凡庸に思えてしまい、特選には推しきれず…。
「花火」というモチーフを挙げた時点で、すぐ裏側に「変化」のイメージを鮮烈に感じるので、思い切って「化学変化」という言葉は捨ててしまっても良かったのでは、と思いました。
深影コトハ
★0
シンクで線香花火をしてしまう作中主体たちの面白さ。
塾カレー
★0
山積みの楽譜の中から現れた変ホ短調寄りの思い出
出詠名
嫉妬村嫉妬林檎 × 村上すみれ
12席 / 23点 特×3 並×17 次×6
互選名 和葉とがし ゆみこえんどうけいこさはらや404notF0816もも守宮やもり村田一広楢原もか中牧正太しま・しましま御糸さち真香赤本海高橋鳩薄荷。静ジャック安堂霊オリールオChari 椋鳥月丘ナイル小林礼歩宮本背水金子りさ
選評名
「思い出」がやや常套的かなという気もしたのですが、「変ホ短調寄り」という表現が絶妙でとても魅力的な歌でした。何か少し憂鬱な出来事があったのでしょうか。想像がふくらみます。
えんどうけいこ
★0
変ホ短調、これは相当ダークな思い出かと。音楽を嗜む人にとって楽譜は音楽そのもの。見た瞬間、五感に音楽が再生されて、そこに思い出が刻まれている場合は当然、克明に蘇ってきますよね。そういう感覚に共感を覚えたのと「変」のお題で「変ホ短調」を持ってきた着想、しかもムリなく歌に組み込まれきっちり纏まっているところに好感を持ちました。「寄り」という表現には賛否ありそうに思いますが、ニュアンス的には変ホ短調なんだよなー、という心情として読めるので、私は好きです。
真香
★0
変ホ長調はベートーヴェンが愛した調であり、シャルパンティエは「残酷さや厳しさを表す」と述べているそうで(ウィキペディアより)、厳かな感じの思い出なのかと思うのですが、最近の日本の歌謡曲では変ホ長調は楽し気なポップ調の曲もあることから、「変ホ長調寄りの思い出」は読み手側からのイメージによって左右されてしまう表現だと思いました。山積みの楽譜から出てきたことから、大切にしてはいなかったと思うと、掘り出し物ではあったのかなと思いますが、クラッシックの荘厳さとは結びつきにくいです。
とよよん
★0
元吹奏楽部なので共感しやすい歌だなと思いました。「山積みの楽譜」から今まで演奏してきた曲がたくさんあって、その一つ一つに思い出や思い入れがある中で「変ホ短調寄り」はなんとなく思い出したくない、山積みの楽譜の中に埋もれたままにしておきたかった思い出なのかなーと想像しました。
オリー
★0
「変ホ短調」は、音楽を愛してらっしゃる方々であればこそすんなりと通じる隠喩と思われ、ああ、と理解しあえる方々が羨ましく感じます。そちらの方面には疎いため、何となく暗いイメージしか湧かないのですが、自分には理解しきれない静謐さも孕んでいるようで惹かれました。
ルオ
★0
下の句の解釈の幅が広すぎる気がしました。ある調から受けるイメージは人によって千差万別ですし、他の調でも歌が成立するように読めるので、詠み手が変ホ短調にどのようなイメージを重ねているのかを見せてほしかったと思います。
Y川
★0
「寄りの」なので、変ホ短調の楽譜が出てきたわけではなくて、あくまで変ホ短調っぽい思い出の品(楽譜なら「寄りの」は違和感があるので、楽譜ではないもの?)が出てきたのだと読みました。変ホ短調に抱くイメージは人それぞれだと思いますが、短調なのでおそらく楽しい思い出ではないのでしょう。渡せなかったラブレターとか、悔しい結果に終わった賞状のようなものをイメージしました。
ナタカ
★0
ピンクのお花にしようか迷った歌なのですが、結句の「思い出」という大雑把な言葉がひっかかり、黄色いお花にしました。
思い出を「変ホ短調寄りの」と表現する感覚は素晴らしいです。
月丘ナイル
★0
君からの手紙は変な味がした 古いインクと下手な例えの
出詠名
チコとトレース雀來豆 × しま・しましま
13席 / 22点 特×4 並×14 次×7
互選名 とがし ゆみこえんどうけいこ飴町ゆゆき村田一広貝澤駿一杏之助聖徳太子高木一由WPP中牧正太荻森美帆尾崎七遊淡島うる根本博基ナタカ薄荷。平田窒素葵の助とよよん桜望子村上すみれ椋鳥月丘ナイル泳二金子りさ
選評名
「古いインクと下手な例え」がいいですね。たぶんラブレターなんでしょう。一生懸命書いたけれど、うまく伝わらなかった気持ち。そのぎこちなさが愛らしいです。
貝澤駿一
★0
本当に舐めたんでしょうね。わかります。舐めたくなりますよね。読者がギリギリ引かないラインを攻め切って成功していると思います。良い歌だと思います。
中牧正太
★0
こんな歌を詠める様になりたいです…。本当に手紙を舐めたのか、比喩なのか。現実と非現実の狭間のような…
尾崎七遊
★0
上句で告白しておいて下句で照れくさそうにしているのが好きです。どんな手紙でも変な味がするとは思いますが、君からの手紙の変な味は格別です。自分なら君からの手紙はなんの違和感もなく舐めるので共感できるんですが、こう、一人でドキドキするような歌にならない。お見事です…。
平田窒素
★0
手紙が変な味で想像したのは「♪黒ヤギさんからお手紙ついた」でしたがちょっと違いますね。大人になってから昔もらった君からの手紙を読み返していると読みました。鼻の奥がツンとするような、ちょっと甘いような、変な味だったのでしょう。主体が君に出した手紙もきっとかなり変な味だと思います。
泳二
★0
気持ちが空回りして下手な例えになってしまったのでしょう。下手だからこそ余計に気持ちの強さが伝わってきます。
ナタカ
★0
読み返してこそばゆい気持ちになる手紙、ありますあります(笑)
当然のように比喩として受け取っていたので、本当に舐めた、という評があることに驚きました。
あなたはヤギですか。
月丘ナイル
★0
変だねえ、変だねえって言いながら河童型ケーキを分け合った
出詠名
風と観覧車田村穂隆 × 多田なの
14席 / 21点 特×4 並×13 次×11
互選名 和葉西村湯呑寿々多実果さはらや飴町ゆゆき井筒ふみ守宮やもり三上りょう村田一広Y川はだしWPP中牧正太雀來豆萩野聡しま・しましま御糸さち根本博基nonたんネネネ薄荷。静ジャック小川けいと深影コトハとよよん椋鳥金子りさ徳田弓華
選評名
明るいわけのわからなさが好きです。変って言わないほうがより変さが増したかも。
西村湯呑
★0
ううむ、河童型ケーキ。それは変ですねえ。あ、もしかして変だねえは別のことで、河童型ケーキは主体たちにとって変でも何でもなかったりして。だとすると尚更変で、いや面白いですね。分け合った、で終わる唐突感がこの歌の面白さを増長しているように思います。
WPP
★0
河童型ケーキ、画像を探してみたら結構可愛かったです!けど、それを分け合う姿はやはり「変だねえ」って感じかも。この何だか不思議な空気感が好きです。
御糸さち
★0
変だねえ、って口調のリフレインが河童型ケーキの気の抜けたユーモラスさとマッチしていて、可笑しな気分が伝わってきます。ほのぼの。
根本博基
★0
「河童型ケーキ」は確かに変で面白いんですが、何にでも互換可能だと思うんですね。ナンセンス狙いなので必然性と言ってしまうとそれまでなのですが、短歌としては私はナンセンスなりの納得性がほしかった。
泳二
★0
何が変なのかわからないんですよね。河童型ケーキを分け合っただけだから。そのあたりの疑問が読み手の頭の中で広がって、あれこれと長く楽しめる歌だと思いました。
小川けいと
★0
河童型ケーキ、分け合いにくそう!
分け合いにくい変な形のケーキを「変だねえ」って言いながら分けあう、っていう光景がとても幸せそうだな、と思いました。分け合いにくい形のものを分け合う、というのがいいです。
椋鳥
★0
今年から変温動物辞めました冬でもきみと笑えるように
出詠名
えびふりゃあず辺紫とう子 × 淡海わこ
15席 / 20点 特×3 並×14 次×11
互選名 田村穂隆ハナゾウ知己凛うた猫404notF0816多田なの井筒ふみはだしWPP中牧正太荻森美帆ニキタ・フユ御糸さち尾崎七遊nonたん高橋鳩千原こはぎオリー豆田麦深影コトハ平田窒素天国ななお桜望子なつお椋鳥宮本背水徳田弓華那須ジョン
選評名
寒さを共に分かち合うひとと巡り合えたのですね。変温動物であった頃の主体を想像すると益々じわります。上手く言えないけど好き。
WPP
★0
変温動物を辞めるという、なかなかありえないことをあっさり言ってしまう面白さが素敵です。変温動物と冬という言葉から、ふっと想像したのはカエルなのですが、主体がカエルのような本当の変温動物でも面白いし、深読みすれば、主体は変温動物の体温のようにころころ態度を変えていた人間ともとれるようでそれはそれで別の味わいがあって好きだなと思いました。
荻森美帆
★0
「変温動物辞めました」が面白くて、後にくる「冬でもきみと笑えるように」が優しくて、本当に好きです。温かい歌ですね。
高橋鳩
★0
比喩だというのは重々承知なのですが、主体が人間なら恒温動物だし、本当にカエルなどの変温動物ならやめようとしてやめられるものではないし、前提に無理があるというか、ややお題ありきの発想に思えました。
西村湯呑
★0
「辞めました」という表現が変温動物が仕事か何か、あたかも選択できるものであるかのように見えます。下の句が新しい職だとスムーズだと思うのですが、下の句で述べられる理由が上の句の面白さとつり合いが取れていません。
とよよん
★0
変温動物は冬になると体温を調節できないため冬眠してしまう。主体は寒がりなのでしょうね、きっと毎年冬になるとコタツに入って部屋から出ない日々を過ごしている。けれど、今年からはきみと一緒にいたいから冬眠はせず冬でも外に出かける決意をする。面白くて可愛らしい、読んでいる側まで微笑んでしまうような素敵な恋歌だと思いました。
千原こはぎ
★0
「冷やし中華始めました」のノリで宣言されているのが面白いです。
「変温動物のままだときみと笑えない」という主張については少し甘さを感じつつ…(なんとなくこの歌の主体を想像すると、変温動物のままでも楽しくきみと笑っているような気がするんですよね)、いずれにせよ女性らしい可愛らしさを感じさせる素敵な歌だと思います。
深影コトハ
★0
来年も笑いあっている二人に期待しての1票です。
徳田弓華
★0
変化ではなくて進化と呼ぶときの標本箱のぼくらの背中
出詠名
海岸の月貝澤駿一 × 月丘ナイル
16席 / 18点 特×1 並×16 次×16
互選名 和葉ハナゾウ寿々多実果nu_ko知己凛さはらやうた猫404notF0816石勇斎朱吉飴町ゆゆき村田一広辺紫とう子はだし森本直樹WPP雀來豆荻森美帆ニキタ・フユ御糸さち赤本海ネネネ静ジャックきいみちくさ雨小川けいと豆田麦平田窒素葵の助桜望子長月優神保茂かつらいす
選評名
「ぼくら」は標本箱の中の虫なのでしょうか シチュエーションなどが分かりませんでした
青木健一
★0
進化、背中というワードを出されると、人間の進化の歴史を思い出します。二足歩行をはじめたては猫背だったのがだんだん直立になっていて。ぼくらというのも人類一般くらいの感覚でとりました。標本箱が分かりにくくてやや気にはなりましたが、なんとなく神的な視点で人類歴史を見ている気がして、好きでした。
森本直樹
★0
変化と進化、なるほど!と思いました。近いようで違いますね。
こういう些細な言い回し、とても好きです。
未来を示している歌なんでしょうか。「標本箱のぼくら」が一体何なのかは分かりませんが、背中には羽が生えているイメージが浮かびました。
ネネネ
★0
呼ぶ主体が明確でないので、分かりにくくなってしまっています。標本箱には小さめの生き物を入れるので、彼らの背中が見えるように、そして進化の過程が分かるようディスプレイされているとします。すると、呼ぶのはぼくらではなくなってしまい、ぼくらは呼ばれる側になるからだと思います。
とよよん
★0
のどに帯びる憂いを私も欲しかった声変わりする君が遠くて
出詠名
はぎおぎはべりまぎらわしい荻森美帆 × 萩野聡
17席 / 17点 特×2 並×13 次×16
互選名 田村穂隆寿々多実果404notF0816嫉妬林檎守宮やもり村田一広楢原もか辺紫とう子WPP中牧正太淡島うる根本博基nonたん高橋鳩いっくんママきいみちくさ千原こはぎ雨豆田麦深影コトハ平田窒素Chari 長月優さやこ泳二金子りさ須磨蛍塾カレーかつらいす那須ジョン
選評名
男の子が声変わりしたり身長がぐんと伸びたりするあの時期、何も変わらない女の自分は置いていかれたような、ちょっとさみしい気持ちになる。男の子が男になるのに照れて、ドキドキして、羨ましかった。
ねん
★0
いい歌だと思うんですけど、同じ変声期のモチーフでは「喉笛」のほうを残しました。三句目から結句にかけて、「私」と「君」を持ち出すことによって、「私」と「君」の関係性を決定しすぎているのが気になってしまいます。変声期な神秘的なモチーフ。もう少し読者の読みの幅があってもよかったのではないでしょうか。
貝澤駿一
★0
思春期の男の子を思う女の子の歌ととらえましたが、その間にあるものは単純な恋心などといえるものではないように思います。この「私」と「君」の間柄や二人への周囲の視線は、「のどに帯びる憂い」の獲得の有無によって変化せざるを得ないのでしょう。「私」は単に「君」の変わりゆく姿を嘆くのではなく、同じ変化・成長を遂げることのできない自らの身体にやるせなさを向けます。子供を終えて男と女の世界へ踏み出さねばならないと悟った時期の、漠然とした悲しみがひしひしと伝わりました。
下句は安易すぎるのではとも思いましたが、上の句の悲痛さが強く深いものなので、全体的な流れとしてちょうどいいのではないかと思います。ただし、変声期という時の流れの感じられるテーマなので、もう少し時制を丁寧に詠まれていたらと感じました。
淡島うる
★0
歌全体が抽象的なもやで覆われているので、具体的なモチーフがほしいなと思います。下の句は素敵なので、上の句を工夫するともっと良くなるのではないかと可能性を感じるお歌です。
とよよん
★0
大人になっていく友人の変化への戸惑いやおいてけぼり感、本当に欲しかったのは声変わりではないのだけど声変わりだとする幼さがかわいいです。けれどこの感情を感じることで主体も変化していってるんですよね。この時期の揺れ幅を綺麗に切り取ってるうたですきです。
豆田麦
★0
変わることそのものの切なさをストレートに詠んだ歌。声変わりする君が遠いというわりと普遍的なモチーフではありますが変わっていく声を「のどに帯びる憂い」とした比喩がとにかく素晴らしかった。
泳二
★0
ずっと子どもっぽいと思っていた「君」も、声変わりで大人になってしまった、という主体の心情が真っすぐに伝わってくる歌だなと感じました。下の句は「声変わりする君は遠くて」の方が、今まで近かったのに遠くなってしまったということが分かるのではないかと思います。
さやこ
★0
思春期というか、成長過程にある少女の淡い恋心かな、と感じて好きだなと。
声変わりしていゆく君(彼)が隣に居るのに、いつの間にか変化してしまって、どこかもう手の届かないところに、遠くにいってしまう、その様がイメージ出来て切なくなってしまいました。
雨
★0
のどに帯びる憂い。少年は思春期を迎え、様々な経験を経て大人になってゆくわけですが、喉仏、或いはそこから発せられる声を指して「憂い」とこの作者は言っているのだろう。はじめ作中主体は女性かと思ったが、よくよく考えてみれば男性の可能性もありうる。数としてはさほど多くは無いが声変わりを迎えない男性もいるからだ。そのような男性としては、かすかに憂いを帯びた声や発達した喉仏を羨むことがあるのかもしれない。結句の「君が遠くて」がやや抽象的か。
塾カレー
★0
夕暮れに黒い電線で編み上げた変電所まで続くあぜ道
出詠名
Gift-Kyotoさはらや × 尾崎七遊
18席 / 15点 特×1 並×13 次×11
互選名 うた猫404notF0816多田なの守宮やもり村田一広貝澤駿一Y川高木一由WPP中牧正太雀來豆萩野聡しま・しましま高橋鳩ナタカいっくんママ静ジャックきいみちくさ安堂霊青木健一村上すみれ月丘ナイル神保茂金子りさ
選評名
変電所の風景はノスタルジーを呼び起こしますね。「あぜ道」はとてもいいのですがそれ以外の描写が少し普通すぎる気がしました。そこが逆に、実際の風景ではなく作者が想像した変電所の風景なのだと読者に思わせてしまうところがあり、いま一つ特選には踏み切れませんでした。でも、好きな歌です。
貝澤駿一
★0
日常のなんてことのない景色を見逃さずに短歌にされているところが良いと思いました。電線にわざわざ「黒い」がついているのは、電線の影だからでしょうか。複雑な電線の影があぜ道に映っていて、それを「編む」と表現されているのも素敵だと思います。
ナタカ
★0
編むという表現が良いなと思いました。この歌は静止画のような趣きがありつつも、「続くあぜ道」で奥行きも感じさせてくれるなあと思います。ただ、二句の字余りがちょっと引っかかってしまうような気がします。語順を変えるなどの工夫ができるかもと思いました。
荻森美帆
★0
風景は素敵だと思います。黒い電線で編み上げたのは変電所かあぜ道なのかとふと思ってしまい、イメージが混乱しました。
とよよん
★0
変電所の描写がリアルで上手いです。
日常の景色を切り取ったスナップ写真のようで、派手さはないけれどしみじみといいなーと感じました。
ただ、あぜ道はなくて、変電所の描写だけにまとめた方が視点が分散しないように思いました。
月丘ナイル
★0
ぬるみゆく陽の優しさに包まれて路地にきらめくハナニラの白
出詠名
雑草生活みちくさ × 薄荷。
19席 / 15点 特×0 並×15 次×12
互選名 とがし ゆみこえんどうけいこ寿々多実果守宮やもり村田一広楢原もかY川辺紫とう子高木一由森本直樹WPP中牧正太しま・しましま御糸さちナタカいっくんママ静ジャックきい千原こはぎ深影コトハとよよんChari 椋鳥月丘ナイルさやこ宮本背水金子りさ
選評名
題の言葉を詠み込まない歌は、時にひとりよがりになってしまいますが、これは誰が読んでも「季節の変化」と分かりますね。あまり主役にはならないけれど、あちこちでよく見かけるハナニラをチョイスしたのも、歌の雰囲気に合っていると思います。
ただ、「陽の優しさ」に対して「きらめく」ではちょっと強すぎるように思いました。
楢原もか
★0
ゆるみゆく、陽、優しさ、包まれる、きらめくとぼんやりしたワードがならぶ中で最後にハナニラがどんっとでてきたのが面白かったです。日常や漠然としたやさしい雰囲気という感覚がよく感じられて好きでした。ただ、似たような傾向の言葉が多いのが少しわずらわしいかなあという気もします。
森本直樹
★0
「ぬるみゆく」と「優しさ」は近いので、どちらかにして、節約できた文字数の場所に具体的なモチーフを差し込むといいと思いました。個人的に、「ハナニラの白」の部分はとても鮮やかでいいと思うので、「きらめく」は余分に感じました。ハナニラの白から、心象風景に伸びた方がいいような気がします。
とよよん
★0
「ぬるみゆく」陽の「優しさに」「包まれて」「きらめく」。ちょっと修飾というか主観描写が過剰なように思います。
泳二
★0
「ぬるみゆく」という表現が春へと移り変わる頃の空気感にぴったりで、あたたかな陽射しとハナニラの白さが美しく浮かぶ素敵なお歌でした。
千原こはぎ
★0
「陽」「きらめく」「白」が光のイメージで一貫性はあるのですが、景色を想像したときに光が強すぎてハレーションを起こしてしまうように思います。しかし穏やかで優しい気持ちになる歌で、好きです。春ですね。
ナタカ
★0
ハレーションという評をされた方がとても秀逸だなと思いました。
過剰なほどの光の修飾は好き嫌いが分かれるお歌だと思いますが、私は好きです。
あの花はハナニラというのですね。調べて初めて知ることができました。
深影コトハ
★0
他評での指摘の通り修飾過多かもしれませんが、これ以上ないくらい春の優しい光を感じて、とても良いと思います。
WPP
★0
ハナニラ、華やかではないけれどきれいな花ですよね。柔らかな温かい感覚がとても良いと思います。
高木一由
★0
オーソドックスな美しさを存分にお出しになった歌と思いました。
光をイメージする言葉が多いのでそこは整理できそうです。
でも、ハナニラが連れてくる春の気配が感じられ、好きな歌です。
月丘ナイル
★0
親友が冷たくなって本棚の奥で変形している『こころ』
出詠名
KYえんどうけいこ × Y川
20席 / 14点 特×0 並×14 次×12
互選名 田村穂隆とがし ゆみこさはらやうた猫404notF0816石勇斎朱吉飴町ゆゆき嫉妬林檎もも守宮やもり村田一広はだし高木一由森本直樹中牧正太ニキタ・フユ尾崎七遊みちくさ千原こはぎ雨オリー桜望子泳二金子りさ徳田弓華塾カレー
選評名
上の句が、疎遠になるという意味でも、死んだという意味でもとれるます。またこころも、先生が友人を裏切る(心的な部分で繋がりが薄くなる)→友人の自死という過程をたどるため、上の句の情景を確定させることができませんでした。しかし、どちらの読みであったとしても親友との間に遠さを感じていて、それが下の句の実感に繋がっているような気がします。なんとなく親友とのこれまでの関係もこころから想起される気がして好きでした。
森本直樹
★0
夏目漱石「こころ」を表現しているお歌だと思いました。『こころ』より前の部分が、『こころ』とイコールには見えずつながりが円滑でないイメージです。親友が変形してしまうところまでいくと強すぎるでしょうから、変形しているのは本ということにして、「親友は冷たくなった」などと二句切れにするといいのではないでしょうか。
とよよん
★0
「こころ」が載っている本が本棚の奥の方へ押しやられて、変に曲がってしまった状態の本を想像しました。本の変形した状態と、「こころ」の登場人物である先生の親友のKが自殺してしまったことの2つの状態を「冷たくなった」と表現するセンスがいいなと思いました。
オリー
★0
夏目漱石の『こころ』は親友からもらった(あるいは借りた)ものでしょうか。読まずに本棚の奥に押しやられて曲がってしまっている。「冷たくなって」というやや過剰なユーモアは親友だから許されるのでしょうが、『こころ』の物語にもシンクロしていて怖さもあります。
泳二
★0
親友だったはずなのに、何かのきっかけですれ違いが生じてしまったのだろう。変形してしまったのは自分の心なんだけど、それを出さずに漱石の『こころ』をもってきたところが面白い。本棚の奥、すなわち人の目のとどかないところで変形している『こころ』。それはそのまま作中主体の心のありさまでもあるのだ。「親友が冷たくなって本棚の奥で」と、て(で)が続くところがリズム的にはあまりよくないし、説明的になってしまっているように思う。
塾カレー
★0
少年が踏みにじる光のほうへ蟻が這う八月の変生
出詠名
はとへそ高橋鳩 × へそ
21席 / 12点 特×1 並×10 次×3
互選名 田村穂隆飴町ゆゆき嫉妬林檎村田一広楢原もか森本直樹雀來豆ネネネ青木健一なつお椋鳥長月優神保茂宮本背水
選評名
格好いい、と同時に、格好をつけずに心の内のほうから吐き出したような歌でもあって、とても魅かれました。二つの句跨りは、少し気になりますが、5/5/7/5/9と、読めば、最後の9音がぴたりと決まります。とても力強い結句だと感じました。
雀來豆
★0
前の方とほぼ同意見なのですが、句またがりが気になります。少年に踏みにじられて蟻が逃げ惑っているのならば句またがりが有効と思いますが、歌の趣旨からだと光に導かれてきっちり這うように思えます。であれば少なくとも最後は77の方が美しいのではないかと。
青木健一
★0
少年と蟻と八月の関連性に詩情を感じませんでした。光と変生には感じましたが、読み込むと救われない気分になりました。迷える闇を背負った蟻が光の方へと這っていく。けれどもその光は踏みにじられている。光は、希望のように見えて実はまた絶望なのかと思うと。
とよよん
★0
ねじれのあるリズムがこの歌の独特の手触りを産んでいると思いました。
八月という強い光の季節がもたらす生と死を思います。
月丘ナイル
★0
彗星の軌道を変える君の声漏らさぬように口づけをする
出詠名
穀雨かつらいす × 雨
22席 / 11点 特×2 並×7 次×12
互選名 えんどうけいこさはらや404notF0816淡海わこ守宮やもりねん聖徳太子高木一由WPP中牧正太尾崎七遊nonたん高橋鳩きい深影コトハ平田窒素Chari 椋鳥さやこ徳田弓華那須ジョン
選評名
とても官能的な表現に思えました。彗星の軌道を変えてしまうから、その声が漏れないようにする口づけなのだと思いますが、それ以上にもっと愛のこもった口づけに感じられました。
さはらや
★0
君に向かって彗星の軌道を変えるなどと言えるような恋をしたいし、されたかったです。口づけってありがちな表現のようで、ちょっと古風で、儀式的でもあり、丁寧な印象もあり、それらが彗星の軌道に増幅されているようで面白いと思いました。
平田窒素
★0
美しい、ただ口語で否定の「ぬ」はほとんど使われないので音数合わせに思えて減点
青木健一
★0
彗星の軌道を変えるということは、宇宙まで声が届くということであり、そういう声を出させることができるのとだという自信もうかがえる、情熱的な愛の歌だと思います。彗星を出すことで、性愛の生々しさがなく爽やかです。
とよよん
★0
もう爪を噛まないきみのくすり指 右手をずっとずっと見ている
出詠名
三段腹ギガバーゲンねん × 飴町ゆゆき
23席 / 9点 特×0 並×9 次×10
互選名 えんどうけいこ井倉りつ井筒ふみ守宮やもり辺紫とう子高木一由中牧正太荻森美帆真香nonたんネネネ雨豆田麦平田窒素ルオとよよんChari 泳二徳田弓華
選評名
前は爪を噛む癖のある「きみ」だったのにいつのまにか誰かのものになって
右手の薬指に指輪とかしちゃってるのを見つけてしまった、と読みました。
自分ではない誰かに「きみ」を変えられてしまって茫然ときみの手を見つめる主体。気の毒…
井倉りつ
★0
幼なじみでしょうか。情景としては好きなので選びましたが、左手ではなく右手である理由がわかりませんでした。左手には自分ではない誰かからのリングがすでにはまっていて、それを目にしないためにあえての右手、でしょうか?
真香
★0
指輪をはめる指に関する説は様々で個々人の自由でもあり一概には言えませんが、左手の薬指に指輪をするのは既婚者、右手の薬指はステディな関係の人がいるという意味だということもあるそうです。そうだとすれば、爪を噛まなくなった、つまり悩みやストレスが軽くなったきみには恋人ができてしまったのではないでしょうか。しかもちょっと見て、あ、指輪ないな、という感じではなくて、ずっと見ていることから、指輪がはめられているのを目撃してしまったのかなと推察され、片思いの辛さが感じられました。ずっとずっと見ているという表現からは、諦めの気持ちや、相手の幸せすら感じていそうな情景が浮かびました。
とよよん
★0
自分と付き合い始めて指環を嵌めるようになって、気が付けば爪を噛まなくなったと気づいて仄かな幸せに浸る歌だと解釈していたので、解釈が誤っていたことに浅慮を恥じております。片思いのお歌でも、右手だけで相手が幸せであれると読み取れる優しい人の歌ですね。
ルオ
★0
サクラチル 変わらないことを盾にしてあなたはわたしをすきにならない
出詠名
ピエリの誘惑千原こはぎ × 井倉りつ
24席 / 8点 特×0 並×8 次×10
互選名 えんどうけいこうた猫404notF0816淡海わこもも守宮やもり三上りょうWPPnonたんネネネいっくんママみちくさ平田窒素Chari なつお月丘ナイル小林礼歩宮本背水
選評名
サクラチル は終わった≒変わったことの比喩かと思いました ので変わらないとつながりが弱いかと
青木健一
★0
↑私はそうは読みませんでした。
サクラチル=告白してもフラれたこと、で、二句以降はそのフラれた理由を述べてるのかと。サクラチル、で空白をつけることで場面が切り替わっているような…うまく言えないけど。
俺は変われないから、という言い訳でフラれてしまった悔しさが伝わってきました。
淡海わこ
★0
「サクラチル」は不合格を告げる昔の電報の言い回しです。サクラチルは試験に合格しなかったことを示すと思うと、わたしはあなたにふられてしまったということでしょう。だとすると、サクラチルというのは現在のことを言っているように見えてもうすでに過去の結果を伝えていることから、「すきにならない」ということへつながることの矛盾が生じます。「遠ざけたから」等と理由のかたちにすれば意味が通ったでしょう。また、「変わらない」主体も、あなたなのかわたしなのか曖昧です。
とよよん
★0
失恋してしまったのですね。今まで通りの変わらない関係でいたいから、と振られてしまったのだと読みました。
先のことは…!まだわかりませんよ…!主体がんばれ!
辺紫とう子
★0
内容や言い回しは平易ですが、抜群の共感性がこの歌の持ち味と思います。
わたしもかつて、こんな恋をしていました。
月丘ナイル
★0
一人ぽつんと午前三時にあの人に予測変換的には「すき屋で」
出詠名
チーム磁石さやこ × なつお
25席 / 8点 特×0 並×8 次×6
互選名 西村湯呑えんどうけいこ寿々多実果nu_koさはらやうた猫多田なの三上りょうはだし双葉屋ほいるニキタ・フユきい椋鳥神保茂
選評名
今何処にいて何をしているのかが分かりませんでした 破調も効果を生んでいないと思いました
青木健一
★0
午前三時にあのひとを思ってメールを綴っていると読みました。関西弁「すきやで」を予測変換が「すき屋で」になってしまう少しほろ苦いおかしみのあるお歌に思います。
ニキタ・フユ
★0
下の句が秀逸です。「一人ぽつんと」という説明は、必要あるのかなと感じました。「午前三時にあの人に」もいいと思います。初句を場所を表すようなものにするといいのではと思います。
とよよん
★0
真夜中に、片想いのあの人に「すき」って打とうとしたら携帯からは「すき家で」と返され…。
まだ告白の時ではない…のでしょうね。ぽつんと、で雰囲気が出てるなぁと思いました。
辺紫とう子
★0
すみません、「的には」の意味が取れませんでした。
Y川
★0
咲くほどに濃くなる桜の憂鬱を手帳の四月にしまいこみおり
出詠名
MORINAGA森本直樹 × 長月優
26席 / 7点 特×0 並×7 次×8
互選名 えんどうけいこnu_ko404notF0816三上りょう村田一広中牧正太薄荷。みちくさ葵の助とよよんChari 椋鳥神保茂さやこ金子りさ
選評名
きれいな歌は定型にきちっとハマっていたほうが効果が出ると思います
青木健一
★0
「しまいこみたり」とすると自然だと思います。四月とストレートに書いてしまうと桜のイメージと近すぎるので、「手帳に四角くしまいこみたり」などとすれば詩情が深くなるのではないでしょうか。
とよよん
★0
上の句の、時間の推移を感じさせつつ膨らんでいく憂鬱さは良いなあと思います。下の句がやはりもったいないといった感じで、結句が「しまいこむ」という複合動詞でそのあとに「おり」という補助動詞がくるので、動詞動詞動詞と賑やかになりがちかなと思いました。この歌の場合は憂鬱さが薄れてしまうような感じです。「手帳の四月に」という表現は面白くて好きだなと思いつつ、字余りで韻律に乱れを感じてしまうという諸刃の剣のような表現でもあるかなと思いました。
荻森美帆
★0
手紙からメール、LINEに変わっても内緒話は変わらず君と
出詠名
ルオリールオ × オリー
27席 / 6点 特×0 並×6 次×4
互選名 404notF0816石勇斎朱吉楢原もか杏之助WPP中牧正太真香nonたん高橋鳩小川けいと
選評名
時代の流れを感じることで、主体が長年連れ添っているご夫婦なのかなと思いました。歳をとっても二人だけの内緒話をするなんて仲がいいんだろうなと思わず微笑んでしまうような歌で好きです。
杏之助
★0
君は家族か恋人か友人か。いずれにしても主体には必要不可欠の人物のようです。どうということのない歌のようでもありますが、やわらかい気分にさせてくれて、好きです。
WPP
★0
私と君との仲睦まじさに微笑ましいお歌ですが、平坦な感じがしてしまいます。読点が悪目立ちしているので、思い切って「や」に変えるといいのではないかと思います。
とよよん
★0
占いの結果で「好き」が裏返る変わらなければ君に会えない
出詠名
蝶のあしあとR三上りょう × 神保茂
28席 / 5点 特×1 並×3 次×4
互選名 うた猫石勇斎朱吉多田なのもも村田一広中牧正太高橋鳩平田窒素
選評名
悲しいエンドの映画を何度も観てしまうようなきもちなのかなと思いました。結果は見えているけれど縋ってしまう、というようなきもちなのでしょうか。「占いの結果」と「裏返る」ということばが少しわかりづらいと感じました。
高橋鳩
★0
「裏返る」「変わらなければ」と畳みかけられるので読む側は混乱します。「裏返る変わらなければ」の部分が、「裏返る」か「変わらなければ」のどちらか一方であったならわかりやすかったでしょう。「好き」が変わるという状況を想像したときに、嫌いになってしまうのかなと思ったら、嫌いにならないと君に会えないというのは君への思い入れが強すぎる片思いなのかなと思うと切ないです。だとしたら、「好き」よ裏返れ、くらいにした方がより訴求するのではないでしょうか。
とよよん
★0
校庭の隅は四月も変わらずにコミュ障たちが今日を弔う
出詠名
あおあお青木健一 × 葵の助
29席 / 4点 特×0 並×4 次×8
互選名 さはらや404notF0816守宮やもり村田一広杏之助はだし高木一由森本直樹荻森美帆ニキタ・フユなつお椋鳥
選評名
コミュ障だから、友達も少ないし、やることもないのから今日を弔っているのかなと思った時にやや、理屈が見えすぎてしまっているようで気になりました。学校は四月、新入生を迎えたり進級があったりとしてざわつきがやみません。しかしそのざわつきが校庭の隅には及んでいないという把握が面白かったです。ざわつきの外にある静けさの中で今日を弔う。この一歩引いてざわつきをみている感じ、一日をやや無為に過ごしていそうな感じもまた好きでした。コミュ障と言わなくても友達少なそうな感じは出ているのかなあという気もします。
森本直樹
★0
校庭という広々とした場所から、隅という場所へ焦点がキュッとしぼられる歌の始まりで心を掴まれました。今日を弔う、の「を」が良いなと思います。一日一日を丁寧に扱っているように感じられて、ちゃんと今日という日を弔っているんだろうな、と思いました。コミュ障たちの中に主体がいるのかはわかりませんが、校庭の隅に目がいく冷静さを持った人ではあるのだろうと感じました。
荻森美帆
★0
きょうも友だちができなかったのでしょうね。
村上すみれ
★0
今日を弔うという表現が冴えていいと思いました。
なつお
★0
「変しい…」ではじまる手紙を隠されて微睡むチェーホフ父の書斎に
出詠名
いちごビール深影コトハ × Chari
30席 / 4点 特×0 並×4 次×3
互選名 うた猫守宮やもり辺紫とう子森本直樹WPP須磨蛍塾カレー
選評名
青い山脈「変しい変しい私の変人」を想起しました。青い山脈はチェーホフの「桜の園」がモチーフになっているところがあるそうで、インテリジェンスを感じさせるお歌です。助詞が少なくしかも主語が分かりにくいので、父の書斎で微睡むのは主体なのかチェーホフなのか、それとも、主体は全く別の場所で微睡んでいて、チェーホフの本が父の書斎にあるのかつかみにくいです。また、父の書斎とあるので、隠されたのは父によってなのかと推察されなくもないですが、分かりにくいです。
とよよん
★0
もう何年も手に取られていないチェーホフの本に隠されている誤字の手紙。
書いたのは誰なのか、そして父の子であるだろう主体が何故それを知っているのか、想像がふくらみます。
辺紫とう子
★0
漢字をうっかり間違えちゃって、渡さないでいたのか。それとも、相手が間違えて送ってきたのを大切に好きな本に挟んだのか。とても想像が膨らんで好きです。
うた猫
★0
「変しい」は「恋しい」の誤植?
さてこの手紙をチェーホフの本に挟んだのは父なのか、作中主体なのか。
それはわからないが、手紙を隠されてまどろんでいるというのがおもしろい。「微睡む」という漢字表記が一瞬「微笑む」を思わせるような気もする。
塾カレー
★0
さくら散るプラネタリウムの地中では芽吹きを夢見るブリキの蛹
出詠名
桜町404番地桜望子 × 404notF0816
30席 / 4点 特×0 並×4 次×3
互選名 とがし ゆみこ三上りょう村田一広中牧正太みちくさ長月優神保茂
選評名
芽吹くとは一般的に、樹木が芽を出すことを言います。蛹を樹木に見立てているのかなと思うのですが、それはブリキでできています。ブリキは発芽することはないでしょう。場所に目を移すとプラネタリウム。星が見えるように映写した人口のドームに桜が散ることは、映像か、あるいはプラネタリウム外の景色でしょうが、発芽しないブリキの蛹と合うのは映像の桜だと思いました。人工的な世の中を憂う気分が感じられます。
とよよん
★0
様々な仕掛けが施された意欲的な歌です。
「さくら散る」で始まるので、一見様式的な歌かと思われますが、語意においてはその真逆となっています。
「さくら散る」「プラネタリウム」「地中」「芽吹きを夢見る」「ブリキ」「蛹」、いずれも前後と関連を持たない語が、周到に選ばれています。題詠としては、下句の部分に「変」を感じることもできますが、むしろ一語読み進めるごとに印象の変わっていくこの歌の構造そのものが題の「変」を表しているといえます。
神保茂
★0
神話的天変地異から目を背け寝具売り場へ引越しをする
出詠名
わたのはら赤本海 × 淡島うる
31席 / 3点 特×0 並×3 次×6
互選名 田村穂隆えんどうけいこ井筒ふみ村田一広はだしWPP根本博基雨月丘ナイル
選評名
?意味が
青木健一
★0
東日本大地震では、デパートの屋上に避難して津波の難を逃れた人たちが売り場の品物で暖をとったというエピソードを思い出したのですが、そういう歌でしょうか? よくわかりませんでしたが、非日常と日常の対比というか落差がすごいですね。
守宮やもり
★0
他の方の評にもありましたが東日本大震災を踏まえたお歌なのでしょうか。しかし違う読み方もできるぞと興味深く読みました。神話的天変地異、と大げさに言っているけれど実は痴話喧嘩とか告白されたとかそういう事で、心の処理のつけ方が分からぬまま配置換えになった…というような、ですね。色々に想像できる歌って素敵だと思います。
WPP
★0
非日常と日常のコントラストの面白さを狙った歌だと思いましたが、よくわかりませんでした。例えばデパートの家電売り場で映っている映画(ゴジラとか)を見ていたのをやめて寝具売り場に寝ころびに行く、というようなことかも知れません。もし震災詠であれば「神話的天変地異」も「寝具売り場へ引越し」もは私は評価できませんでした。
泳二
★0
上の句と下の句をそれぞれが考えたとしたら、とても面白いお歌です。上の句も下の句も負けず劣らず秀逸だからです。ただこの歌の主体を考えた時に浮かびにくいのは、上の句と下の句のつながりがないからでしょう。シュルレアリスム的に面白いですが、読む側に不親切です。
とよよん
★0
主体に起こった何かとてもショックな出来事を「神話的天変地異」と表現した感覚に惹かれました。
「ショックなことがあった。とりあえず寝ようそうしよう。」というユーモアの歌と読みました。
あっけらかん、と読まれた手触りに暗さを感じないため、前評にあるような震災の歌だとはとりませんでした。
月丘ナイル
★0
平成30年春。こんなところでウロウロしてます(^^;)評を読んでまして、おおいに想像をかきたてられました(^▽^)寝具売り場へ引っ越ししたのは、防災グッズの気が(笑)『寝ぶくろ』とか。
ロサ・ブラックティー
★0
おかえりよ雪も海へと還りゆく 帰らないもの変わらないこと
出詠名
まめやもり豆田麦 × 守宮やもり
32席 / 3点 特×0 並×3 次×5
互選名 和葉404notF0816淡海わこWPP中牧正太青木健一Chari 金子りさ
選評名
「おかえり」「還りゆく」「帰らない」「変わらない」と言葉の響きを楽しむお歌でしょう。上の句は誰かに呼びかけているようなのですが、下の句と上の句との関係が不明瞭です。帰らない=変わらないという流れも分かりにくいです。
とよよん
★0
「帰らないもの変わらないこと」から戻らないもの変わってしまったことを取り戻したいとおもっているのだろうかと想像しました。
みちくさ
★0
「還る」と「帰る」のニュアンスの違いに対して真正面から取り組んである、意欲的な歌だと思いました。ほかの方の評にもあるように音を楽しむ歌でもあると思います。下の句をどう取るかが難しくて、「帰らないもの」という名詞と「変わらないこと」という名詞が並列してある状態なのですが、この下の句の前に一字あけされているのが影響しているのか、並列が機能していないような感じがするのです。四句と結句のあいだに助詞を補いたくなるというか。ぷつりぷつりと音が途切れている感覚になってしまって、音を楽しむという点でも楽しみきれないのかなあと思いました。この歌の意味なのですが、ふと思い出したのが「便りがないのは元気な証拠」という、よく言われる言葉でした。深読みになってしまいますが、そこからこの歌は、故郷が帰ってこない者を呼び寄せているような歌のように感じられました。
荻森美帆
★0
ド変態幼児のはやとくん二歳五臓六腑に君をつれゆく
出詠名
ポヨとして童貞 from じゅごん歌会徳田弓華 × 平田窒素
33席 / 3点 特×0 並×3 次×2
互選名 貝澤駿一はだしWPP萩野聡安堂霊
選評名
幼児をド変態にするならば相応の下の句を期待してしまいます。
青木健一
★0
笑いました。これはおそらくはやとくんに限らず、幼児というものは本質的にド変態であるということを思い起こさせながら、人間の(とくに男の)本質に鋭く切り込んだ歌なのではないでしょうか。冗談でもそういう読みができてしまいそうなところに面白さを感じます。
貝澤駿一
★0
主体ははやとくんでも君でもなくて、はやとくんを「ド変態」と呼んでいる立ち位置。初句に「ド変態」という強い言葉を置いたインパクトを歌として回収できているかというと、うーん……、二、五、六という漢数字の並びとともに、インパクトだけの歌のようにも見えます。
「二歳」と言うなら「幼児」はいらないかも。また「つれゆく」という結句もちょっと無理やり感があるように思います。
泳二
★0
祈られる栄光恋し身を切られ弁当箱に成り下がり今
出詠名
攝政と浮世絵師聖徳太子 × 石勇斎朱吉
34席 / 1点 特×0 並×1 次×2
互選名 はだし中牧正太平田窒素
選評名
木材の歌? 弁当箱が特に成り下がりとも思えませんし、意味が分かりませんでした
青木健一
★0
「祈られる栄光」だから、御神木でしょうか。そうだとするとお弁当箱は「成り下がり」でしょうが、少し分かりにくいかなと思います。
薄荷。
★0
「祈られる」で就活の歌かと思ったんですが、どうなんでしょう。就活の歌だとしても「弁当箱」にどこで繋がるのかわかりかねました。祈られる栄光さえ恋しくなるのはある種のパワーワードというか、同情したくなりますし、意味が理解できなくとも弁当箱に入ってあげたいです。雰囲気が好きな歌です。
平田窒素
★0
この歌はなかなか読み取れなかったのですが、もしかしたら折り紙の歌なのかなと勝手ながら思いました。祈られる、というのが折り鶴っぽいかなというのと、折り紙で箱を作ることもあるなあというところから考えたのですが、読み取りきれた感じはしなくて、すごく考えてしまいました。この歌は意味を考えずに韻律を楽しむ歌なのかもしれません。
荻森美帆
★0
杉や檜が経木となることなく、折詰になってしまったことを嘆く歌だと思いました。最後の「今」という時間の表し方ですが、具体的な季節にしても面白いのではないかと感じました。
とよよん
★0