秋分の歌会
夢で会う約束がある 傘立ての底にうまれた夜のみずうみ 久藤さえ × 西藤智
二人一組で短歌一首を詠む歌会 『R-2ぐらんぷり』2015-秋
詠題『 新 』
詠草リスト
特選(2点)×1票 |
並選(1点)×3票 |
次選(0点)×∞票 |
かなしみを知る新聞が包み込む花瓶であった硝子の破片
出詠名
栓抜きデモクラシー死んでる死刑囚 × 多田なの
首席 / 36点 特×9 並×18 次×7
互選名 蓮木曜何某宇野なずきアキヒニ佐藤博之村田一広ミドリ月骨尾鷲明希404notF0816たかはしりおこ中牧正太稲垣三鷹坂本 樹村田馨気球雀來豆楓ようこ須磨蛍みちくさなべとびすこえんどうけいこ静ジャック悠泳二小川けいと双葉屋ほいるまな!きつねにしだゆいもも種子島鉄男すいきい
選評名
ガラス製の花瓶が割れてしまい、破片を古新聞で包んだ。状況はこんなところであるが、「かなしみを知る新聞たなどのように解釈するか。花瓶が割れたことを知っているのか、かなしい記事が書かれた新聞か。いずれにしても哀しみがかもし出されている、結句は字余りになっても「を」を入れたい、
村田馨
★0
日常の中のふとした感情が静かに詠まれていておもしろい。けれども、「かなしみを知る」のが「新聞」なのか「破片」なのか私であるのか、判然としない。ここを整理するとずっと良くなると思う。
菊池あき
★0
「かなしみを知る新聞」という表現を悲しい記事を載せた新聞と読みました。この表現がいいと思います。ただ、人によっては読みが変わる点がこの歌の難ですね。
404notF0816
★0
割れた花瓶を片付けるために使っている新聞にかなしみを負わせているのだと思います。新聞、花瓶、硝子、破片とメッセージ性のある名詞が並んでいるので、少しぶつかっているようにも感じました。うまく整理すると立ち上がってくるのではないでしょうか。
太田青磁
★0
花瓶は割れた瞬間、硝子の破片に変わる。当たり前のことですが、よく考えればおそろしいこと。私たちも、死んだ瞬間、人間から死人に変わる。
その事実の突きつけだけだとこわい短歌になってもおかしくない。
でも、「かなしみを知る新聞が包み込む」というやさしさが暖かい。
日常的な光景にあるドラマを感じられてとても好きです。
なべとびすこ
★0
廃村を告げる活字に桃の皮ふれればにじみゆくばかりなり来て(東直子さん)
を思い出しました。廃村、活字、という具体性そして結句の鮮やかな転換によって緊迫感があるように、もっと丁寧に内容に踏み込むことで歌が引き立つような気がします。
悲しみの内容がぼんやりしてしまうし、花瓶であったことも、破片も悲しさに徹していてしぼんでいくのが残念です。
気球
★0
よい歌だと思います。新聞には悲しい記事が書かれていたのでしょう。花瓶が割れたかなしみは全く別のもののはずですが、一方が一方を包み込む。そこに感じる優しさは主体の優しさだと思います。
泳二
★0
普段は気にとめない日常の一面を切り取った、面白くて綺麗な句だと感じました
まな!
★0
初めての経験なのでとても嬉しいです。
ありがとうございました。
死んでる死刑囚
★0
ぼくはまだ地球の人だ新しい靴と希望を失くしただけだ
出詠名
空に浮かぶ子供雀來豆 × 月骨
2席 / 30点 特×6 並×18 次×9
互選名 蓮死んでる死刑囚アキヒニ佐藤博之村田一広村上ゆひら菊池あきミドリLoufock小早川尾鷲明希404notF0816たかはしりおこ中牧正太村田馨景麒フジタレイナイス害東風木村友秋山生糸なべとびすこ太田圭えんどうけいこ大木はち悠雪泳二にしだゆい下弦種子島鉄男悠佳里すい
選評名
「まだ地球の人」と言っているのだから、いずれは地球外に移住することを暗示させているのだろう。単なる夢物語として言っている訳ではないという強さを感じる。「新しい靴」と「希望」は同じことを繰り返しているように思える。
村田馨
★0
今回のR-2ぐらんぷりに出された歌を見て一番に思ったことは、歌題とは直接関係ないのに靴を詠みこんでいる歌が複数あるなということでした。この歌の中に出てくる靴は特に印象的で、「ぼくはまだ地球の人だ」と強く宣言している主体にとって新しい靴とはどれほど大きな存在なのだろうと考えさせられました。希望と並んで失くしたものに挙げるって相当重要ですよね。歌に込められた意味を正確に理解することは私にはできませんでしたが、一番印象に残った歌でした。
多田なの
★0
「靴」と「希望」を並列してしまうのが面白いと感じました。「希望」をなくすことは絶望すること、「靴」をなくすというのはそれを探しに行く手段すらなくすということですが、「ぼく」はそこで視線を一気に高くして、地球人だからまだ大丈夫と持っていく、挫けない強さがある。それを更にちょっとユーモラスな感覚で持って描いており、したたかさを感じる歌になっている。
菊池あき
★0
一読して不思議な魅力を感じさせてくれた歌でした。先に書かれた方のコメントにもあるように、絶望をあえて軽い言葉と表現で歌っているところが魅力になっていると感じました。
Loufock
★0
新しい靴と希望が何かの暗示なのかなと思いましたが捉えきれませんでした。まだとだけの限定が抽象度を上げているようで、イメージが掴みきれませんでした。SF的な感覚か災害のような非常事態なのか、視点は鋭いと感じました。
太田青磁
★0
飛び降り自殺なのかなと読みました。暗っ!!!
ナイス害
★0
新しい靴と希望はほぼ同義と取って良いような気がします。「地球の人」であることは主体にはどのような意味を持つのでしょう。明示はされていませんが、それは、希望よりも基本的な力になる何か、というような気がします。靴がなくても歩いていけると主体は感じているのかもしれません。リズムが良く不思議に元気が出る歌でした。
秋山生糸
★0
「新しい靴」が比喩なのか本当の靴なのかどうかはわからないけど、新しい靴と希望を無くすことが、その人にとってどれだけ大きな揺らぎだったのかということを感じされる上の句。
普通に言えば希望を無くす→目の前が真っ暗になる、とかのイメージなんですが、それを「ぼくはまだ地球の人だ」と、自分の存在を確かめてるように思えます。
でも地球の人で無くなるときって死ぬときなのかな、と思うと、希望は無くしても生きている、という生の確認なのかなーとも。
なべとびすこ
★0
新しさがあると感じました。「地球の人」ではなくなってしまうかもしれないという主体の不安感がそこはかとなく匂ってきます。「地球の人である」という当たり前のことですら危うくなっている主体は「新しい靴と希望」を失くしてしまったと告白しており、淡々とした口調でありながら主体の虚しさが出ている歌だと思いました。
「だ」が続くのは勇気のいる書き方だと思うのですが、この歌ではリズムが出ていて結果的に口ずさみやすくなっているように思います。
木村友
★0
「まだ地球の人だ」という点におかしみがあります。歌意はわかるのですが、『僕はまだ地球の人だ○○と○○を失くしただけだ』と考えた時に「新しい靴」と「希望」で良かったのかな、とひねくれて読んでしまいました。
泳二
★0
「ぼくはまだ地球の人だ」という出だしがいいと思いました。「地球」という単語を出すことで自然と宇宙をイメージさせます。「まだ」という言い方から、「地球の人」ではなくなる状態、つまり宇宙に放り出されて途方に暮れた様子も伺えます。途方に暮れてはいるんだけど、まだ地球から放り出されたわけではない。そこにかすかな希望のような、こだわりのような、いっそ放り出されてしまえばよかったのにという絶望のようなものがないまぜになった感じを受け取りました。ただ、「新しい靴」と「希望」の並列は少し平凡かなと思いました。
にしだゆい
★0
どこかには〈きみのせかい〉と書いてある新宿駅の無数の出口
出詠名
いとまき秋山生糸 × 中牧正太
3席 / 29点 特×7 並×15 次×13
互選名 蓮佐藤博之多田なの村田一広村上ゆひら知己凛小早川尾鷲明希404notF0816たかはしりおこ坂本 樹村田馨気球雀來豆楓ようこ須磨蛍ルオみちくさ木村友なべとびすこオリーえんどうけいこ悠雪泳二June小川けいとまな!きつね文月郁葉にしだゆい下弦悠佳里すいきい
選評名
新宿駅って迷路みたいにたくさん出口がありますよね。どこで待ち合わせているのでしょうか。アルタ前?ミロード?「きみ」に会える待ち遠しさが伝わってきます。
蓮
★0
新宿駅西口コインロッカーの中のひとつは海の音する (山田富士郎『アビー・ロードを夢みて』)を思いだします。都会の幻想。
村田馨
★0
最初に読んだときは、新宿駅とは比喩で、どこかに自分の行くべき道がきっとあるという主体から「きみ」へのエールなのかと考えました。けれど他の方の評を見て、〈きみのせかい〉へと行くのは主体の方だという捉え方にも気付きました。おそらくそちらの方が正解ですね。その場合、〈きみとのせかい〉ではなくあくまで〈きみのせかい〉なのが読むときのポイントになるのかなと思いました。二人で待ち合わせて会うというよりは、主体が相手の住んでいる町にお邪魔するような感じでしょうか。主体と「きみ」は恋人同士だと思うのですが、自分の世界と相手の世界は別物なのだというニュアンスも感じられ、主体と「きみ」の間に若干距離感が生じてしまうようにも思います。
多田なの
★0
〈きみのせかい〉に生きたいという願いと、それは叶わないという思いが感じられます。「きみ」も詠み手も新宿駅の利用者で、そこに行けば「きみ」の欠片を見つけられるのだと思いました。「きみ」と詠み手は恋人同士だとおもったのですが、きっと別々の道を歩むのだと解釈しました。
村上ゆひら
★0
新宿駅は、俗にダンジョンとも言われるように、複雑な構造を持っている。その中に非現実的な世界があるという幻想性と、「きみ」のための世界があって、君は受け入れられてるんだという優しさがこの歌の美点だと思う。しかし、「〈きみのせかい〉」と書いてあるのでは誰の世界なのかわからないのではないか。(固有名詞)の世界となる筈ではないのか。
菊池あき
★0
新宿駅の出口は迷いますよね。路線や目的地によって使う出口を分けたりしているのですが、出口ごとに、世界が変わる感じはおもしろい着想だなと感じました。〈 〉は工夫された表記なのでしょうが、きみのせかい、はやや既視感のある表現だと思います。
太田青磁
★0
新宿という大きな駅の持つ幻想感や途方の無さが巧く詠まれていると思います。ただ、〈きみのせかい〉という表現が、良くも悪くもこの歌の核になっているのでしょうが、かな書きであることを含めて、もうひとつ力を持ち得ていない気がしました。初句も、おなじようにひらかなであることで、余計に歌のイメージを希薄なものにしてしまっているように感じます。
雀來豆
★0
「きみのせかい」について、主体の「せかい」もあれば、主体が思う誰かの「せかい」もある、無数の誰かのための「きみのせかい」がある、というように解釈致しました。賛否両論あるようですが、私個人としてはかな文字が今まさに誰かのために作られていく世界を示しているようで好きです。上京して初めて新宿駅を訪れたときの、不安と高揚感の混ざった心地を思い出しました。
ルオ
★0
ドラクエ感。個人的には東口のアルタ前のあたりがワクワクします。「きみのせかい」は南口かな。何があるのか探したくなるあの感じが。なんて考えるのが楽しいあの歌です。
小早川
★0
初めて新宿駅に行ったとき「なんだこのダンジョン…?!」と思った記憶があります。無数にある出口はそれぞれどこかの「場所」に繋がっているのに、駅の入り組んだ構造や人の多さが行く手を阻む障害物のように感じられて。でも「出口」は障害物を乗り越えた先の「光」のように見えたので、私は上京してきた人を応援する歌に感じました。「きみのせかい」はその人自身の「夢」に思えました。
オリー
★0
新宿駅とえいばダンジョン、にしても実際にはどの出口から出ても新宿界隈なわかですが、ひとつぐらいその人にしかたどり着けない出口があるのかもしれない。新宿という場所もこれから未知の世界に踏み出すイメージがあり希望を感じさせます。
泳二
★0
新宿駅に行ったことのある人ならだれもが光景を思い浮かべられるのではないでしょうか。
複雑な構造をした駅の中でもみくちゃにされながら歩いていると、「きみのせかい」への入り口もどこかに開いているのではないかとつい想像してしまう、という心境を詠んだ一首だと思いました。
なので、「きみ」とは主体のことで、ゲームの主人公さながら込み入った場所にいる主体に対し何者か(プログラム?)が呼び掛けているような「きみ」ではないかと思いました。
また、新宿駅に行き交う人々が皆それぞれに自分の世界を持っているということの暗示として読めば、希望と寂しさが両方感じられます。
木村友
★0
一晩の幻でした新聞が靴の底から吸い込んだ海
出詠名
しんしゃかいじんずたかはしりおこ × にしだゆい
4席 / 24点 特×4 並×16 次×8
互選名 宇野なずき佐藤博之村田一広村上ゆひら知己凛ミドリ尾鷲明希404notF0816中牧正太稲垣三鷹村田馨雀來豆須磨蛍みちくさ東風木村友秋山生糸悠雪June小川けいとまな!きつね文月郁葉下弦もも種子島鉄男きい
選評名
嵐の夜のようなイメージが浮かびました。土砂降りの中で帰宅して、濡れた靴の水分で新聞紙がゆっくりと湿っていくような。静かな雰囲気がいいなと思いました。
宇野なずき
★0
雨で濡れた靴を乾かすために新聞をなかに突っ込んだ。何ということもないありふれた日常生活から汲み出されたポエジー。海を登場させたのがうまいが、それ以上にスパッと二句切れで表現した点に惹かれる。
村田馨
★0
海はそのまま海水かなと思いました。夜の海で何かドラマチックな出来事があったのでしょうか。けれど家に帰り、海で濡れた靴へ新聞を詰め込んでいくうちに段々と気持ちも冷めて、その記憶が「一晩の幻」であったかのようにぼんやりとしてしまう主体を想像しました。「でした」という口調からも、出来事に対してもう他人事であるかのように思っているという印象を受けました。
多田なの
★0
その一晩の出来事がもう少し具体的に見えたらさらによかったと思うのですが、新聞紙が海を吸い込むという描写がいいですね。この世で最も大きなものの一つである海を小さく表現することで、孤独や喪失感、さびしさがうまく描かれていると思いました。
中牧正太
★0
新聞紙が「海」を吸い込むというのは優美で、昨晩の名残をほんのりと滲ませてくれると思い、たいへん心惹かれた。けれども、そのように昨晩の名残が新聞紙の中にわだかまっているのに「幻でした」と言い切ってしまっているのには大きな疑問符をつけたい。繊細な詩情を感じさせてくれるだけに特に。
菊池あき
★0
海に靴を履いたまま入ると靴が水を吸って重くなり大変ですよね。主体は海(もしくはそれに準ずる水辺)に入ってしまって、靴に新聞紙を入れることで水分を吸いだそうと一晩おいたところを詠んだものと解釈しました。新聞紙が海の存在を知ることはないけど、海水を吸い尽くすまでの一晩だけ海を知ることができる。そのさまを「幻」としたのが素敵な歌だと思いました。
尾鷲明希
★0
濡れた靴を乾かすために、新聞紙に乗せておいたのでしょうか。海は何かのモチーフなのでしょうか。一晩の幻、がすごく強く響くので、どこかで着地がないと落ち着かない感じがしました。
太田青磁
★0
巧みに構成された歌だと思います。「一晩の幻でした」、という言い切りから始めて、結句の「海」まで、ていねいに歌われていると感じました。「海」が少し抽象的ですが、それも計算ずみの選択だという気がします。ただ、「一晩の幻でした」という表現は、ロマンス小説の台詞を思わせる点が惜しい、と感じました。
雀來豆
★0
どうしても一夜の恋として読めてしまうので、安く感じて残念です。湿った靴を古新聞にあげておく行為はささやかで人間くさくて美しい。その心配りが丁寧な暮らしをしている主婦、が浮かんでしまうのでイメージがいけないのでしょうか。
気球
★0
濡れた靴を新聞紙で乾かす、という生活感のある流れなのに、全体的に幻想的な雰囲気を感じて印象的でした。その晩ベッドの中で寝ていた時もまだ海にいて、朝新聞紙の上の靴を見てやっと「一晩の幻でした」と現実に帰還したように想像しました。さっきまでそこにあったのに、もう随分遠くに行ってしまったような小さな喪失感があって好きな歌だな、と思いました。
東風
★0
新聞紙が吸い取る靴の湿気を「海」としたところが見事ですが、それを「幻」と言ってしまってはもったいないと思いました。
泳二
★0
海に行った後なのか、雨に降られた後なのか。いずれにしても新聞紙が海を吸うという言い回しや、一晩の幻に情緒があり、それでいて新聞紙で靴を乾かすという生活感のある風景を感じられるバランスが良いです。
文月郁葉
★0
海に行った後なのか、雨に降られた後なのか。いずれにしても新聞紙が海を吸うという言い回しや、一晩の幻に情緒があり、それでいて新聞紙で靴を乾かすという生活感のある風景を感じられるバランスが良いです。
文月郁葉
★0
新しいブーツで君を見上げれば触れそうなほど近い唇
出詠名
知球知己凛 × 気球
5席 / 21点 特×6 並×9 次×11
互選名 蓮宇野なずき菊池あきLoufock小早川月骨太田青磁たかはしりおこ中牧正太坂本 樹楓ようこ須磨蛍ルオ東風木村友秋山生糸えんどうけいこ大木はちJune文月郁葉下弦もも種子島鉄男悠佳里すいきい
選評名
新しいブーツを履いたから君に近づけたのか。ヒールが高かったことを示唆しているのか。「見上げる」という動作と「触れそうなほど近い唇」が矛盾しているように感じられるが。
村田馨
★0
いつもよりもヒールの高い新しいブーツを履いて、いつものように見上げたところ「君」の顔の距離がぐっと近づいたことに驚いている主体を想像しました。少女漫画や恋愛ドラマのような素敵なワンシーンですね。
多田なの
★0
底の厚いブーツをはいたら唇が近くなった。それが、下句の語順がいいのだろう、すーっとクロースアップされて唇が近くに見える、という風に自然に強調されて見えた。更に、「触れそうなほど」からキスの予兆を見せている。そのキスの一瞬前かも知れない緊張感が、体言止めの余韻とともに示されておもしろい。
菊池あき
★0
新しく買ったブーツのヒールの高さが君との距離をぐっと近づけているようで、動きが迫ってくるいい歌だなと感じました。触れそうなほど、がうまく効いています。唇が近づく高さを計算して選んでいるのかもしれませんね。
太田青磁
★0
新しくなったのはブーツですが、主体にとっては見上げた視界こそ新しくなった心地がしたのではと感じました。世界が鮮やかに切り替わる感覚がきれいに切り取られている気がしてとても惹かれました。「見上げれば」という一語で、元々身長差のある二人、おそらくはここまで距離が縮んだのは初めてなのではという推測が働き、ここからのドラマを想像したくなる歌でした。
ルオ
★0
いつもより高いヒールのブーツ。きっと「触れそうなほど」は大袈裟ですが主体にはそう感じられたのでしょう。
泳二
★0
絶妙な距離感が好きです。あと、男目線から主体の子を見ると最高に可愛いなあって、思いました。
坂本 樹
★0
勾玉の形に透ける己が身を新しき児は知らずに揺れる
出詠名
Nokton菊池あき × 文月郁葉
6席 / 21点 特×4 並×13 次×11
互選名 木曜何某宇野なずきアキヒニ知己凛ミドリ404notF0816太田青磁たかはしりおこ中牧正太村田馨気球雀來豆須磨蛍ルオナイス害東風太田圭オリー静ジャック悠雪泳二小川けいとまな!きつね下弦種子島鉄男悠佳里
選評名
胎児を勾玉に見たてたのは新鮮な発見。これから刻み始める「児」の歴史と、これまで歴史が刻み込まれた「勾玉」がうまくからみあっている。
村田馨
★0
新しき児とは胎児のことでしょうか。確かに勾玉のような形をしていますね。「透ける」や「新しき」という語がまだこの世に生まれてきていない胎児を表現するのにぴったりであると思いました。また、下の句の胎児自身はそのことを知らないという内容にはっとさせられます。自分の姿を知らない胎児が、母親の中でそれでも確かに生きているということに生命の不思議を感じます。
多田なの
★0
勾玉のかたちは胎児を模したもの、という説がありますね。前評のとおり、過去から現在、未来への時間の広がりを感じさせます。また揺れる、という結句は未来の揺らぎを思わせて素敵ですし、透ける、との音のつながりも良いと思います。
1点だけ難を言うなら、己が身を…知らず、というところで少しつまづいてしまいました。胎児は自らが過去を身のうちに持っていることにいまだ気がついていない、ということでしょうか。胎児の認識の問題にまで深入りしなくても良かったかなと思いました。
秋山生糸
★0
エコーに写る胎児を勾玉の形になぞらえたのでしょうか。新しき児を主体として、親としての喜びが伝わってきました。透ける己が身を、という表現も、音の調べも整っていて気持ちのよい歌です。
太田青磁
★0
胎児が羊水に揺られている様子ですね。まだ生まれていない、目も開いていない胎児は自分の形が勾玉のようだと知らないんですよね…自分のことを認識していなくても「生きている」という神秘や、胎児を慈しんでいる様子が読んである歌だなと思いました。「透ける己が身」の表現がとても綺麗です。
オリー
★0
胎児と勾玉は一見新鮮味はありませんが「透ける」は水晶や翡翠のような勾玉のイメージとエコー画像のイメージが重なって見事だと思います。結句の「揺れる」も子宮の中で浮かぶ様子と命の弱さと強さの両方が表れていて巧みだと思いました。
泳二
★0
ニューデリー 眠れぬ君の「お休み」が朝日となって届く新宿
出詠名
1Q97 BOOK2稲垣三鷹 × 坂本 樹
7席 / 20点 特×4 並×12 次×11
互選名 多田なの村田一広知己凛ミドリLoufock小早川月骨404notF0816たかはしりおこ景麒気球雀來豆須磨蛍東風秋山生糸太田圭オリーえんどうけいこ悠雪泳二まな!文月郁葉にしだゆいもも種子島鉄男きい
選評名
ニューデリーに滞在している君が「お休み」といってベッドに入ったが眠れない、そんな時間が時差の関係上新宿にいる私のところには朝になって届いた、という意味だろうか。初句のニューデリーと結句の新宿の対で詩情をはさみこむつもりのようだが、果たしていかに。
村田馨
★0
ニューデリーと東京の時差は3時間半。ニューデリーにいる「君」が眠れずにいる深夜だと、主体は朝を迎える時間帯ですね。その時差を単なる現象として扱うのではなく 「お休み」が朝日となって届く と表現しているのがとても素敵だと思いました。New Delhiと新宿のどちらにも歌題である「新」が含まれているのも面白い。歌題からの発想がすごいです。
多田なの
★0
「『お休み』」が「朝日」となって届くというのはとても美しい表現で、言葉が輝いて感じられるような二人の関係性も匂わせて素晴らしいと思う。けれども、初句の「ニューデリー」はどうだろう。名詞だけというのは何だか突き放した感じを受けるし、ニューデリーである必然性も感じられない。たとえ本当のことであったとしても、ニューデリーにいるリアリティがない。
菊池あき
★0
「朝のリレー」を思い出しました。『新』のお題で新宿とニューデリーを持ってきて地図上の配置通りに初句と結句に配置したのは新鮮で楽しい仕掛けですね。ニューヨーク等ではなくニューデリーなのも、スパイスの香りが漂ってきそうで好きです。気になってしまうのは、上の方が仰るように初句切れの唐突さと、この場合、新宿にいて「眠れぬ君」とおそらく会話を交わしていたであろう主体の方が実は一睡もできてないのではないかと。。
秋山生糸
★0
ニューデリーと新宿、ふたつの新しい都市を時差を使ってうまくまとめているなと感じます。太陽は東からのぼるイメージがあるので(実際は地球が回っているのですが)一日ずれているようにも感じました。
太田青磁
★0
時差があることを上手く詠んでいるなと思います。お休みが朝日となって届く、っていう表現も、やさしくて好きです。ニューデリーっていう初句も、響きのやさしさがあっていいかなあってわたしは思いました。
たかはしりおこ
★0
最初に読んだ時は「ニューデリー」が唐突だなと思ったのですが、時差のことだと分かって読み直すと、眠れない君がいる場所を計算してニューデリーにしてあるのだと分かって面白いなと思いました。「お休みが朝日となって届く」の表現が優しくて素敵だなと思いました。
オリー
★0
谷川俊太郎の朝のリレーを連想しましたし、「なんかこういうの見たことある」と思って受け付けなかったのですが、あとでニューデリーと新宿のどちらにも「新」があって、それが始めと終わりに配置されているということに気が付いて、それをとても面白く思いました。
きつね
★0
ニューデリーと新宿、どちらも「あたらしい」都市だけれど一方は「おやすみ」でこちらでは朝日。距離も時差もあるけれど優しい2人の関係が浮かび上がります。ニューヨークでもニューハンプシャーでも新大久保でもいいわけですがニューデリーと新宿が良いと思います。
泳二
★0
きみのいるスペースがない新居にはえげつないほど西日が入る
出詠名
歌集を俳句の棚に置くなチーム宇野なずき × 木曜何某
8席 / 16点 特×2 並×12 次×9
互選名 死んでる死刑囚多田なの村田一広村上ゆひら菊池あきミドリ月骨404notF0816稲垣三鷹坂本 樹村田馨雀來豆ナイス害秋山生糸太田圭悠雪双葉屋ほいるまな!文月郁葉下弦種子島鉄男悠佳里
選評名
きみのいるスペースがなぜないのか?新居にきみがいない(離別or死別)から。一緒に住んではいるものの、すれ違いの生活だから。自分のものが溢れてきみが入れないから。いろいろな状況があるでしょう。この歌だけでは特定はできません。「えげつない」という形容詞が、まさにえげつない。
村田馨
★0
おそらく元恋人であろう「きみ」がいない新居、射し込む西日。ここだけ見るとただただ悲しい歌なのですが、そこに入ってくる「えげつない」がすごく効いていて良いと思います。この歌には若干浮いている印象さえ受ける形容詞ですが、そのおかげで歌全体が暗くなり過ぎるのを防いでいるように感じられました。
多田なの
★0
「スペースがない」という表現は、「きみ」を失ったあるべきものがないという空虚感を上手く表出させていて優れていると思う。また、「えげつないほど」という表現からは大切なものを喪失し沈んだ気分の中で太陽光すら過剰に刺すように感じられることを、滑稽味を持ちつつ表れていて素晴らしいと思う。全体的には、おもしろい言葉を使いながらも無理なく1首がまとまっている。秀歌だと思う。
菊池あき
★0
ニ句で切れるのでしょうか。スペースがない新居と続くのでしょうか。二人で新しく住みはじめる家には、住んではじめて西日の強さを感じたのかなと。もしかすると君は人間ではない何かなのかもしれないなとも思いました。
太田青磁
★0
えげつないという言葉はある地方ではわりとよく言う言い回しでしょうか。テレビで関西の吉本の芸人さん(宮迫とか?)がよく言いますね。私は馴染みがないので、何となくふざけているような自虐的なところを笑い飛ばしている様子ととりました。荷物が片付かなくて彼女は入ってこられない、でも西日は入っちゃう、カーテンもまだついてないから。そんなあっけらかんとした風景でしょうか。
気球
★0
せっかくの新居は想像以上に西日がきつく、二人がゆっくり並んで座るスペースがない。その一人分のスペースを「きみのいるスペースがない」としれっという主体。それと「えげつないほど」という関西弁の面白さ。だと思いますがちょっとわかりにくいかも知れません。
泳二
★0
君がいた頃と変わった様子を
「えげつないほど」という言葉で表現したのが面白くて気に入りました。
死んでる死刑囚
★0
君がいなくて寂しいのに、容赦なく差し込む西日によって明るい室内。
とても対照的で印象に残りました。
部屋の片隅で膝を抱えているようなイメージが浮かびます。
悠佳里
★0
二人だけでやってた遊びが部となって手の中にある新品の冬
出詠名
沖縄の鳥まな! × ナイス害
9席 / 14点 特×5 並×4 次×11
互選名 木曜何某村田一広ミドリ小早川月骨404notF0816気球雀來豆楓ようこルオ東風なべとびすこ太田圭オリー雪小川けいと下弦もも種子島鉄男きい
選評名
何部なのだろう。新品の冬が良いですね。
木曜何某
★0
部がわかりにくいが、クラブ活動、部活動という意味での「部」なのだろう。二人だけで遊ぶということでヒントを提示しているのだろうが、あいにく想像がつかない。
村田馨
★0
「手の中にある新品の冬」は、歌中にある遊びに使う道具だろうと考えたのですが具体的に何なのかは思いつきませんでした。ここに少し疑問が残るので、「冬」が何を表しているのか読みきることができなかったです。けれど、歌全体、特に上の句の「二人だけでやってた遊び」から青春という感じがして、読んでいて爽やかな印象を受けました。
多田なの
★0
冬の遊びと言えばやっぱり雪遊びでしょうか?そう考えると手に触れるのは新しく降り積もった輝く新雪だと思いますが、「新品の冬」という表現がその新鮮でしゃんとした手触りを感じさせてくれてハッとさせられます。惜しむらくは、具体的な情景が浮かんでこないことと、上2句がぶっきらぼうなこと。
菊池あき
★0
何の遊びでしょうね。卓球かな。小学校の教室の机でいつも卓球遊びをしてた友だちと、中学に上がって一緒に卓球部に入った、みたいなことなのかなと思ったのですが、それだったら春ですよね。前評の方と同じく「冬」が読みきれませんでした。
中牧正太
★0
あやとりか編み物かなあと思いました。熱中しているうちに仲間が増えて、気づけば手の中には真新しいセーター。深読みしすぎでしょうか。
秋山生糸
★0
私は手品だと思って読みました。手の中にある新品とはなかなか言わない表現。ですが、驚くようなものが次々出てくる楽しさわくわくが間に入っていると考えたら楽しくなってきました。ふたりの熱意が広がって部になったような、冬の活気ある学生たちが浮かびました。
気球
★0
部は部活動でしょうか。実体験に基づいた歌であればよい着眼点だなと感じました。二人だけでやってた遊びと新品の冬がなにを表しているのかが掴みきれず、もう少し遊びそのものがイメージできると伝わってくるのかなと思います。
太田青磁
★0
すごく好きな歌です。「新品の冬」の言い回しがいいし、リズムも心地よい。何かを作る部なんでしょうね。評を読んで「編み物」に膝を打ちました。新しいマフラーとか作ったのかな。個人的には短歌でもいいかななんて思いました。歌集ができちゃったのかもしれません。
小早川
★0
「新品の冬」がいいですね!今までは二人だけでやってたことが部になって初めて迎えた冬、部員と過ごす初めての冬…新しく始まった部が迎える「特別」が「新品の冬」に詰めこまれてるように感じました。
オリー
★0
わたしは「新品の冬」がわかりませんでした。わからないというか、表現として良いと思うのですが、この歌の結句として置かれる言葉なのかな、という感じ。
泳二
★0
最初は遊びだったことが部活に変わった瞬間に、今までの新鮮な楽しさや喜びが失われてしまうということもぜんぶ悟っているという意味が「新品の冬」に込められているのではないなと思いました。
村上ゆひら
★0
先ほどの文章には誤りがありました。こちらが正しいものです。
最初は遊びだったことが部活に変わった瞬間に、今までの新鮮な楽しさや喜びが失われてしまうということもぜんぶ悟っているという意味が「新品の冬」に込められているのではないかと思いました。
村上ゆひら
★0
新しい鳥のようだと味噌を溶く母の背中に素粒子を説く
出詠名
太鼓餅小早川 × 東風
10席 / 14点 特×3 並×8 次×10
互選名 宇野なずき知己凛月骨太田青磁中牧正太村田馨気球須磨蛍太田圭オリー静ジャック大木はち悠雪泳二双葉屋ほいる文月郁葉下弦もも種子島鉄男きい
選評名
ノーベル賞受賞の話題もあったのかもしれないが、素粒子が唐突で、どう受け止めていいものだろうか。作者は素粒子の専門家で、内容を知らない母に説明しているのかもしれないが。「新しい鳥」と味噌を喩えるのも、しっくりこなかった。「溶く」「説く」の押韻がどこまで効いているか。
村田馨
★0
「溶く」と「解く」によって読んでいて心地よいリズムが生み出されています。同じ「とく」でも、一方は味噌汁を作っていてまたもう一方は素粒子について語っていて、というように行動に大きな違いがあり、それが強調されているようで面白いです。既に出ているように、素粒子はノーベル賞受賞の話題から出てきたのかなと思いました。
多田なの
★0
最初は「新しい鳥?」「素粒子?」と思っていたのですが、「ニュートリノのことか!」と気づいてからはすごく好きな歌になりました。加えて「溶く」と「説く」で韻を踏んでいるのもうまいと思います。難しいことを適当に聞き流している母の姿が浮かび、微笑ましい気持ちになりました。
宇野なずき
★0
「新しい鳥のようだと」が何処にかかるかちょっと不明瞭ですが、「説く」の方にかかるのだと見ました。まるで空を自在に美しく飛ぶ鳥のようだということは、大変わくわくして夢見るように語っているのでしょう。更に、味噌を溶くという日常性の中にある母とのギャップがほのぼのとして素敵です。とくが繰り返されているのもおもしろい。
菊池あき
★0
母:ねえタカシ、この人何の研究でノーベル賞とったの。
タカシ:ニュートリノだよ。
母:(味噌を溶きつつ)なんか新しい鳥みたいね。
タカシ:いや鳥じゃなくて素粒子だよ。つまり宇宙から……
みたいな会話を想像しました。うちの母が言いそうです。
中牧正太
★0
ニュートリノ→新しい鳥という発想はあまりにぶっ飛んでいて可笑しかったです。
村田馨
★0
新しい鳥の比喩はニュートリノからでしょうか、素粒子のことをなんともわからないものとして捉えているように取れていいなと思いました。味噌を溶くと素粒子を説くが掛かっていて、しみじみとした歌の中に技巧が凝らされているのが印象的でした。
太田青磁
★0
母というのはだいたいおおざっぱですよね。初めは意味が分からなかったのが、他の方の評で繋がってようやく分かったのですが。説くという息子(娘かも)の態度が律儀で賢そうで、その様子も想像できて楽しいです。歌を楽しむためにやはり広くアンテナをはっておかなくてはと気づかされました。
気球
★0
唐突に「素粒子」が出てきて、なんでここで…?と思ったのですが、「ニュートリノ=新しい鳥」だったんですね…!答え合わせが最後にきてたとは最初気づきませんでした。ご飯を作りながらニュースから聞こえてきた「ニュートリノ」を拾ったお母さんに子どもが説明している図が見えると、家族の仲のよさなんかも見えて素敵な歌だなと思いました。溶くと説くの韻もいいなと思いました。
オリー
★0
とても良くできた歌で、母親と主体の親子漫才のような関係が見事に詠まれていると思います。ぜいたくを言えば欠点はうま過ぎたところでしょうか。
泳二
★0
一番目に書いた者です。解説があったから理解できますが、歌だけで何も解説がなくても分かりますか?そこまで読者にやさしい作とは思えません。
村田馨
★0
のぞみ号のアイスの上の星たちよトンネルを抜け夜空に帰れ
出詠名
夢がムラムラ村上ゆひら × 村田馨
11席 / 12点 特×1 並×10 次×5
互選名 木曜何某多田なのミドリ月骨尾鷲明希稲垣三鷹景麒フジタレイ雀來豆みちくさ東風太田圭文月郁葉にしだゆい下弦きい
選評名
のぞみ号のアイス、調べてみたらとてもお洒落で可愛いパッケージなのですね。この星たちが連なってアイスの上からトンネルを通って空へと昇っていく動きが映像として見えるようでとても美しいです。暗いトンネルや夜空の中で煌々と輝く星たちの光まで想像させられました。そのまま「新幹線」ではなく「のぞみ号」と詠みこんでいるのも良いですね。平仮名が多くなり雰囲気が柔らかくなって、歌の内容にぴったりです。
多田なの
★0
実際にこんなことはある訳がないだろう、そうやって読んでいたのだけれど、だんだん本当に星がアイスから抜け出して夜空に浮かぶような気がしてきた。一つくらい星がなくなっても、また夜空に増えても、多分気付かないだろう。こう思わせてくれるのは、具体的な状況が過不足なく描かれているからであり、また、さも当たり前に起こりうることであるように命令形でしめられているからであろう。
菊池あき
★0
のぞみ号を新幹線だとすると題詠としてはやや距離があるのかなと思います。アイスの上の星は、冷凍庫に入れておくとできる霜のようなものかなと思いました。新幹線で食べるアイスはなんだか特別な気分になりますね。
太田青磁
★0
この歌の突き抜けたような明るさがとても好きです。「新」という題詠としてはどうか、という気が一瞬しましたが、この歌の持つ柔らかさと楽しい雰囲気で、その辺りはカバーできるのではないでしょうか^^。
雀來豆
★0
のぞみ号で売られているアイスの蓋には星印が描かれているんですね。着眼点が面白いと思います(「の」を三つ重ねる点は気になりますが)。しかしその星たちに「トンネルを抜け夜空に帰れ」はよくわかりませんでした。トンネルは何かの象徴でしょうか。
泳二
★0
「夜空に帰れ」という表現から、この星たちは昼のあいだ人間が空から取ってきちゃったものであって、トンネルを抜けるとそこは夜だから星は夜空(本来の星の居場所)に帰りなさい、または、帰っていいよ、と呼びかけているのかな、ということを考えました。
また、他の方の評でパッケージだと知る前は「星」はアイスの表面のキラキラのことで時間が経つと消えてしまうことを言ってるのだと想像していました。
稲垣三鷹
★0
空仰ぐ新人投手をちらと見て白球を追ふラツパの響き
出詠名
no-name佐藤博之 × 蓮
12席 / 9点 特×1 並×7 次×6
互選名 ミドリ月骨太田青磁たかはしりおこフジタレイ雀來豆楓ようこルオ太田圭静ジャック大木はちJune種子島鉄男すい
選評名
いささか盛り込み過ぎか。新人投手が空を仰ぐ―打たれたのであろう―ということと、その白球を追うこと。さらにラッパの響き(応援)まである。「サブマリン山田久志があふぎみる球のゆくへも大阪の空」(吉岡 生夫『草食獣―勇怯編』)という名歌を思いだす。
村田馨
★0
空の青、白球の白、そしてラッパの金の色の組み合わせが爽やかで、歌中の新人投手がとても眩しく感じられます。野球を詠む歌において観客がボールを目で追う動きを使うことは多々ありそうですが、この歌ではラッパの響きにそれをさせているのが面白いです。力強いラッパの音が想像できて、臨場感のある歌に仕上がっていると思いました。
多田なの
★0
個人的にラッパの音はプロ野球よりも高校球児のイメージが強いので、「新人投手」との違和感がありました。
ラッパが響くという事は、打った方へのエールなので、新人投手は滅多打ちな感じですね。ちらと見て響かせるってところが、ちょっと意地悪な感じも受けました。
知己凛
★0
いまはプロ野球では鳴りものは禁止されているんでしたっけ?昔はいわゆる私設応援団が自在にラッパでちょっと外れた音階を鳴らしながら応援していたものですが。学生野球や社会人野球で活躍するブラスバンドは一致団結、乱れのない響きを奏で、本作の「ラッパ」という言葉とはちょっとニュアンスが違うように思いました。
村田馨
★0
空、新人投手、白球、ラッパとたたみかけるような力が感じられるところが魅力でしょうか。好きな歌です。爽やかな後味があります。逆に、盛り込みすぎの感があるところが惜しい点です。
月骨
★0
野球応援といえばトランペットの音が鳴り出しそうなイメージです。奏者の視点なのでしょうか、中継のテレビ画面の動きにも見えておもしろいです。新人投手はやや硬い響きですが、題の読み込みに苦心されたのかなと感じました。
太田青磁
★0
それこそ90年代の、まだ広島市民球場を思い出します。懐かしいなぁ。鳴り物がオッケーだった頃の話。旧仮名がいい味を出しています。
大木はち
★0
「ラッパの響き」に収束するつくりですが、最初の方の評にあるようにやや要素を盛り込みすぎてせっかくのシーンがごちゃごちゃしてしまったように思います。
泳二
★0
新しく覚えたみつあみ結んだらかすかな声で猫の名を呼ぶ
出詠名
ういろうみかん大木はち × 404notF0816
13席 / 8点 特×2 並×4 次×3
互選名 菊池あきLoufock太田青磁坂本 樹ナイス害静ジャック悠きつね種子島鉄男
選評名
おぼえたばかりのみつあみを自分の髪の毛で編んだ少女なのだろう。見てもらう家族、友人がいないから猫を呼んだということか。しかもかすかな声で。孤独を感じさせる歌だ。
村田馨
★0
覚えたての三つ編みをして、本当は誰かに褒められたいのだけれど恥ずかしくてこっそり猫だけに見せようとする、内気な可愛らしい女の子を主体として想像しました。かすかな声は、猫以外に見つかってしまわないようにでしょう。上の評にあるように孤独も少し感じられますが、それ以上に少女の密かな楽しみに微笑ましくもなりました。
多田なの
★0
三つ編みをした髪で猫をじゃらそうとしているのかな?と読みました。
髪の毛で猫を遊ばせると怒られちゃうから、ちいさな声で呼んだのかなとも。ベッドの下にかくれておいでおいでしてるような、そんな雰囲気です。前の方の評のように、微笑ましい感じを受けました。
知己凛
★0
みつあみを結んでいるということは、これから出掛けるなり人に会うなりするのだろう。きっと朝の光景だなと思われる。だからこそ、かすかな声で猫を呼ぶのだ。朝の静けさを破らない少女の繊細な感性が表れている。しかも、その姿は朝日の中にあるのかもしれない。美しい。
菊池あき
★0
上の句と下の句の距離感がいいなと思います。ひらがなにひらかれたみつあみが、覚えたての情景を包み込んでいるようで透明感を感じました。覚えたみつあみ、の字余りと助詞の欠落はうまくリズムが補っているのでそれほど気になりませんでした。
太田青磁
★0
三つ編みというといわゆるおさげを連想してしまいがちですけど、そうではなくてオシャレな三つ編みなのではないかと思いました。デート(とは限らないですけど)の前にうきうきしながら髪を編んで、動物を飼っている人はわかるかと思うんですけど、嬉しくてつい用もなく猫を呼んだ、そんな様子が浮かびました。そんな女性の嬉しさを感じる歌でした。
呼ばれた猫がどんな反応をしたのかも気になります。
きつね
★0
ほんとはお出かけやデートに結んで行きたいんだけど、(いまのところ)猫にしか見せられない、可愛らしい歌だと思います。「かすかな」や客観的な表現のように思いますので少し違和感があります。
泳二
★0
一番目に書いた者です。まず、みつあみとおさげが別物ということは想像できませんでした。それから、本作から主体が朗らかな、はずんだ気持ちになってるとは考えられないのです。「かすかな声」がそう感じさせます。おめかしして出かける様子なら鏡に向かいそうなものですが。いかがでしょう。猫に見てもらうものなんですか。
村田馨
★0
覚えたばかりということなので、鏡の前で編んでいるのだと思います。そして自分は見せるために猫を呼んだのではなくて、呼んだことに意味はなくて、ただ呼んでみただけだと思いました。
かすかな声でという点は、うきうきしているのを家族にさとられたら気恥ずかしいからかもしれませんし、ねこが驚かないようにかもしれないと経験上そういうふうにすんなりと思ったのですが、たしかに寂しい印象も受けますね。
きつね
★0
ただいまとお土産持って帰ろうかあの子の好きな新幹線で
出詠名
ルオリールオ × オリー
14席 / 8点 特×1 並×6 次×4
互選名 死んでる死刑囚宇野なずきLoufock月骨太田青磁中牧正太景麒フジタレイ雀來豆太田圭もも
選評名
ただいま、お土産、帰ると類想語が並んでしまった。新幹線が好きなお子さんならばぜひ新幹線グッズをお土産に。
村田馨
★0
わざわざ一緒にいないあの子の好きな新幹線に乗って、お土産を持ってあの子のもとへ帰る。あの子とは恋人なのか、それとも親戚の子どもや一緒に住んでいない自身の子どもであるのか。いずれにしてもあの子に対する主体の愛情の深さや歌自体の暖かい雰囲気に読んでいてほっこりしました。
多田なの
★0
ただいまと言える人がいること、お土産、あの子、そしてあの子の好きな物。小さな幸せが積み重なった、読んでいてほっとするような歌だと思いました。ただ、ただいまと言えるような関係性なのにどうして「あの子」というちょっと突き放した言い方をするのだろう、一貫性がないように思われます。
菊池あき
★0
出張帰りの親の視点なのかなと思い強く共感しました。あの子は具体的にお子さんをイメージされているのかと微笑ましく読みました。起きている時間に帰れるといいなと感じました。
太田青磁
★0
あの子、と表現する距離感に実はドラマがあるのではと考えてしまいました。
気球
★0
「あの子」が子供だと読みました。はやぶさのおもちゃを是非。
小早川
★0
非常に分かりやすい表現で書かれている分、かえって歌の真意がとり辛くなっているように思えます。下句からは「あの子」が男の子であるような想像が出来ますが、初句にあえて「ただいまと」とした点や「帰ろうか」は簡単には帰れない旅のような印象を持ちました。複雑な背景を感じます。子供が待っている家に出張からお土産を持って帰ろう、というような歌意には読めませんでした。
泳二
★0
作者と「あの子」に距離を感じます。そういう家庭なのか、そもそも実子ではないのか。確固たる判断ができかねます。
村田馨
★0
新しい家族へ振る舞うお祝いの膳にひと匙、ふじの果肉を
出詠名
渋谷で出会った二人木村友 × 須磨蛍
15席 / 7点 特×1 並×5 次×13
互選名 知己凛ミドリ小早川月骨404notF0816太田青磁中牧正太村田馨雀來豆東風太田圭オリー静ジャック大木はち悠双葉屋ほいる下弦ももきい
選評名
新しい家族。通常なら結婚か出産のどちら(あるいは両方)か。お祝いに膳が供されることはあるが、ふじの果肉がわからない。藤の花の果肉?そのような慣習がある地域なのかもしれない。
村田馨
★0
新しい家族は新生児、お祝いの膳はお食い初め、ふじの果肉は新生児に食べさせるふじりんごの果実であると考えました。調べてみたら、お食い初めで実際に新生児に食べさせるものとしてりんごなどを用意する人もいるとあったので。「ひと匙」と「ふじの果肉を」の間の一息に、子どもの健やかな成長を祈る親の想いがぎゅっと込められているように思います。
多田なの
★0
お食い初めですね。りんごの果肉はよくひと匙目に与えるものなので、情景がとてもよくわかりました。
ひと匙、ふじとなんとなく「ひーふうーみー(一二三)と続いていくような、そこにも成長への願いが込められているような気がします。
知己凛
★0
さらっと情景を読んでいるように見えてそれに終始しないのは、「ふじ」の象徴性と「果肉を」と動作が感じられる表現になっているからだろう。児の祝の膳に「ふじ」という優しい甘酸っぱさが重なって優しく情景を提示している。けれども、読点は必要だろうか?僕にはもったいぶっているようでむしろいやらしく感じられる。
菊池あき
★0
ああ、お食い初めか。なるほど。「新しい家族」はお嫁さんと思ってしまいました。「ふじ」もりんごの品種ですね。藤の実って食べられるんか、とそっちばかり気になっちゃいました。一番目の評の方とお友達になれそう。
中牧正太
★0
一番目に書いた者です。「ふじ」がリンゴのふじとは気がつきませんでした。なるほどね。
村田馨
★0
ふじは林檎でしょうか、お祝いの膳からお子さんのはじめてのごはんなのかなと思いました。ちょっと硬い言葉が並んでいるのが気になりましたが、やさしい雰囲気が伝わってきました。
太田青磁
★0
お祝いの歌にふさわしい優しさが込められた作品だと思います。「新しい家族へ振る舞う」という表現は、詠み手が「母」だとすれば、母の子に対する視点としては、やや硬くてそっけない気がしますが、結句の「ふじの果肉を」というやさしい言葉がそれを救っていますね。
雀來豆
★0
男性目線でしょうか。全体的に固いことが形式ばっているようで、赤ちゃんのイメージと離れてしまいます。句読点も私は気取っているように感じます。
気球
★0
新しい家族は生まれてきた子どもなんですね。他の方の選評を読んでお食い初めのことを知りました。お食い初めを知らなくても、お祝いの膳からそのような慣習があることは読み取れました。ふじの果肉は不死にも掛けてあるのでしょうか…?子どもへの祝福と成長を願う優しい歌だなと思いました。
オリー
★0
前評の不死に通ずるということで「ふじ」が選ばれているのだとすると、納得です。
村田馨
★0
お食い初めの様子かと思います、「ふじの果肉」と具体を持ってきたところが歌の実感を高めていて良かったと思います。「新しい家族」「振る舞う」「お祝いの膳」は回りくどくもったいない気がしました。
泳二
★0
聞いたことない夜想曲ひびかせて兵役へ行け恋人たちよ
出詠名
雨鉄雨森 × 鉄男
16席 / 7点 特×1 並×5 次×4
互選名 死んでる死刑囚アキヒニ月骨404notF0816稲垣三鷹景麒フジタレイ雀來豆太田圭すい
選評名
まず、新はどこか。「聞いたことない」で新を汲ませようとするには弱い。兵役は現在の我が国のことではないが、隣国をはじめ、他国では兵役に就くことは重大な問題。遠くない将来、日本でもそうならないとはいえないという昨今において、本作品は何を意図し、何を伝えたいのか。全体的に漂う詩情だけでは訴求力に欠けると言わざるを得ない。
村田馨
★0
短絡的には、今の日本に警鐘を鳴らしているように読めます。ただ、歌意だけを取れば、世界中の兵役制度を持っている国々共通であり、時間軸も過去未来に通じる汎用性のある歌と思います。国という大きな組織の目的のため個人に強いられる義務のやるせなさや不安を感じました。
軍靴ではなくノクターンと言う点は斬新ですが、眠りや落ち着きに通じる曲調と「ひびかせて」「行け」に違和感が少しありました。
須磨蛍
★0
前評のかたと同じく、お題の「新」が読み取れませんでした。
須磨蛍
★0
「聞いたことない夜想曲」から、新しく作られたということで歌題の「新」に繋がるのでしょうか。既に挙げられているようにそこが若干弱いように思います。その夜想曲のメロディーがわからないので既存の夜想曲をいくつか聞いてみましたが、「兵役へ行け」という力強いメッセージには少しそぐわないような印象を受けました。本当だったら誰かに愛されて平和に暮らすはずだった恋人たちが静かなメロディーの中列をなして兵役へ行くという光景は、一番上の評の通り詩情豊かであり個人的には好きなのですが。
多田なの
★0
聞いたことのない夜想曲、そこに兵役を持ってきているのがおもしろく、一読してポエジーがあるなぁと感じた。しかし、読めば読むほど疑問点が増えていく。兵役に行くのはきっと朝からだと思うが、夜想曲でいいのだろうか。また、夜想曲のロマンティシズムというのは兵役に対して甘すぎるのではないか?それに、このような繊細な歌に「聞いたことない」という始まりはちょっと乱暴なのではないか。また、兵役という言葉を使うことの是非もあろうと思う。
菊池あき
★0
新は聞いたことのない曲に乗せているのでしょうか。恋人たちよ、と客体を複数にしながら兵役へ行けという重い言葉を乗せているのは、昨今の政治情勢への揶揄とも取れるのかもしれません。夜想曲はノクターンと読みたいです。
太田青磁
★0
「兵役へ行け」以外はロマンチックなお歌なのですよね。やはり、ここをどう読むか迷います。なにかの暗喩なのか、それとも政治情勢への危機感なのか。それが謎であり、独特の雰囲気というか色彩を全体に醸し出していて魅力です。でもやはりもう少しヒントが欲しかったとも思ってしまいます。
秋山生糸
★0
まず題詠としての評価は難しいと思います。また一つ一つの言葉は意味ありげなのですが、つながりが読みとれず作者の意図が汲めませんでした。「聞いたことない」「兵役へ行く」というような表現もやや拙いように思います。
泳二
★0
もう見ない君のTwitterもう知らない ひと月以上更新がない
出詠名
no-nameなべとびすこ × 尾鷲明希
17席 / 5点 特×0 並×5 次×6
互選名 死んでる死刑囚Loufock坂本 樹ルオえんどうけいこ静ジャック雪Juneもも悠佳里すい
選評名
Twitterなんて出入りの激しい場所だし、消えたり現れたりは頻繁にあるもの、と考える人には更新がなくての心配はしないのだろうが、完全に生活の一部になっている人にはそうは映らないのだろう。これも時代というものか。
村田馨
★0
歌題の「新」を「更新」に使っているのが面白いです。「ない」が三回繰り返されているのもリズムが整って良いですね。上の句は主体のなげやりな怒りのような感情が感じられます。それは君がひと月も音信不通にしていることに対してでしょうか。Twitterでしか連絡を取れないという関係ならではの歌ですね。
多田なの
★0
「もう知らない」と言いながらちゃっかり「ひと月以上更新がない」ことを確認しているありように微笑ましさが感じられる。ちょっと物足りなさが感じられてしまうのだが、それは具体的な情景が浮かんでこないからだろう。下句をもっと感覚的に訴えかける表現にするといいのかもしれない。
菊池あき
★0
もう見ない、もう知らない、とたたみかけるようなフレーズに読ませる勢いを感じました。たったひと月更新がないだけで、安否すら不安になってしまう、SNSの依存性の強さの風刺なのかなと感じました。上の句に助詞が欠落していて、主体と君の関係性が曖昧に思えました。
太田青磁
★0
twitter上で毎日ツイートしていた知人が不意に数か月更新をやめ連絡先も分からなくなった経験があり、ひどく共感致しました(私事ながら補足をすれば、私の場合は無事にその後連絡がついたのですが)。何かしら諍いがあった相手なのでしょうか、上の句にかたくなな強さがあり、だからこそ下の句で滲み出す案ずる心が効いています。諍いがあったとして、それはつまり、諍いがあるほど交流があった相手、ということでしょうから。
ルオ
★0
きっとよくある話でそれこそそのまま流れていってしまう情報ですが。ある一定の仲間内ではTwitter中心の世界で、更新がないことはとんでもない非常事態なのかも知れないですね。すごく狭い世界の話でそっちのほうが心配になります。
気球
★0
上句は「もう見ない」「もう知らない」と言いながらきっと見つづけるんだろうな、と想像させて良かったのですが、下句は上句の補足だけになってしまっていて残念です。
泳二
★0
SNSで知り合い、
その中でしか通じ合うことが出来ない細い糸を
大切にしている様子が思い浮かびました。
死んでる死刑囚
★0
新しい部屋とiPhone変わらない言葉をふたり重ねつづける
出詠名
おおたせいじ・えいじ太田青磁 × 泳二
18席 / 4点 特×0 並×4 次×4
互選名 多田なのLoufock小早川東風太田圭えんどうけいこ静ジャックJune
選評名
「新しい」が部屋とiPhoneの両方にかかるのか、新しいのは部屋だけでiPhoneは古いままなのか。いずれにしても新生活をスタートするにあたってもふたりが交わす言葉は変わることなく続くという歌意なのだろう。iPhoneという固有名詞が生きていると同時に、目立ち過ぎてキャッチコピーのようにも見える。
村田馨
★0
始まったばかりの遠距離恋愛を詠んだ歌だと思いました。昨日まではいつでも顔を見ることができた人と、遠く離れた一人の部屋でiPhone越しに話をしている。二人を取り巻く環境ががらっと変化してしまっても、その中で交わす言葉だけは何も変わっていないのでしょう。一見淡々とした歌に思えるけれど、「重ね続ける」から見えるこれからも続いていく二人の幸せに心が温まります。
多田なの
★0
新しいものとの対比によって「ふたり」の関係の持続性が、愛が強く意識される。「新しい」がどこにかかるかは確かにわかりにくいが、「変わらない」との対比だから両方にかかると見るのが妥当だろう。ただ、発想の新鮮味には欠けるかもしれない。
菊池あき
★0
新しいものと古いもの(もとからあるもの)の対比がいいですね。変わるものと変わらないもの。一緒に暮らすことになり、iPhoneもお揃いで買い替えて、だけど日々交わす言葉は部屋でも携帯のやり取りも変わらないまま。なかむつまじい様子が伝わってきました。幾久しくありますように。
小早川
★0